第6話 業務内容 ①
「魔物の軍勢
水戸は両目を閉じて、感情を押し殺したような声で、淡々と語った。
「あのとき、偶然通りかかった市長さんに保護して貰えてなければ、何も分からずに途方に暮れていたことでしょう」
「それじゃ水戸さんにも、その特殊な資質があったってこと?」
「そうなりますね」
亜衣の質問に、水戸はゆっくりと頷く。
「あのときの私は、異世界の存在など微塵も信じていなかったので、本当に驚いています。ただ…」
それから最後に、少し遠い目をしながら、
「あの日の市長さん、一目見て、私を魔法使いだと見抜いたんです。あれはどういう能力だったのでしょうか…」
不思議そうな声を
「市長は、根っからのゲーム好きなんだ」
佐藤は小声で亜衣とお菊に説明すると、水戸の方へと顔を向ける。
「水戸さん、ありがとう」
その声に水戸は一礼し、スーツ姿に戻って着先した。
「と、まあ、薄々勘付いているかもしれないけど…あの掲示板にはね、その特殊な資質のある人にしか見えないように、細工がしてあるんだ」
再び亜衣とお菊の方に向き直った佐藤は、真剣な眼差しで、
「計算では、もう少し見える人は居るはずなんだけど、若者向けの文面にしたせいか、グループの中で自分しか見えてない状況だったのか、実際に来てくれたのは君たちが初めてなんだ。本当に感謝している」
両手を膝の上について背中を伸ばし、深々と頭を下げた。
「ちょ…、ちょっと待ってください!」
しかし、そんな佐藤に向けて、お菊が焦ったような声をあげる。
「水戸さんの話を信じるなら、これって危ない話なんじゃないですか⁉︎」
お菊のその発言に、佐藤はゆっくりと顔を上げた。
そのとき、タイミング良く光を照り返した佐藤の黒縁眼鏡が怪しく
「当然、そう言う話になるよね」
佐藤は、黒縁眼鏡の眉間部分を右手の中指でクイッと正し、口の端で小さく笑う。
そのとき、佐藤の態度に、お菊は若干の違和感を覚えた。
まるで試されたかのような居心地の悪さ…
お菊は、佐藤の顔をジロリと睨んだ。
しかし佐藤は、お菊の視線など意にも介さずに、
「まず大前提に、生命の危険はない」
キッパリと断言した。
「魔力のない我々では、水戸さんのように、肉体ごと向こうの世界に渡ることが出来ないんだ」
「えーーーっ!」
この発言に、亜衣の口から、あからさまな不平が
「だったら、どうやって支援するの?」
「様々な試行錯誤の結果なんだけど…、アバターと名付けた生体分身を現地で生成し、そこに自分の意識体を送り込む方法に行き着いたんだ」
「アバター!!」
その瞬間、亜衣の瞳が最大限に、キラキラと光り輝いた。
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