第22話 初めての戦闘 ②

『イレギュラー襲撃発生! イレギュラー襲撃発生! 只今、ここランカータ市が、皇帝鴉と灰色狼の群れに襲撃されています!』


 けたたましいサイレン音に続いて、館内放送で、女性の金切り声が響き渡った。


「なんじゃと⁉︎」


「憶測ですが、お二人が『こちら』にいらした事が原因かもしれません」


「…うむ」


 女性秘書の言葉に、市長がちらりと、アイとオキクに目を向ける。


 それと同じくして、バァンと大きな音を立てて、スーツ姿の男性が市長室に飛び込んできた。


「市長!」


「分かっておる! 市民の避難を最優先に。全ての結界炉を起動させ、大型の巡回車も臨時の避難所として走らせろ。ネヤガー市の軍部への、救援要請も忘れるんじゃないぞ。とにかくいつも通り、冷静に対処するんじゃ!」


「分かりました!」


 市長からの指示を受け、スーツ姿の男性が市長室から飛び出していく。


 その姿を見送って、市長が「コホン」と咳払いを入れた。


「あー…、すまんかったな。驚かせてしもうたかの?」


「あの、大丈夫なんですか?」


 オキクの不安そうな声に、市長は再び、温和な笑顔を作り上げる。


「結界炉を起動させたからの、この建物の中にれば安全じゃ」


「いえ、そうではなくて…。外にいる街の人たちは大丈夫なんですか?」


「それも問題ない。市内の主要施設にも、ここと同じ結界炉が設置されておるからの。緊急時には、そこに避難するよう、通達は出しておる」


「だけど…」


「私…、行く」


 その時アイが、ポツリと言葉を漏らした。


「え…?」


 オキクが振り返ると同時に、アイがソファーから立ち上がる。


「だって、そのために来たんだから!」


「気持ちは分かるが待つんじゃ! 君たち二人は、ろくな戦闘経験も積んでおらんと聞いておる。ここランカータ市にも狩人協会はちゃんとあるし、何よりも今は、アサノくんたちがる。彼らに任せるんじゃ!」


「だけど…、街の人たちは、死んだらそれで終わりなんだよ!」


「それは…、そうじゃが…」


「だったら私が行く!」


 それだけ言い残して、アイが市長室から飛び出した。


「こ、こら! 待つんじゃ!」


「すみません、市長さん」


 続いてオキクが、市長に向かってペコリと頭を下げる。


「お気持ちは大変嬉しいのですが、私もじっとなんかしてられません」


 その後に発せられた市長の制止を振り切って、オキクも部屋から飛び出していった。


 〜〜〜


 市役所から外に出たアイとオキクは、


 その壮絶な光景に、思わず言葉を失った。


 何羽もの巨大な黒い鳥が空を旋回し、クチバシから炎を吹き出し地上を焼いている。


 何頭もの灰色のオオカミが走り回り、逃げ惑う人々を群れを成して襲っている。


 今さっき、自分たちが歩いてきた賑やかな街道の面影は、


 もう、何処にも残っていなかった。

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