第4話 騎士として

 レギドラグスの一撃がセティを襲おうとしたまさにその時、それを受け止めたのはやはりトーマスだった。先ほどは吹き飛ばされたものの今回はしっかりと受け止めていた。

「エルダ様、防御魔法をかけてくださりありがとうございます!」

「えぇ、けど、やっぱり突っ込んじゃうのは治ってませんね」エルだがそう突っ込むとトーマスは申し訳なさそうに

「は、ははは、いやあ申し訳ない」だがその言葉にエルダが

「でも、今回はしっかり守れましたね」そういうとトーマスは少し笑って

「守れた、良かった」と言った。しかし、まだ闘いが終わったわけではない。攻撃を弾き飛ばされたレギドラグスは一瞬怯みはしたものの、すぐさま体勢を立て直す。しかし、ここからはこちらの番だ。4人で一丸となればこのピンチもきっと脱せる。もう一度トーマスと共に攻撃を始める。そしてついにレギドラグスが無防備な腹部を見せた。フィークスはこのすきを見逃さなかった。とっさにそこへ突進し、腹部に剣を突き刺した。グガアと唸るレギドラグス。身を震わせたことでフィークスは吹き飛ばされてしまった。しかし、レギドラグスもこのダメージには驚いて洞窟に横穴を開けその奥へと逃げて行った。

「た、助かったのか?」

「みたいね。はぁ、ほんと怖かった」セティがほっと溜息をついた。出会ってからわずかしかたっていないし魔法使いとはいえ一般人だ。普通なら逃げ出してもおかしくないが、やはり肝は据わっているらしい。むしろ自分のほうが戦いていたんじゃないかと思って少し恥ずかしくなってしまった。このことは黙っておこう。

「エルダ様!大丈夫ですか?」トーマスが改めてエルダに尋ねた。

「ええ、本当に大丈夫です。それよりも気になることがあってあの方たちのことなのですが」

「先ほどの者たちのことですか。ラスフィの輩なのは間違いないでしょうな。向こうの騎士団に捜査を依頼しますか?」

「いえ、そうじゃなくて何のために私をここまで連れてきたのかなって」

「確かに」フィークスもこれには少し気になっていたため話に参加することにした。

「ここまでエルダさんを連れてきておいて何をするでもなく、どころかこんなにあっさりと開放して、そもそも連れ去るならラスフィにそのまま行くだろう。休憩するにしてもさっきみたいに襲撃されることだってある。こりゃほんとに何したかったのかわからないな」

「はい、それにあの方たち、誰かに私を連れてくるように言われたみたいなんです」

「じゃあ、あの者たちを利用した奴がラスフィにいるということですな。うーむ、だとすればそやつも懲らしめてやらねばなりませんな。だからといってエルダ様を連れ去ろうとしたことは許せませんが」

「トーマスさん、私、少しだけ気になります。ラスフィに行って確かめてみませんか?」これにはセティも口を出した

「ちょっとちょっとあなた本気?あなたさっきまでつかまってたのよ?それにラスフィにいる奴は今の話だとどう考えてもあなたを狙ってるのよ。自分から敵のほうに行ってどうするのよ」

「そうです!危険すぎます!騎士団に任せればよいではないですか?」

「大丈夫ですよ。レギドラグスを追い払った皆さんが一緒なら!」

セティとフィークスは声をそろえて「「はぁ⁉」」と言ってしまった。

「まさかエルダ様、フィークスさんたちにもついてきてもらうつもりだったのですか?」

「もちろんですよ?フィークスさんはブレイミーに帰るところだったんですよね?」

「え?ああ、まぁそうですけど」

「ラスフィからならちょうど討伐隊の馬車がブレイミーとの間で走っているはずです。人助けのつもりで少しだけ調べてみませんか?」

「そうか。ラスフィならその手があったか。わかりました」そういったところでセティにはたかれる。

「ちょっと!なに行く雰囲気にしてるのよ!」

「しまった!」しかし、そこからさらにセティにもエルダは質問する。

「セティさんはどうですか?でも、さすがに家とも別方向ですし、何より行く意味もないですが、」

「ここまで来たらそのまま行くしかないでしょ。何よりここから引き返すほうが危険よ」

「皆さん、本当に申し訳ありません。もうしばらくお付き合いお願いします」こうしてフィークスたちはダウェザム山を抜け、隣町のラスフィへと向かうことにした。

 一方、そのラスフィではエルダを取り逃した二人が家々が壊されているラスフィの町を歩いてどこかへ向かっていた。

「おい、アッジ。どうすんだよ、このまま行ったらまた、」

「ああわかってるぜウスタ。けどな、このままあいつの言いなりになってちゃ何も変えられないだろ?討伐隊はおろか騎士団だって何もしてくれないんだ。あいつもいてくれれば、また何か考えるんだが、」

「まじめなあいつがこんなこと知ったら、仕事に集中できなくなるってか?」

「そうそう。俺たちみたいなやつが何とかするしかないんだよ。それによウスタ、今回は手ぶらは手ぶらでもただのてぶらじゃねぇぜ。とっておきのものを用意したんだからな」そういうとウスタのほうもにやりと笑って

「ああ、あれか、意外にもいいもんを見つけたよな」

「さぁて、俺らはあのでけーぶたに文句でも言ってこようぜ」そう言って二人は走り出した。ダウェザム山を抜けた先、ヒルミの隣町ラスフィ、こちらは鉱山の恩恵によって栄えた町で今でもそれは続いている。だが、今や街中の建物はどれもこれもぼこぼこにされているまるで何かにぶん投げられたように壁に穴が開いており見るも無残な状態だ。そんなラスフィの中心、もはやそれがもともと建物だったのかも疑いたくなるようながれきの山に、アッジとウスタにエルダの誘拐を命令した者はいた。そのあまりに大きな体は逆にこれが建物なんじゃないかと思うほどの大男、巨人族である。巨人の男は二人を見つけると、その巨体をむくりと起き上がらせ、「んおお?連れてきたかど?おでのきれいなお嫁さん」

「あいにくとここまで連れてくる途中でモンスターに食われちまってな。もうお前のお嫁さんはどこにもいねえよ」その台詞を聞いた巨人は寝ぼけたような顔から一気に怒りをあらわにして、

「んだど⁉おでのお嫁さんを見殺しにしたのかど!お前たちなんて必要ないんだど!おでの手となり足となっていればいいところをよくも、、、」

「そのセリフはこっちのもんさこれ以上街を荒らされるのはごめんなんだよ!」巨人はますます怒って

「ふんがああああ!もう許さん!この町もろとも吹き飛ばしてくれるど!」そう言って近くに合ったこれまた馬鹿でかい大木をそのままひっこぬいてきたような棍棒をもちそれを振り回そうとする。

「いくぞウスタ!俺たちでこの街を取り戻すんだ!」

「ああ!」二人が突っ込もうとしたところを火の玉が制止する。

「へへっやっぱりきやがったか。お人好しなにおいはしていたが、信じてみて正解だったな」アッジが嬉しそうににやりと笑った。巨人の男は火が飛んできた方向を見て

「なんだどお前らは!」と叫んだ。

「あんたの探してるお嫁さんってのの連れさ。もっともあんたの嫁になる気はないらしいがな」

「おお⁉おでのお嫁さん生きてたのかど?それじゃさっさとこいつら倒して結婚式をあげちゃうど!」フィークスたちを巨人のこん棒が襲い掛かる。

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