第8話 本当の自分

あれから1ヶ月────1月。冬。



平凡な毎日


学校へ行き


授業を終え


家に帰る日々




圭吾とも


相変わらずで



求められたら


受け入れる





──── でも ────




そこに


本当の愛は


存在するのでしょうか……?




私の心には


圭吾(婚約者)は


存在してるのでしょうか……?





「圭吾、また出張?」


「…またって…俺そんなに出張して…る…か……そうだよな…確かに、またにはなるよな…?でも断る理由ないしな」


「…そうだね…」




「…………………」




「…もしかして…唯南…浮気してるんじゃないか?って…疑ってる?もし、そうだとしたら絶対にないからな!妊娠とか子供いるなら親の協力だけじゃなくて、もちろん俺も協力したいし、子供との時間作りたいから出張は断るけど」


「そうだよね?今は、まだ断る理由はないよね?」




《本当に浮気してなければ…ね…》




キスマークの件で圭吾からの本音は聞けたし


その後も夫婦関係がないわけじゃない



だけど───



私は知っている


圭吾の身体にキスマークがあった事を────



本人は気付いてない様子だけど


私以外の誰かと関係を持っている事を


私は知ってしまったのだ





そして、圭吾は私が気付いている事など知るよしもなく出張に出かけた。




「あれ?圭兄、また出張なんか?」



ビクッ

声がし驚く中、視線の先には斗弥君がいた。



「…うん…そうみたい」

「浮気してるんちゃうん?絶っ対!真っ黒やで?」

「真っ黒って…でも…大丈夫だよ……って…言い切れないかな…?」


「えっ…?ええーーっ!やっぱ真っ黒なんや!」


「いや!確信ないし!ていうか私達夫婦の事だから斗弥君は気にしなくても良いの!」



私は部屋に戻り始める。




グイッ


私の腕を掴む斗弥君。



ビクッ



ドンッ


壁に押し付けられたかと思うと両手で行く道を塞がれた。




ドキッ

まさかの状況に胸が大きく跳ねた。




「…斗弥…君…?」

「ちょっと小耳に挟んでん。聞きたい事あんねんけど」

「き、聞きたい…事…?な、何…かな?」




突然の出来事に慣れない状況が、私の目の前に起こっているせいか胸がドキドキ加速する。



「あれからも生徒とHしたって本当なんか!?」



ギクッ



「えっ…?や、やだな~、誰から聞いたかは知らないけど…結婚してるし、そんな事したら…」


「バレんようにする事なら可能なんちゃうん?相手が相手ならな!で?本当の所どうなん?今も尚、継続中とか?」


「大丈夫だって!そんな事ないから。ほら!退いて!」




押し退けるようにすると同時に再び腕を掴まれた。



「唯南さん、本当の事、話してくれへん?」



私は振り返るも下にうつ向く。




「…私…斗弥君に優しくされたりされちゃうと…駄目な女になっちゃうよ…」


「…唯南さん…」




顔を上げる私は涙を堪えながら────




「…斗弥君と…今の関係続けられなくなっちゃうよ…年上なのに…先生と生徒なのに…圭吾の妻なのに…私……あなたの事……」



フワリと抱きしめられた。


ドキン



「それでもええよ。唯南さんか笑顔でいれるなら、俺は何だってしたる!」


「だ、駄目だよ!」




押し離そうとしても斗弥君は離そうとしなかった。



「…唯南さんは、先生であって、俺のお義姉さんでもある。圭兄の婚約者やけど…一人の人間で一人の女や。俺は…どんな唯南さんも見てきてんねん…せやから…俺にだけは、もっと本当の自分出してほしいねん」



抱きしめた体を離すと向き合う私達。



両頬を優しく包み込むように触れる斗弥君。



「唯南さんは唯南さんやから…」


「…斗弥……君…」


「好きとか嫌いとか…そんな恋愛感情とか一切なくても俺はあんたの支えになりたいねん!本当の笑顔を見たいねん!」



「………………」



「だから…隠さんと俺にだけは正直に話して欲しいんや!本当の自分見せて欲しいねん!家族として…俺には見せてくれへんか?特別な尾とやないかもしれへん。アカの他人やろうけど姉弟としでもかまへんから!」





何処か嬉しかった


彼の言葉が


私の心を楽にしてくれた



どんな私でも


あなたの前だけ


本当の自分に


なれる気がした























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