第24話 団結
書かれていた場所にフィークスは、急いで向かった。ぼろい小屋の上から声が聞こえてくる。
「あらあら、よく来てくれたわねぇ、あなたの探している子はこの子かしら?」見上げるとそこには魔法によってとらわれたセティと黒い服を着た魔女がいた。
「セティを離せ!おまえは何者だ⁉」魔女は依然として不気味な笑みを浮かべながら
「私の名はイザベーナ!ギルベルト様の下僕にして、龍帝軍屈指の魔力を持つものですわ!」と高らかに名乗った。
「ほかのやつらは来てないようですわね」
「あぁ、俺だけだ。さぁ、セティを離せ」
「まぁ待ちなさい?当たり前だけどただとはいかないわ。龍剣ベルエグ、軍でも警戒されていたもの、本当にあなたの手にわたるとはね」龍帝軍もこの剣を知っている?
「この剣を、差し出せばいいのか?」
「だめよ!フィークス、せっかく頑張って手に入れたんでしょ⁉」そう必死で訴えるセティを無視してイザベーナは話をする。
「えぇ、そうね。せっかく手に入れたのでしょうけど、そうでもしなきゃ大好きな子は助けられないわよ?」
「くっ!」わずかな隙をついて火の玉を打ち込むが、
「おおっと、そんな程度で私に勝てるつもり?さぁ、わかったら早くその剣をこちらによこしなさい。
「わかった、この剣は譲ろうさぁ、これを」フィークスがベルエグをイザベーナのほうへ向けるとベルエグが宙に浮かび上がり、イザベーナのもとへと引き寄せられていった。
「ほんとにすんなりくれるのね。まぁいいわ」そう言ってその手にベルエグが渡ろうとしたその時、矢がその間を通りベルエグを魔法から解き放った。それだけでなく、セティの魔法の檻を、がさすがにこれは貫けなかった。
「なるほど、そういうことでしたのね。久しぶりすぎて、忘れていましたわ、忌まわしき獣人とやらの隠密術を!」と余裕を見せていたイザベーナだったが
「おほめにあずかり光栄の至りだぜ?おばさん」この一言でその余裕はあっけなく崩れた。
「おばさんですって?このくそ耳野郎!いつもいつも私の邪魔しやがって!」敵ながら見目麗しかったその顔はみるみるうちに曇っていき、まさに憤怒といった形相に様変わりした。
「ありゃりゃ、ひとこと余計だったか?」軽口をたたくルチェス。
「お前!なんで最後の最後でポカやらかすんだよ!女の人に絶対言うなってハックはおろかライオットが言ってたんだぞ⁉」
「えぇーそれ俺が来る前に話したんじゃないのかー?」
「いいや!お前もいたときの話だ!」もちろんルチェスが独断できたわけではない。何があっても弓でセティを強引に開放するように、と名前を知っているだけでなく、仲間がいることも知っていた。魔法で手紙を送ってきた所から盗聴まがいのことをされていることを考え、フィークスは、あの会話の後で書置きを残していたのだ。
「ええい!何をごちゃごちゃと言っている!クソガキどもが!この女の命が惜しくないのかぁ⁉」そう言ってセティの檻を狭め、それごとセティを殺そうとするイザベーナ、だがそれもまた、ルチェスに止められる。
「残念だが、そうはさせない、そんな脅しはこっちで止めさせてもらうぜ」狭めるのをいちいち止められてはかなわないだろう。
「ムキーーーツツ!!本当に癪に障るね!少しばかり顔はいいから見逃してやろうと思ったけれど、あなたも同じよ!希望のガキ!いいわ、あなたたちから叩き潰してあげる!」そう言うと、イザベーナはこちらに向かってありったけの魔法をぶっ放してきた。
「おいおい!とんでもない量だぞ!」
「何とか反撃をってだめだ!こんな中じゃ矢を射ても打ち消されちまう!」そんなことを言っているうちに二人は魔法の雨に囲まれてしまった。
「ははは!無礼な獣人のクソガキめ!これでとっとと死にやがれーー!」
そうして二人の上に特大の雷が降り注ぐ、しかし、それを白い光が弾いた。
