第3話 秘め事

「衣吹君。ちょっと…良いかな?」




斗弥君が女子生徒に呼び止められる所を偶然に見かける私。


私は見て見ぬふりをしようと思ったけと、気になり後を追った。



先生であり、一応、家族の一人として、やってはいけない事は充分承知なんだけど……




「…ごめん…あのね…学園祭で見かけて、良いなって…あの…だから…付き合って下さい!」




《おっと…愛の告白ですかー?》

《何となく、そんな気はしたけど》



「…ありがとう…せやけど…俺…日々バイト尽くしやから付き合うていうのは無理かもしれへん。デートも出来るわけやないし…」


「そうか…じゃあ…せめて友達として仲良くするのは良いかな?」


「それは全然構へんけど…」


「ありがとう。じゃあ、そうさせてもらうね」


「ああ」




2人は連絡先を交換した様子で別れた。





その日の夜─────


部屋のドアの前、私は、斗弥君が帰って来た事を確認し、部屋の前で待っていた。



「おかえり~」


「…た、ただいま…ちゅーか何やねん!ニヤニヤして気持ち悪いわ!何か企んでるんか?」


「企んでません!ていうか、見かけちゃって~」

「何を?」

「女子生徒と一緒にいる所」

「だから何やねん」

「告白された?」

「別に関係ないやろ?」



「え~、別に教えてくれても」


「……なんで?話す理由分からへん!ちゅーか、干渉すんの辞めてくれへん?」


「いや…そんなつもり私はないんだけど…」


「…だったら…いちいち聞くのは辞めてな」




バタン

自分の部屋に入る斗弥君。





次の日─────





「…これ…圭吾の…シャツ…口紅の跡…まあ…ありきたりだよね?ぶつかった拍子とか?気にしない!気にしない!」






でも────



それは───



事の始まりだった────







次の日も、次の日も


口紅の跡はついていた────





「…………………」




「…ねえ…圭吾…」

「ん?」

「う、ううん…何でもない」

「そうか?」

「うん…おやすみ」

「ああ、おやすみ」






言いたかった……



聞きたかった……





だけど────




怖くて



聞けなかった────







私は心に秘めたまま



そのままにしていた

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