(二)-13

 愛希子はそっと私の口から手を離した。そして地面に置いたものを拾い上げると愛希子の方に突き出してきた。

「それ使って」

 ヒソヒソ声で郁美が言った。

「どうするの?」

 そう言いつつ、突き出された物を受け取った。ようやく夜の闇に目が慣れてきつつあったが、持ったときの手の感触だけで、それがずっしりと重いシャベルだとわかった。

「地面を掘るのよ」

 郁美がそう言うと、愛希子の手を掴んで桜の木のそばまで連れてきた。

「ここを掘って」

 郁美が足元を見ると、掘りかけの地面があった。

 それにしてもここを掘って何があるのだろうか。タイムカプセルを埋めるようなこともしていないし。


(続く)

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