第23話 消えた魔法使い

 ラオのいる屋敷へと到着した二人、

「昨日の討伐隊だな、念のため隊員証を、よしついてこい」今回も先輩と思われるほうの門番が案内をしてくれた。

「おぉ!帰ってきたか!」安心したように言うラオ。

「それで、結果としてはどうじゃった?っとその剣がまさか、」

「はい、龍剣ベルエグです」

「龍剣ベルエグ、そんな名前じゃったか!いやはや本当に手に入れてしまうとは、今まで何度も調査が行われたが、ついぞ見つけられなかったが、」

「それが、」ここでフィークスは神殿での出来事をラオにも話した。

「なんと!側面の壁画から、そうかそうか、もちろんそこも今まで何の反応もなかった、こうして無事に剣を手に入れられたことといい、おぬしはまさに選ばれたものだったのじゃな」

「あ、ありがとうございます」

「これでこの町での用事は済んだかの、帰りの手も手配しておこうかの?」

「いえ、まだ少しだけここに残りますので、大丈夫です」

「うむ、そうか。神殿の事は気にするな。魔物も出たというし、人がうかつに入るのは危険であろう。こちらで規制しておくぞ」

「わかりました」

「ふぉっふぉ、わしも生きているうちに神話の武器を拝めて幸栄じゃ。また何かあったら力をかそう」

「ありがとうございます!それでは失礼します」ラオの部屋を出て、再び門番に連れられて、屋敷を出た。その道中、

「お前の持つその剣、それが伝説の武器なのだな。美しく、神々しい剣だ。私は、ただの番兵だが、ラオ様同様、その武器を見られたことをうれしく思う。が、君はそれを使ってまだやるべきことがあるのだな。私には想像もできないようなことが、微力ながら私も応援させていただこう」

「あ、ありがとうございます」こうして二人はラオの屋敷を後にした。

 「さて、セティは今頃一体どこで師匠さんを探しているんだろうな」

「兄ちゃんの用事ってのは姉ちゃんの手伝いか」

「当たり前だろ?本当はあそこまで来ないでもよかったんだ。でも来て助けてくれたんだから、恩は返さなくちゃな」

「本当にそれだけかー?」

「な、なんでだよ」

「なに、姉ちゃんのことを話すと兄ちゃんは面白いからな」

「まったく」そうしてふざけていた2人、すると

「あぁ!やっと見つけました!」とどこかで聞いたことのある声がした。

「エルダさんにトーマスさんじゃないですか!お久しぶりです!」

「また会うなんて不思議だね。今日は何のためにここに来たの?」

「それは、フィークスさんと少し話したいことがありまして、とその剣は」

「龍剣ベルエグ!伝説の武器といわれるものさ!」

「そんなすごいものを、やはり龍帝軍のために」

「それもあるけど、それだけじゃない。龍帝軍だけが、この世界の危険じゃない。俺は今までに出会った大切な人を守りたい。そう思ったら龍神様からもらえたんです」

「大切な人を守りたい、ふふっ」エルダは自然と笑みを浮かべた。トーマスもなんだか喜ばしそうだ。

「どうしたんですか」

「いえ、お話したかった事先に言われちゃったなって」

「聞いてみるまでもありませんでしたね、エルダ様」

「??」

「兄ちゃんのきれいごとに驚いたんだろ。もっともそんな武器があればきれいごとでもないかもしれんがな」ルチェスが茶化した。

「そうだ、二人はセティの事どこかで見ませんでしたか?」

「セティさんも来ていたのですか?残念ですが、見ていないです。何かあったのですか?」

「グリンヘックの事件の後、セティのお師匠様の事を探しているらしくて、それで、あったんです。この剣を手に入れる時も手を貸してくれたし、自分たちも力になりたくて、」

「なるほど、せっかくここまで来たなら私たちも手伝うとしましょう」

「ええ、それはいいですね」

「ありがとうございます」こうして再開した四人はセティ及びセティの師匠探しを独断で開始した。が、その日は結局どちらも見つけられず、二兎追うものはなんとやら、どっちつかずになってしまった。

「ううん、だめか」

「それどころかセティさんまで見つからないとは、」

「おかしい、」

「え?」

「セティのお師匠様はともかく、セティがこうまで探して見つからないのはおかしい、何かあったのかもしれない」

「そんな、」

「これはこれで、まずい雲行きになってきたな」

「おれ、もう少し探してみます」しかし、それから夜になるまで探してもやはりセティはいなかった。フィークスの心に強い不安が宿る。

 フィークスたちがラオの屋敷へと向かっていた際、セティは確かにお師匠様を探していた、ちょうどその時、

「ねぇ、あなた?人を探しているんですって?」不思議な女性に声をかけられた、見た目から魔法使いだということはなんとなくわかるが、この国ではあまり見ないようなデザインの服を着ている。

「ど、どうしてそれを?」

「さっきからいろんな人に聞いて回っているようだから、それで私、そんな感じの人を知っているわよ?」

「本当ですか?それはどこに?」

「ふふっ気になるかしら?ならいらっしゃい。連れてってあげるわ」お師匠様の見つからない焦りもあり、怪しいとわかっていたが、ついていくことにしたセティ、実際、この女性の言うことは正しかった。お師匠様は確かに案内された場所にいた。無事、とは言えなかったが、

「お師匠様!どうして⁉」急いで駆け寄ろうとするセティ、が

「来ちゃだめだ!セティ!」そんな声が届いたときにはもう遅く、セティの上から師匠を閉じ込めている黒い光の檻が降ってきた。

「なっ何よこれ!」叫ぶセティの後ろから不気味な笑い声がした。

「ふふっほんとに簡単につかまってくれるのね、だけど好都合」

「貴様、セティまで利用して何をするつもりだ!彼女は関係ないだろう⁉」

「そうね、あなたに関しての事だけならこの子はむしろ邪魔なくらい。だけどね、この子には別の役目があるの。すごいわ、魔法使い様、究極魔法だけでなく、忌まわしき希望まで呼び寄せてくれるとはね」

「希望、まさか!」

「そう!あなたがこれまで一緒にいたあのガキよ。今頃あなたを探してくれてるわ。いい子ねぇ、かわいいお姫様を助ける騎士みたい。なんでかしら気に食わないわね」セティは謎の女が魔法を使って映し出された映像にはフィークスが移っていた。

「あら、獣人の子の他に本物の騎士と修道女もいるじゃない」

「エルダさんとトーマスさんまで、」

「まぁいいわ。さて、あの子をここにおびき寄せなくちゃ、これで一層、ギルベルト様に気に入られる」

「くっ」ここに来てほしくないのはわかっている。しかし、今のセティには彼を頼るしかなさそうだった。

 結局その日はセティを見つけられず宿屋へと戻ったフィークス。もう帰ってしまった可能性もあるため帰る準備も済ませて、眠りにつこうとしたその時、不意にフィークスの部屋に魔法で手紙のようなものが入ってきた。それを読んだフィークスは急いで支度を整えた。バタバタしたせいでルチェスと同じ部屋で寝ることにしたトーマスも起きてしまった。

「どうしたんですか?フィークスさん」

「セティを預かってるってやつからの脅迫状です。返してほしければフィークス、お前だけで北の町はずれにある小屋まで来い、と」

「そんなの絶対罠じゃねーか、僕も行く」

「だめだ。そんなことをしてセティに危険が及ぶかもしれない。大丈夫だ、俺だけでなんとかして見せる。龍神様からもらったこの剣で」

そう言ってフィークスはセティを助けるため一人、宿屋を後にした。

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