第2話 夏休みの求人広告

 そんなこんなで、夏休みを迎えた。


 亜衣とお菊は、駅前のショッピングモールでお買い物。


 欲しい物はたくさんあるけど、お小遣いとの兼ね合いもあり、数点の文具で我慢する。


 その後、コーヒーショップで飲み物をテイクアウトして、落ち着ける場所を探してブラブラ歩く。


「毎日、暑いね。勉強する気も起きないよ」


「宿題はしないとダメよ。去年の亜衣の事は知らないけど、今のひと言で予想がつくよ」


 亜衣のこぼしたひと言に、お菊は小さな溜め息を吐いた。夏休みの終盤に訪れるであろう自分の未来についても、同時に見えた気がしたからだ。


「私、思ったんだー」


 そんなお菊の不安などお構いなしに、亜衣が無邪気な笑顔を見せる。


「毎日ダラダラ過ごしてるから、逆に宿題もはかどらないんだよ」


 亜衣とお菊は、学校の部活には所属していない。なので、こうして遊ぶ約束でもしない限り、外出する機会も余りない。


「…それで?」


 言ってる事は判らないでもないが、言いたい事をグッとこらえて、お菊は亜衣の言葉の先をうながす。


 すると亜衣が、お菊の手を取って、


「だからさ、二人で何か一緒にやらない?」


 熱い眼差しを向けてきた。


 彼女がいきなり、突拍子もない事を口にするのはいつもの事だ。それに二人で何かをすると言うのは、お菊にとっても別に悪いことではない。


「…私は宿題に困ってないんだけど、亜衣がやるならやっても良いよ」


「ホント? やったー! …で、何やる?」


「…え⁉︎」


 丸投げ⁉︎ と戸惑うが、そう言えばコイツはこう言うヤツだと諦める。


「そうね…」


 亜衣のキラキラとした期待の眼差しを受けながら、お菊はフッと思案に入り、


 そうして、


 二人は思わず二度見した。


 駅前広場のこんな目立つ場所に、


 こんなに大きな掲示板なんて、今まであっただろうかと。

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