第16話 要人警護の訓練

3日目の朝



盗賊に攫われた3人の女性を助けた私たちは、今回の訓練の要人警護の目的にぴったりの状況に返って喜んだ。


「3人は、上からエリサ16歳、カリナ14歳、セシル12歳の三姉妹で、攫われて魔がなかった事もあり特別酷い事もされていなかった。しかし両親と兄2人は盗賊に殺されたようだ。

家族の荷物は取り返したが遺体についてはどこに埋められたか分からず、見つけることができなかったので見晴らしのいいところに墓を立てて供養した。


「いいかい君たちは王都に着くまで彼女、恵くんの訓練ために要人として扱うのでその辺心得ておいてくれ。」

部長が3人の娘にそう言い聞かせてメイドたちには、メイドとしての仕事を言いつけた。

本格的な要人警護の訓練の始まりである。


3日目の昼には目的の山の麓に辿り着き、山を囲うように配置された森を横切り王都に帰るコースを進む。

午後の3時頃になると部長が

「いいかい、森の中や十分な準備を必要とする場所では、野営はこの位の時間には始めるのが基本だ。無理をして夕暮れまで進むと野営の準備を十分出来ないばかりか、魔物や盗賊に襲われる可能性が高い。よく覚えておいてくれ。」

と注意をしながら他にも

「魔法を使わない水の入手方法は・・・、焚き火の注意事項は・・・、見張りの順番やテントの貼り方は・・・。」

と言う感じで事細かに教えてくれた。


要人役の3人は、

「こんなお姫様みたいな扱いを受けて本当にいいのでしょうか?王都についたら死ぬ気で働きます。」

と言い出した、そう彼女らは部長の屋敷で働くことになったのだそれも、もし私が屋敷を買ったら私の屋敷専門のメイドになる約束で。

「屋敷か・・・どうしようかな。」

私は実感はないが十分なお金のある今の状態を考えると、何時までも部長の世話になるのもどうかと思い始めていた。



ーー 三姉妹 サイド  ーー



私達は長い旅の終わりの地であるここメゾノ王国に入った所で盗賊に襲われ、私達以外は殺されてしまった。

私達も酷いことをされた後売り飛ばされて奴隷になるものと半分諦めていた時に、メグミ様に助け出された。

その時の強さと言ったら信じられないほどだった。

聞くとメグミ様は、SSSのクレナイ様の後輩でSS級の冒険者だと言うこと。S級と言うだけで人外の強さと言われる。

当然盗賊が何人いた所で問題なかったのだろう、ただできればもう少し早くに出会っていればと思わずにはいられなかったが、それはムシのいい話だとわかっている。


親を亡くし身寄りのなくなった私達をメグミ様は、王都の屋敷で雇ってくれると約束してくれた。

将来メグミ様の屋敷ができた時には専属のメイドにしてくれるそうだ。

私達はこの地域では珍しく魔法が使える、ほぼ魔法は貴族が独占的に使うのが多く、魔法の使える庶民は貴族の養女や奴隷にされると聞いていたので、人前では使わないようにしていたがメグミ様やクレナイ様は、魔法が使えると言う程度ではなく全属性で高位魔法が嘘のように使えるそうだ。


私エリサは、赤い髪でスタイルには自信がある魔法は、火と風魔法が中級程度使える。

妹のカリナは、カニはオレンジ色で痩せてはいるが胸は大きく魔法は、土と光魔法が中級程度使える。

末っ子セシルは、青髪でまだお子様体型であるが魔法は、水魔法と治療魔法が中級程度使える。

普通ならコレだけの魔法と容姿を持つ女なら、貴族の養女先は沢山あるように見えるが、返って奴隷落ちされ死ぬまでこき使われることが多いそうだ。


今回冒険者とは言えS級の2人の屋敷で働けることになった私達は、恩を返した後一人立ちも可能だと言われた。

SSSとSSの二人はすでに貴族位と言えば伯爵と子爵クラスと言える、領地を持たないだけで貴族と同等なのだ。

メグミ様もあの歳でSSならば遠くない時期にスリーSになられるだろう。

そうなればそこで働くメイドも他のメイドとは格が違ってくるのだ、嫁ぎ先はよりどりみどりだと言う、私はそのことは既に行き遅れの可能性が高いので独身でも構わない、二人の妹が幸せになってくれれば言うことないのだ。


しかし野営地で食べる料理がこんないおいしく、夢に聞いたお風呂がある生活なんて・・、本当に夢の中でお姫様になったみたいだわ。



4日目森の中の移動



 この辺りの森は、魔の森と言われる恐ろしい森という。

盗賊らが出ない代わりにしょっちゅう魔物が現れて襲ってくる。

今もウルフ方の魔物30頭に囲まれているが、コレは私にとって丁度いい魔法の練習となる。

「ライジン」

最近覚えた雷系の範囲指定の魔法を行使する、凄まじい音と光が魔物を襲う。

いかに俊敏に動けるウルフ系の魔物でも光の速度にはどうしようもない、1匹残らず倒される。

私はそれを収納しながら討ち漏らしがないか確認する。


「かなり使えるようになったね。今の威力ならオーガやサイクロプロスでも十分使えるよ。」

と言う部長の言葉に気をよくした私は、その日はほぼ雷系の魔法で魔物を倒してゆく。

その日倒した魔物が3桁に届きそうになった頃、

「この辺りで野営をしようか、準備をしてくれ。」

と言われた私は、周囲の草木を土魔法で掘り起こして、木を収納すると地面を平に慣らし囲う様に壁を立てる。当然壁は今まで以上に高く丈夫に造る。

強固な結界を張りテントを取り出して設置していく、ついでに周囲に隠密系の付与魔法をかけて気付かれづらくする。


「コレでもういつでも独り立ち大丈夫な様だね。」

部長のお墨付きをいただいて、今回の訓練はほぼ終了後は、屋敷に帰るだけだ。



5日目の朝


周囲を警戒しながらテントなどを収納し出発の準備を行う。

すると遠くで大きな魔力を感じる、コレは・・・ドラゴン?

そう思っていると、部長が

「若い竜がいるようだ、経験値のため退治しておくかね?」

「はい頑張ってみます。」

と答えた私は、結界をそのままに一人で魔力の方に向かった。

私の接近に気づいたようで、威嚇の孔砲を上げる緑色の竜。

「風竜か飛竜だ。」

そう思いながら私はすぐに魔力を高めながら、自分に対し魔法を付与していく

「対物理耐性、対魔法耐性、身体異常耐性、身体強化MAX、並列思考・・・重力魔法」

相手が動き出そうとした瞬間に重力魔法で地面にぬいてく動けなくする。

「斬撃強化、魔法防御破壊、・・・一撃必殺」

動けぬ竜の首に斬撃を叩きつけると、硬いはずの鱗が紙のように切り裂かれる。

首を半分ほど切り裂かれた竜は、最後の力でブレスを吐く。

しかし私の魔法防御を破ることはできず、2撃目の斬撃で首を断ち斬られて絶命する。

それを収納してから私は野営地に戻る。


「部長、なんとか討伐完了しました。」

「おお、称号にドラゴンスレイヤーの称号が付いたね。さあ屋敷に戻ろうか。」

と言うと馬車ごと王都近くに転移した部長。

「後屋敷まで手綱を任せるよ。」

と言うと馬車の中に入って行った部長。

私は、馬車を操作して屋敷まで無事に帰り着いたのであった。


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