Last
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ファンのみんなへ
突然の発表で驚かせてごめんなさい。
俺、結婚します。
相手は先日の報道の通り一般の方です。
お子さんもいます。
どうか静かに温かく見守ってください。
それから、もう一つご報告!
事務所を辞めて独立し、
海外でもソロ活動をします。
あ、グループは辞めないよ!
GSとしても、ソロとしても、
これからも全力で走り続けます。
頑張るから、見ててね! 光
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光くんの結婚&海外デビューの電撃発表から、2年が経った。
最初の1年はザワザワと世間を賑わせていたけれど、光くんがはっきりと言ってくれたお陰で、批判の風向きは少し変わったようだった。
今となっては、ちゃんと公表してくれて本当に良かったと思う。おかげで現在はアメリカでとても穏やかな日々を過ごせている。
「ママ~、メアリーちゃんがね、今度おうちに遊びに来たいって!」
「もちろんいいよ〜、いつでもどうぞ」
柚もこっちでの生活にすっかり慣れた。
子供の適応能力の高さには心底感心してしまう。
キャッキャと嬉しそうにハンモックに寝転び、電話を耳に当てている。
『Hi〜メアリー!Mom、オーケー!イェス』
お友達とカタコトの英語で楽しそうに会話をする柚を横目に、PCを開いた。
光くん宛のメールにすべて目を通す。
細かい英字が並ぶ画面をサッと読み、すぐさま日本語に変換する。
すべてのメールの概要をまとめると、光くんのマネージャー宛にファイル添付してメッセージを送った。
────私は今、光くんの通訳として、個人事務所の運営にも携わらせてもらっている。
「ふぅ~、」
一息ついて、ポストへと向かう。
1通、手紙が入っていた。
キッチンでコーヒーを淹れ、ショッキングピンクのチョコレートをたっぷり纏ったドーナツを一つお皿に乗せる。
一口かじると甘ったるい。
コーヒーで味覚を中和する。
「……お母さんも食べる?」
「ん?ううん、ありがとう。あとでもらうわ」
ソファーに姿勢良く座り、本を読んでるお母さん。
こっちに越してきたタイミングで飼った猫を膝の上に乗せ、ふわふわと撫でながら寛いでる。
あれから、お母さんとお父さんは託児所を閉所することとなった。熱愛スキャンダル以降迷惑を掛けてしまったせいだと申し訳なく思っていたけれど、「もう歳で身体がきつかったから、良いきっかけだったのよ」と言ってくれた。
最初は二人で地方に住むと言っていたけど、光くんの説得で、一緒にここで暮らすことになった。
お父さんはこっちに来てから水彩画にハマっていて、今日は近所の絵画教室に行っている。
光くんは、私の両親も柚も、血の繋がった家族のように大切にしてくれる。一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、彼の人柄に魅せられてしまう。
───指に付いたチョコレートをティッシュで拭う。
手紙を開くと………
え、光くん?!
光くんは現在日本に帰国中だ。ソロでの活動だけでなく、グループ活動も並行しているため、日本とアメリカで行ったり来たりの生活をしている。
便箋を開くと、不格好な字が並ぶ。
愛おしくて胸がじんわりと熱くなる。
早く……会いたいな。
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芙由へ
俺も推しに手紙書いてみたよー。
ドキドキすんね(笑)
いつもありがとう!
I love you my wife.
光より
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推しと恋する世界線─────
推しと恋する世界線 望月しろ @shiro_mochizuki
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