第10話 アズマギクの餞別 8
◆エア・F・ネイチャーの場合
『お兄ちゃん、向こうに着いたら連絡してね』
『おう』
『パパとママは怒るだろうね』
『……おう』
『ま、私がうまくいっておくよ。気が利く可愛い妹がいて良かったねぇ、お兄ちゃん』
『…………おう』
『いいなぁ、一目惚れした女性を探して家出! ドラマチックだね。普通なら本当にはしないよ』
『うるさい、ほっとけ。……それじゃあ、元気でな』
『うん、お兄ちゃんもね』
前略、兄が家出しました。
☆
日本 福岡県福岡市 七月某日
寝苦しくて、エア・F・ネイチャーは目を覚ました。
随分と懐かしい夢を見ていた気がするが、よく思い出せない。
肩口にようやく達した長さしかないのに、髪が汗でべったりと首や頬に張り付いて不快な気分だ。
某猫とネズミのアニメーションの掛け時計を見ると、まだ四時にもならない時間だった。
エアはあくびをしながら真新しいベッドを這い出る。
寝る前は肌寒いくらいだったのに、今はじっとしていても汗が滴りそうなほど暑い。しかも湿度が高いようで、じめじめとした暑さだ。
故郷の暑さとは違い、日本の暑さはじっとりとしているとは聞いていたが ……日本の?
そこでようやくエアは自分が今いる場所を思い出した。そう、ここは故郷から約一万キロメートル以上離れた日本という国の福岡という土地だ。
少女がこの福岡という地を踏んだのは、ほんの二、三ヶ月前。SGCというとある国際企業が個人留学支援の導入を検討していると聞いて、思わず試験運用人員募集に応募、見事採用されたのをキッカケにやってきてしまったのだ。
昔から兄共々、思い立ったら即行動! という性格で、矢も楯もたまらず簡単な荷造りだけして飛行機に飛び乗った。
一応まだ親の保護下にある年齢だが、両親にこのことを伝えると、「じゃあ私たちはカナダとアラスカにハネムーンにでも行ってくるわね!」と既に何度目なのだかわからない新婚(?)旅行に出掛けてしまった。
どうやら行動力があったのは兄妹揃って親譲りだったようだ。
家出して失踪した(つもりらしい)兄から時折届く手紙を読んで、前々から日本という国には興味を持っていた。だからエアはほとんど迷わず行き先を決めていた。一瞬だけヨーロッパのどこかかメキシコあたりなどと迷ったが、兄にも会いに行くつもりで日本にした。
楽しみ過ぎて前日に眠れなかったのは内緒だ。
――……の、だが。エアは何故か飛行機を間違えた。両親に見送られて空港から旅立つとき、自分で調べていた出発時間とは少々違うなとは思っていたのだ。空港で慌てて母に連絡を取ってみると、兄がいると思われるオオサカではなくフクオカという州――ニホンではトドーフケンと分けるのだったか――行きの片道切符(飛行機から列車からバスから指示された通りに考えず乗り換えるだけで目的地に着いた。イタレリツクセリだった)であったと明かされた。
何故、と問うと、フクオカにあるニワカセンペイというものが気になって気になって仕方なかったらしい。まったくもってどうでもいい理由過ぎて、フクオカの空港で慌てていたはずのエアは「ああ、じゃあ探してそっち送るねー」なんて答えていた。
人間、混乱し過ぎるとなにをしているのか、自分でもよくわからなくなるものなのだと知った。
最初こそ戸惑ったものの、ひと月もすれば福岡の地にも慣れ、ふた月もすれば日常会話に苦労しない程度には日本語にも慣れ――気がついたら博多弁まで覚えていた。
ちなみにニワカセンペイは親の現在観光中の滞在先を聞いて即座に届けた。次はメンタイコが食べてみたいと言っていたが、新鮮で美味しいうちに届けられるのかがわからなくて未だに自分用しか買っていない。
我ながら順応性が高いと、箸の持ち方も様になってきた先日の夕食時にも思わず失笑した。
今ではラーメンといえばハリガネ豚骨一択だし、白米に一番合うのは明太子だと言い張るし、ベースボールは鷹押しで銘菓ひよ子の本家は東京ではなくこの福岡だと熱弁する。……というか東京銘菓として出されたら本気で怒る。
先週も道ですれ違ったブロンドの欧米人カップルを見て「あ、外国の人だ」とさえ思ってしまった。自分だって一応ブロンドだというのに。
SGCの留学支援のツテで、最近はSGC日本福岡支部でアルバイトまでしている。
文字はまだまだ難しいが、国際企業でもあるので母国語でもある程度融通が利くのがいいところだ。
……と、今までの経緯を思い返していたところで汗が引くわけでもなく。
仕方なくエアは洗面所へ行き、手近のタオルを濡らして顔を洗った。こういうときシャワー付きの部屋にすれば良かったと悔やむが、この部屋も会社が用意してくれた格安の物件だ。あまり文句も言えない。
しかし冷たく濡れたタオルで汗を拭いただけでも随分すっきりした。鏡を見ると寝癖と汗で金麦のような髪があちこちに跳ねていた。見慣れた自分の顔がこちらを見ているが、今はまだ暑いからだろう、頬が薄桃に染まっている。
もう一度寝直そうかとも思ったが、明日(というか日付的には今日)は早番だと気付いた。
