第10話 先生 と 生徒
「愛村先生、大丈夫ですか?」
「はい…大丈夫です」
「でも…フラフラ…」
「タクシー代もバカになりませんよ~。安月給ですし節約、節約。それに歩いて帰りたい気分なので。では、失礼しまーーす。お疲れ様でーーす」
先生方達の親睦会にちなみ飲み方。
普段よりペースの早かった私は酔っ払ってしまった。
だけど意識や記憶はハッキリしているという自分の中では、しっかり自覚はあるんだけど……
私は一人夜道を足元がフラつきながらも家へと帰って行く。
「……公園……」
公園にフラフラと立ち寄りベンチに腰をおろすと、ぼんやりしていた。
そこに偶然─────
「…唯…南…さん…?」
バイト帰りと思われる斗弥君が私を見掛けた。
「先生」
ビクッ
声がし驚く中、視線の先には斗弥君がいた。
「…斗弥…君…」
「こんな所で何してんねん」
「良いでしょう?」
「もしかして人待ち」
「違うから!」
ストッ
私の隣に腰をおろす斗弥君。
「風邪引くで」
「その時は斗弥君が温めて」
「…唯南さん…それは問題発言やで」
私は斗弥君に凭れかかる。
「…唯南さん?」
「…スー…」
寝息をたてる私。
「えっ…?ちょ、ちょっと!唯南さん!?」
「………………」
ベシッ
オデコを叩く。
「……ん…」
「唯南さん!ここは家やないで!…アカン…寝てもうた…」
俺は唯南さんをおんぶして帰る事にした。
「世話のかかる義理姉(おね)さんで兄嫁さんやな~」
俺は唯南さんを自分の部屋に連れて行き、ベッドにおろす。
「んー…圭吾~♪」
私は斗弥君に抱きついた。
「わわわ…ちょ、ちょっと!唯南さんっ!」
ドサッ
倒れ込む斗弥君。
私は目を覚ます。
ドキッ
「きゃあああ!」
ドサッ
ベッドから落ちる私。
「ったぁ~」
「…どあほ」
「……………… 」
「ご、ごめんっ!私……部屋……」
「別にええよ」
制服を脱ぎ始める斗弥君。
「きゃあっ!ちょ、ちょと…」
顔を背ける私。
「別にええやん!どうせ兄貴の見慣れてんちゃうの?」
「そういう問題じゃないし、それに例え兄弟でも違うから!」
「そんなもんか?」
「そんなものです!着替え終わった?」
「一応な」
振り返る私。
「それより唯南さん、お風呂は?シャワーとかええの?」
「う…ん…今日は…もう…面倒だから良いかな…?ベッド借りるね…あ!でも、斗弥君…」
「俺は大丈夫や。適当に寝るから」
「いやいや…流石にそれは…」
「ほんなら添い寝しよか?」
「だ、大丈夫です!」
「そうか?」
「そうです!」
私は横になった。
次の日────
「はいみんなー席についてーー」
「先生!」
一人の男子生徒が教室に入って早々、私に話かけてきた。
「何?どうしたの?」
「昨日、偶々、見掛けたんですけど、先生と衣吹って、どういう関係?」
「どういう関係って…別に、ただの先生と生徒よ」
「そういう風には見えなかったけど?」
「えっ!?」
「なんか公園のベンチに腰をかけて先生が衣吹の肩に凭れかかってる感じだったし。正に恋人同士みたいな感じ?もしかして2人付き合ってる的な?禁断の恋とか!?」
ガヤガヤ……
ザワザワ……
「私達は別にそういう関係じゃないわよ」
「いやいや、どう見たって、あの雰囲気は……」
「あー、それな!誤解やで?確かにパッと見た時は、恋人同士っぽく見えたかもしれへんけど、俺も偶々、先生を見掛けてん。公園に一人いたもんやから声掛けただけやで?夜の公園に女の人、一人は危険過ぎやろ?そう思わへん?」
「だとしても、あの雰囲気は……」
「ほんなら何かあった時はどないするん?ちゅーか、見掛けたんなら声かけてくれたら良かったやん」
「いやいや…あの雰囲気は声かけにくいし!」
「えーーっ!そんな良い雰囲気やったん?誤解も良い所や!な?先生」
「そうね」
「付き合(お)うてたら大問題やで?2人共罰が与えられてるやん。つまり、そういう事らから誤解せんといてな!」
コトは何とかおさまったんだけど……
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