第3話 灰や塵芥の中から、光る宝石を探し出す

灰や塵芥の中から、光る宝石を探し出す。それでこそ命である。僕の大好きな詩人の言葉だ。

兄様たちの葬儀から、一週間が過ぎた。僕はヴィコム家の正式な後継ぎとなり、父や母、それに執事や召使いたちの接し方も変わった。十四までは気楽な第3子、その後一年は気楽な三男だったのに、家の期待を一身に背負った貴族の長男になってしまった。僕は運命を受け入れ、フォークとナイフの持ち方から髪型のわずかな乱れまで、バーンズに常に監視してもらって、ヴィコム家の後継ぎとして恥ずかしくない振る舞いを身に着けようと頑張り始めた。不埒な噂も含め、兄様たちのことは思い出すと泣きたくなるから、考えないようにした。


そんな新たな僕の登校初日、胸を張って校門を潜ると

「おい、無理するんじゃない」

アグリャの聞いたことのない心底心配している声で座り込みそうになる。

「ぼっ、僕はヴィコム家の長男だぞ……」

何とか踏ん張って、背の高いアグリャに胸を張ると、彼は本当に悲しそうに僕を見下ろしたあと、その力強長い両腕で抱きしめてきた。

「うっ……やめろ……いやっ、やめてよっ」

つい昔の言葉遣いが出てしまった僕にアグリャは

「お前が大事だ。どんなお前でも、俺はお前が好きだ。いつでも力になる」

と言ってくれて泣きそうになる。バーンズも止めるどころか後ろから僕に抱きついてきて泣きながら

「坊ちゃまが精一杯頑張っていらっしゃるのは、みんな知っていますから……ううっ」

「二人とも、やっ、やめてよお……僕は……私は 、私はっ……ほんとは……こんな……こんなのって……なんで……」

そのまま僕は校門近くで二人に抱きしめられながら、今までは流せなかった数年分の涙を流し続けた。


学園内には目立つ場所で泣いていた僕たちを馬鹿にする生徒も先生も一人もいなかった。意地悪なジェムルスでさえ、悲しそうな顔で近づいてきて

「今までは済まなかった。俺も長男で苦労は分かる。困ったら俺でよければ何でも聞いてくれ」

拍子抜けするような励ましをくれた。

気付いたら、みんなが僕の味方になっていた。廊下や教室ですれ違う全ての生徒たちが励ましや敬礼までしてくれた。大兄様、小兄様、僕だけ、すみません。僕、きっと、みんなの気持ちを受けとって、ヴィコム家を立派にしてみせます。

そう、心に強く誓った。


皆に支えられながら、勉学や実技を頑張った僕の、兄様達が亡くならなければ、永遠に埋もれていたはずの魔法の才能が開花するのは、その日の一ヶ月後だった。

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