ともだち

 それは中学二年の二学期が始まってすぐのことだった。


 私は誰よりも彼女のことを一番よく知っているつもりだった。


 彼女は夏休みの間、よく家に遊びに来ていた。彼女は背が高くスタイルも良くて、明るく活発でとてもサバサバとした男っぽい性格だ。…と思っていた。


「私ね二学期が始まったら、彼に告白しようと思うの」


 夏休みの最後の日、彼女は私に彼に告白すると宣言した。


 私はそれまで彼女が彼のことを好きだとは、一言も聞いたことがなかった。そして周りにそう見られる素振りなども、これまで一度も見せたことは無かった。夏祭りの日でさえ誰もがそんなことを微塵も感じなかったに違いない。それは良くも悪くも彼も同じだったのかも知れない。


 夏祭りの日、その彼と彼の男友達三人と私と彼女とあと二人友達の女子とで、夜店の屋台を巡って花火大会を観覧に行くことにした。


 彼女は意中の彼と度々、二人きりになることがあった。これから花火大会を観に川原に向かうとき、彼女と彼の二人の姿が見えなくなっていた。どうやら逸れてしまったようだ。


 花火大会もこれで終わりというときに、彼女と彼は私たちと合流した。


「ごめん。射的に夢中になってて逸れちゃった」


 彼女は彼と現れたとき、今までに見たこともない笑顔を彼女は私に見せた。


 そして彼女は告白する前に失恋した。


「…君のことが好きです。俺と付き合ってください…」


「はい、お願いします」


 それは中学二年の二学期が始まってすぐのことだった。彼女と二人で偶然に体育館の横を通るときに目撃してしまった。

 一瞬足が止まりそうになったが、彼女は何も言わずに、彼と彼が告白した彼女の横を普通に通り過ぎた。彼は通り過ぎる彼女と目が合ったのか、照れくさそうに苦笑いをしていた。

 私の友達は、そのとき、どんな顔を彼に見せたのだろうか? 少し遅れて彼女の横を歩く私は、彼女の顔を見ることができなかった。


 彼女は次の日から一週間インフルエンザにかかって学校を休んだ。

 それ以来、彼女からも私からも彼の話はしなかった。


 中学三年は別々のクラスになり、同じ高校へ入学したが、クラスは隣だった。

 あれ以来ずっと彼女との距離が少し離れたように感じていた。



 高校二年生になり、今日、私は私の大好きな彼から告白された。

 私は心の底からそれを期待していたし、それが現実となりとても嬉しかった。


 でも………


 彼女が振り返って見せた笑顔は、あの夏祭りの花火大会終了間近に彼女の意中の彼と一緒に現れたときに見せた笑顔と同じだった。


 私は彼の告白の返事を出来なかった。


 またあの夏祭りの日やあの中学二年の二学期が始まったときに見ることが出来なかった彼女の顔を見たような気がした。

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