「なにっ!?」
「大丈夫ですか?お二人とも!」トーマスの大盾ではさすがに撃ち抜かれていたであろう、魔法をはじいたのは、エルダの力によるものだった。
「まったく、助けるタイミングになるのが急すぎますよ、私が突っ込んでしまうところだった、」
「あの駆けつけ方気に入ってるんですか?」
「いやはや、最初は捨て身のつもりだったのですが、思いのほか、このやり方が板についてしまいまして」
「もう!おしゃべりしてる場合ですか⁉それにルチェス君ですよね?敵だとしても言葉遣いには気をつけなさい?」遠くから魔法を放ったことでトーマスより遅れていたエルダがついて早々ルチェスは言葉遣いを𠮟られてしまった。啖呵としては100点なのだが、マナーとしては0点なのだろう。
まぁ、今相対している敵には、もはやマナーは不要だろうが。まったく礼儀作法は、どんな時でも欠かしてはならないものである。だが、挑発にああもやすやすと乗ってしまうのは、戦いのマナーとしては0点だろうか。
魔法を一気に使い過ぎたイザベーナ。その反動でしばらく攻撃できなかったが、フィークスたちが話している間に力を立て直していた。その際、セティを拘束していた檻もほんの少しだけ弱まったのだが、すんでのところでそれだけは防いだようだった。
「おのれ、小娘が、その程度の防衛魔法で調子に乗るな!」なんとエルダにもイザベーナの怒りは飛び火した。これに対してエルダは、
「あら?気のせいだったかしら?私のことを小娘ですって?ルチェス君のことを𠮟らなくてもよかったみたいね?」
「しかし、あいつの魔法が強力なのは確かだ。トーマスさんでも荷が重いだろうし、エルダさんだってまた魔力疲れになるかもしれない、」するとトーマスが
「ふふふ、私たちも日々成長するもの!御覧に入れましょう!この魔反射の盾を!」そう言うとエルダはトーマスの盾に先ほどの防衛魔法をかけた。盾は光を放ち始める。
「おお!そんな技があるならいい考えがあります!」フィークスはトーマスたちに作戦を伝えた。
「よし!私の大盾でも魔法を防げる!行きますよ皆さん!突撃ー!」
トーマスの声で全員がイザベーナの攻撃をはじきながら距離を詰めていった。が、目標の高さには届かない、トーマスの魔反射の盾も有限だ。時間がたてば、とぎれてしまう。
「ルチェス!弓矢を打つんだ!」
「あぁ!」イザベーナがこちらに攻撃することばかりに集中しているこの時にルチェスがイザベーナに向かって矢を放った。矢は狙い通り進んでいったが、あと一歩のところでイザベーナに見切られ、魔法で撃墜されてしまった。
「はっ!どうしたクソガキ!矢は効かぬとわからなかったか!」だがもちろん4人の狙いはそこではない。先ほどまでほとんどめった打ちしていた魔法を一点に意識を向けてはなったのがまずかった。この隙にエルダの放った光の魔法が、一直線にセティの檻を打ち抜いた。そのまま、落ちてくるセティ、それを飛び上がっていたフィークスが受け止めた。ここまではいい。ここまではいいのだが、肝心の着地だけは、ノープランであった。すると、地面に降りる寸前、セティを抱えたフィークスの体がふわりと浮きゆっくりと着地した。
「私魔法使いよ?浮遊くらいできるわ」
「ははっそうか、必死で助けようとして、ついね」
「し、しまった!」悔しがるイザベーナ
「やったな兄ちゃん!」
「これで、人質もいない!反撃開始ですね!」
「ねぇ。フィークス、最初に使った魔法ってもしかしてファイアー?」
「あぁ、そうさ。修行して使えるようになったんだ」
「それなら!もしかしたらあいつを倒せるかもしれない!」セティはフィークスたちに、檻に閉じ込められていた間にお師匠様に聞いた話をした。
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