絶対に存在してはならない願いを叶える通信機器
BLUE CATはおやつをすっかり食べ尽くして立ち上げった。
「じゃー行くよ。ところで君の名前はなんて言うんだい?」
「私か?私の名前は『アリエル』だ。ところでBLUE CAT、行くって?どこへだい?」
「うん。この四次元の世界の果てにある、全ての願いが叶うところ。」
「四次元世界?全ての願いが?叶うところ?」
そんな都合のいい話があるか?
そう思いながらもこの四次元の世界から抜け出すには、どちらにしてもしばらく奴の言う通りにする必要がありそうだ。
そして奴は大きな小部屋のようなBOXの前で立ち止まった。
「なんだこれは?一人カラオケの小部屋みたいだな?」
「何それ?電話BOXを知らないの?」
「何だよ電話BOXって?」
「そうか君は公衆電話という物を知らなのだね?これは誰もが十円玉を持っていればどこにでも電話をかけられる便利な物を」
「いやいや、スマホがあればいらないでしょう。」
「話は最後まで聞こうよ。昔はね、
1999年くらいはね、あまりなかったんだよ。
スマホや携帯電話。それでみんなでこの電話BOXに並んで、家に電話したんだ……ってそうじゃ無くて、それをモチーフに作られた願い事をするこのBOXなんだ。」
「だけどさ、願い事をするって、いったい誰にするんだい?」
「そりゃ君、神だよ。」
「神?!」
「いや冗談だよ。マメソニックイリュージョンシステムにつながるんだ。それからバーチャルリアリティの、世界でその夢を実現する……というのが表向きの筋書き。」
「表向きの?筋書き?」
「そう。さっきの神という話、あながち冗談でもないんだ。僕が時空警察の存在を知っていた理由わかる?」
「まさか!!」
「そうだよ。僕はマメソニック製の、猫型Androidだよ。つまりはこのBOXは
なんという事だ……。つまり我々時空警察が捕えなければならないのは、BLUE CATではなくてマメソニックという会社自体じゃないか。でも待てよ……。
「でも、君の飼い主は小学生と言っていたじゃないか?それともそれも嘘で、君はマメソニックの飼い犬がなのか?」
「アリエル、君は失礼なやつだな。猫型Androidにむかって飼い犬だというのかい?」
「だって!!」
「僕の飼い主は10歳の少年だよ。それは嘘じゃない。その子は僕を拾ってくれたんだよ。
大量生産のサンプル品として作られた僕を、
マメソニックは試作品にカスタマイズをし続けて、初号機である僕はすぐに産廃品として捨てられたんだ。だから僕は彼に対する恩義の為に尽くそうと決めた。けれども僕にはマメソニックの基盤が組まれているんだ。
だから捨てられたくせに、時々入る命令のシグナルを無視する事はできないんだ。そういう時は自分の意思など関係なく、このBOXを誰かに提供してしまう。僕だってつらいんだ。」
「BLUE CAT……。」
「だからアリエル君には僕の最後の抵抗を見届けてほしい。君もきっと気がついただろう?少年の先祖の人生を変えてしまったら、
彼はこの世に生を受けないかもしれない。
だから僕はこのBOXで願うんだ。
『僕の記憶と引き換えに彼の存在を残してほしい』とね。」
「わかった。そのBOXは一度に何度でも願いを聞き入れる事はできるのかい?」
「その世界に矛盾さえなければね。けれどもマメソニックを潰すとかはダメだ。そういう直接的な事は排除されてしまうから。」
「そうか。」
「アリエル、君は何を願うの?」
「うん。この混沌とした世の中をもっと人間味のある人の事を考えらる、平等にな世の中にしたい。そんなのはだめかな?」
「いいんじゃない?じゃー僕は少し約束を破る形になるけど、時空警察に出頭するのではなく、この願いと共に機能を停止するよ。
この汚い人間社会をもう見たくないんでね。
今度僕が起動する時はみんなが仲良くできる世の中である事を願うよ。」
そう言いながらBLUE CATはBOXに入っていった。そして起動を停止した。
「じゃー今度は私の番ね。」
機能停止したBLUE CATをBOXからひきずりだしてアリエルはBOXで受話器をあげた。
。。。。。。
何故人は考える事をやめてしまったのだろうか?それは快適な生活を求めて科学と化学の進歩に頼りすぎた故の結果に過ぎない。
けれども手順さえ間違えなければこんな事にはならなかったかもしれない。
大きなスクリーンに世界の地図が映し出される。その上の方には西暦が検索されているかの様に増えたり減ったりして行き来している。すると突然画面の光が明暗を繰り返し、
上にあるパトランプが光り始めた。
「司令官。アリエルが現れた座標が見つかりました。」
「よし、そのまま監視を続けろ。今はどの辺りだ?」
ん?!!!
end
CODE NAME BLUE CAT 〜未来を犯すもの〜 雨月 史 @9490002
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