第11話 謎の手紙~女の影~
「……あれ…私に…手紙…」
一通の手紙が宛名なしに私に届いていた。
「誰だろう…?」
私は目を通す。
【今度あなたに、お会いしなくてペンをとりました】
【あなたと、お話がしたいです】
場所と日時が書かれていた。
そして────
【幸村さなえ】
女性の名前が記されていた。
誰……!?
その一言だった。
同級生にはいないし
思い当たる節がない
まさか────
ふと脳裏に過ったのは
圭吾との事だ
私は考えたくはなかったけど、確認をする為、圭吾には話をせずに記載されている所に行く事にした。
約束の時間
彼女は現れなかった
「騙されたかな……?」
そう思い帰ろうとした、その時────
「ごめんなさい」
一人の女性が私の前に現れた。
「あの……」
《…この人…あの時の…》
「急な仕事が入ってしまって待ち合わせ時間に遅れてしまいました。すみません」
「いいえ」
「すみません…コーヒーを。あなたは?」
腰をおろしながら店員に注文する彼女。
「いいえ…私は大丈夫です」
「あら、遠慮なさらないで良いのよ。彼女にも同じものを」
「はい」と、店員。
「煙草宜しいかしら?」
「ええ…どうぞ」
「まあ聞くまでもなく、圭吾君も吸われてるから問題ないか」
《…圭吾…君…》
「ごめんなさい。急にお呼び立てして」
「いいえ。…あの…一体…どういったご用件で…私を?」
「私…圭吾君の上司の幸村さなえ。あなたが彼の奥さんだって事は存知あげてるわ。そうでなければ、あなたに、お手紙なんて渡さないけど……実は、あなたに、お手紙に書いていたように、お話したい事があって。あなたと彼は結婚しているけど、私、あなたの旦那さんを愛しているの」
「…そう…ですか…」
「もちろん、身体の関係もあるわ」
「それで…?一体…何を…?」
「今の関係を続けていこうと思うから、あなたに御理解頂こうと思って」
「…別に…いちいち許可を頂かなくても結構です」
「あら?じゃあ黙っていた方が良かったかしら?」
「…それは…」
「クスクス…冗談よ。まあ、別れてくれた方が本当は、一番良いんだけど。それじゃ、私は次の仕事があるから、この辺で。支払いは、こちらの方で済ませておくわね」
そう言うと私の前から去った。
───浮気───
女性の影────
自分が結婚して
本当は有利で
負けるはずがないのに
私の心は
ポッカリと穴が
開いてる状態だった
『私に勝つ自信』
正直・・・・・なかった・・・・・
「ただいま」
「お帰り。ねえ、斗弥君、唯南ちゃんから連絡とか見掛けたとかない?」
「えっ?唯南さん…ですか?いや…何も…」
「…そう…」
「どうしてですか?」
「"出掛けて来ます。夕方までには戻ります" って書いてあったメモ紙が置いてあって出掛けたみたいなのよね? もう夜9時回っているというのなね、まだ戻ってきてなくて…何かあったのかしら?」
「車なん?」
「そうみたい」
「何かあったら連絡あるんちゃう?圭兄は?」
「まだ帰ってないし連絡もつかないのよね」
「2人でデートしてるとか?」
「そうだとしたら電話一本、もしくは何かしらの連絡はあるはずじゃない?」
「別行動…ちゅー事か……俺ちょっと探して来るわ」
「でも、もう遅いし辞めた方が……すれ違う可能性もあるから」
「せやけど…」
そこへ────
「すみませんっ!遅くなり…ま…し…た…?あれ?何かあり…」
ベシッ
言い終える前に斗弥君に軽くオデコを叩かれた。
「痛っ!」
「何してんねん!心配しとったで!約束の時間にいてへんなんて、こんな時間まで何しとったんや!? あっ! それとも、あんたの夕方は今ですかぁ~っ!?愛・村・唯・南・さん」
「…いや…それは…違うんだけど…」
「だったら何で、こんな時間に帰ってくんねん!アホっ!」
そう言うと足早に去り2階へと上がって行った。
「………………」
「お義母さん、すみません…あの…」
「無事で良かったわー。何かあったのかと思って、斗弥君、探しに行く所だったの」
「えっ?」
「圭吾には連絡つかないし」
「…そうだったんですね…すみません…」
「まあ、良いわ。無事なら何より。罰として後片付けと明日の食事当番宜しくね」
「あ、はい」
そう言うと去って行く。
「…はああ~~…」
ため息を吐き、2階へと向かう。
《一緒かな…?上司の人と…》
「悩んでます」
ビクッ
顔を上げる私。
「ちゅー顔やな?」
「…斗弥君…」
ドアに寄り掛かり腕を組んで立っている斗弥君の姿。
「一体何があったか知らんけど、ブッサイクな顔してるでーー!今のあんた!」
「…そう…かもね…」
「ええーーっ!!認めたーーっ!何?ホンマに、そう思ってんねん!!」
「仕方ないでしょう!?どうせブサイクです!」
「………………」
「理由は、どうであれ、そんな唯南さん、らしくないで?」
ポンと頭をされた。
ドキン
「ほな俺は、お風呂入ってくるさかい。のぞかんといてな」
そう言うと横切って行く。
「…斗弥君…」
「何や?」
「……ありがとう…それから…ごめんね…」
そう言うと自分達の部屋に入った。
ドアに寄りかかり、体をゆっくり下に崩していく。
今の私には……
何もする気力なんてない……
すっごい無気力で
何をしても
どこか欠けてる
頭の中がグチャグチャだ……
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