第4話 家族

「最近、唯南先生、元気なくない?」

「ない、ない」

「…どうしたんだろうね」

「本当だよね」





ある日の放課後────




「先生」


「あれ?衣吹君、どうしたの?とっくに下校時間過ぎてるわよ?しかもバイトなんじゃ?」


「まだ時間あるし」

「そうか」

「最近どないしたん?クラスの子が言うてたで?」

「えっ?何か、おかしい?」



「元気ない、言うてたで?」

「…疲れてるだけだよ」

「…そうか?」

「…うん」


「何かあったら言うんやで?兄貴の事なら相談のったるで?みんな先生の元気ない顔は見たないねんて。せっかく楽しい学校も楽しくなくなるやん」


「…そうだね…ありがとう」





涙がこぼれそうになった


私は一人じゃない


生徒だっているし


家族がいるんだから




「ほな!バイトなんで」

「うん」



斗弥君は教室を後に帰って行く。





その日の夜─────




「…圭吾の…シャツ…」




私は一通り見る。



ズキン




「…今日は…ついてる…浮気なんかじゃない…よね?」



気付けば、日課になっていた。



カチャ

脱衣場のドアが開く。



ビクッ

私は慌ててシャツを隠す。




「…………………」




入ってくる人影。




「うわっ!ビックリした!」



斗弥君だ。



「あ…ごめん…お風呂?すぐ出て行くね?」

「何…してんねん」

「…うん…ちょっと…それじゃ」




「………………」




私は出ていく。


脱衣場のドアの前に寄りかかるも、すぐに、その場から去り部屋に移動。




ベッドには気持ち良さそうに寝ている圭吾の姿。





「どうして幸せに寝れるよ…やましいこと…ないから…?」






私は眠れずにいた。







次の日──────





「あら?おはよう唯南ちゃん、早いのね」

「はい。ちょっと色々用事あって眠れなかったんです」

「まあ大丈夫?」


「はい。朝食作っていますので食べて下さい。私は先に済ませたので」


「そう?分かったわ。じゃあ頂くわね」

「はい、どうぞ」





その日の夜─────



「…今日は…」



ズキン


バッ


シャツを投げるように置くと座り込む。




ガチャ

脱衣場のドアが開く。




「………………」



「うわっ!ゆ、唯南さん!何して…!」




「………………」




「……唯南…さん…?」

「あ、ごめん。お風呂…だよね」




私は脱衣場を後に出始める。


グイッ


腕を掴まれ引き止められた。



「…唯南さん…どないしたん?」

「何でもないよ…」


「そんな顔しとって、どうもないわけないやん!何かあったんやろう?」




「……………………」




「俺にも話せん事か?家族やのに?」

「家族だから…だから話せ…」




グイッ

抱きしめる斗弥君。



ドキン




「圭兄と何かあったんか?学校じゃ何も問題ないし…親が何かしたっていう感じやないし…それとも俺…」




首を左右にふる。



「斗弥君は何も悪くないよ」

「…そうやったら…圭兄…」



スッ

抱きしめられた体をゆっくりと押し離す。




「唯南さん…」

「ごめん…ありがとう…おやすみ」





私は足早に去った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る