第2話 断絶の大陸
「それで、何で精霊種に会うのは特別難しいの?」
「まあ、理由はいくつかあるけど、一番の問題点は、フィエルデ大陸に辿り着く方法がないってこと」
街に戻ってきた二人は、食事を取りながら、精霊種の住まう大陸についての話を続けていた。
「辿り着く方法がない? 位置が高すぎてってこと?」
「そんなわけないでしょ。フィエルデ大陸は光を全反射し、景色と同化する精霊術の結界で覆われてる。そのせいで、至近距離で観測しないとあの大陸がどこにあるのかも分からないの」
「じゃあ、どうにか近づいたら……って、それで済むなら、問題点にならないか」
「その通り。精霊種は、大陸に接近されないように、空域そのものを支配下に置いた。その結果、空に踏み込めば、たちまち粉微塵にされるのよ」
「な、何でそこまで……」
あまりの徹底ぶりに、シオンは顔が引きつる。
精霊種は、霊魔種と共に、創世の二種族とされているはずだ。
そんな強大な種族が、どうしてそこまで徹底的に大陸に辿り着かれないようにしているのか。
「さあ? 精霊種に聞けば分かるのかもしれないけど、その精霊種も地上にはいないから聞きようがないし」
「は? 地上にいない……?」
「正確には、ほぼいないだけどね」
カノは、飲み物で喉を潤し、話を続ける。
「精霊種は、ある時を境に、地上から姿を消したの。極たまーに、物好きな精霊種が地上にいるらしいけど、私は会ったことない」
「ある時、って?」
「遥か過去。この世界がまだ混沌としていた時に、精霊種と霊魔種を筆頭に、全種族を巻き込んだ大きな戦争があったの。その戦争の終結を境に、彼らは姿を消し、精霊種が外に出ることも、他の種族が大陸に来ることも拒んだ。完全な断絶。それが、フィエルデ大陸と精霊種よ」
「じゃあ、自力でフィエルデ大陸に辿り着くのは不可能ってこと?」
「そうなるわね」
淡々と答えるカノに対して、シオンは頭を抱えていた。
精霊種が断絶するような何かが、その戦争にあったのだろうが、今のシオンにとっては迷惑な話でしかない。
「精霊種は、特別なゲートを通って大陸を行き来できるってのは聞いたことあるけど、その肝心な精霊種が見当たらないんじゃ……」
「──いますよ、精霊種」
「……!?」
シオンとカノが頭を悩ませている背後から、透明な声が響き渡る。
いつからそこにいたのか。
振り返るとそこには、ターコイズブルーの瞳に二人を映した、栗色の髪の少年が立っていた。
「……あなたは?」
「初めまして。僕はリア。情報屋だよ」
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