二度寝してきっちりと時間までに起きられるような気がしない。エアは、二度寝はがっつりゆっくり寝たいタイプだ。
時計を見て、仕方なく覚悟を決める。
「あーあ、しょんなかねぇ」
普通に、日本語で呟いたエアだった。
☆
結局ゆっくりと寝直すこともできず、エアはあくびを噛み殺しながらバイト先の事務所で雑務をこなしていた。事務所で雑務のアルバイトといってもただの書類整理や頼まれた資料を別部署に渡しに行ったり、電話の中継ぎだったりと、忙しいときはくるくると回るようにあちこちへ走り回るはめになる。
とはいえ最低賃金よりずっと高い時給だし、何より多国籍企業なSGCでは母国語も通じるし、他にもいろんな国や人種の人間が面白いくらいにごちゃまぜになって働いている職場だ。文句を言うのはおこがましいとさえ思える待遇ではあるし、なによりエアは今の日常を気に入ってもいた。
惜しむらくは、通勤途中などでよく見かける彼女と同じくらいなのだという年齢の少女たち(東洋人はエアたちに比べて随分と幼く見えるのだが、尋ねたところ同年代なのだという)が、みんな同じ制服を着て楽しそうに登下校したり寄り道をしたりしているのが少しばかり羨ましいことくらいか。
つい見かける度に目で追ってしまうのはもう癖のようなものだ。
当初の予定通りのオオサカへ行っていればあるいは、留学生として学校生活も送れたのかもしれない。
が、主に母親のおかげで福岡に路線変更してしまったエアは、急に受け入れてくれる学校も見つからずに結局こうしてバイトをしながら生活している。
エアとしては今の状況も嫌いではないので、来年度にまた留学生として受け入れてくれる学校を探しつつ、毎日を楽しんでいるのだった。
エアは基本的に楽観的であり、何より昔から「今」を楽しむことができる少女なのだ。
お昼休み、職場の友人や先輩たちと昼食をとるために社外へ出る。
どこもお昼時で人が溢れている。ゆっくりとランチとしたいところだが、休み時間は限られているから今日は回転率の早いチェーン店にしようということになった。
いくつかのチェーン店が並ぶ通りを歩いていると、同じように安いチェーン店を探して歩いているのだろう制服の集団を見かけた。
レトロな紺色のセーラー服の集団は、地元の高校のものだろう、楽しそうにお喋りをしている。
なんとはなしに眺めていると、その中の一人がそういえばと話題を変えた。
「一組のアヤコ、通り魔に遭ったらしいって話、聞いた?」
「えっ、マジで?」
「ああー、聞いた聞いた。なんか数箇所も刺されて重症だっけ?」
「違う、違う。それは三組のキモトだよー。アヤコはビクッて滑ってコケただけ」
「キモトもそんなに重症じゃないってば」
「そうだっけ?」
「ヘンシツシャこっわーい」
「アンタはヘンシツシャでも狙わんけん、だいじょぶっしょ」
「ひどっ」
「あはは。アタシは来週のテストのがバリこわ」
「うちもー」
「それはちょっと違うやろ……」
声は楽しげだが、随分と物騒な話をしていた。
しかし彼女たちにはそれほど近い場所で起こった話ではないのだろう、危機感は見られない。
少女たちはそのまま別の店に入っていったが、一緒にいた先輩の一人が眉を寄せて苦い顔をしていた。
「……ガッコはどうした、授業は」
ため息を吐いて今時の娘はと嘆く。エアから見ても先輩もまだ十分今時の娘だと思うのだが、あえてツッコミはしない。
「でも変質者なんて。最近、本当に物騒よね」
「そういえば、ニュースで連続通り魔事件だとかってやってたね」
「エアちゃん、可愛いから気をつけなさいね」
先輩たちや他のアルバイトの子達も次々に話題に乗ってくる。
「というか、今朝のニュースでは東京でクマが出たとか言ってたような」
「いや、それは東京じゃなくてもっと東北でしょう……」
「東京は大きなカラス大量発生じゃなかったかしら」
「どっかでは山猿が里に降りてきたとか猪だとかだっけ」
「あ、ワールドニュースでは中国やロシアでUMA目撃とか言ってた!」
「ゆーまって?」
「未確認生物、的な?」
「アンタも大概適当よね……。沖合ではリュウグウノツカイとかダイオウイカがたくさん上がってるんだっけ」
「どっかの国では大きなクラゲに船沈められたとか」
「えっ、クラゲ?」
エアも見かけたようなニュースの話題がぽんぽんと飛び交う。
先輩の一人が「最近どうなってんだろうね、ホント」とため息混じりに呟く。
その後も雑談は続いていったものの、女性特有の会話の方向転換から、最終的には職場で一番出世が見込める若い男性社員は誰かという話に変わっていた。
昼休みが終わり事務所に戻ると、割り当てられたデスクにエアの名前が書かれた封筒が置いてあった。
「なんだろ」
首を傾げて周りを見る。周囲の社員たちも似たような封筒を手に囁きあっていた。
開けていいのか迷っていると、同じ封筒を手にした派遣の友人が近付いてきた。
「覚えてない? ITって企画あったでしょ」
その結果だよと今度は隣の席の先輩が笑う。
「あの変なテスト!」
五月頃に実施された一大プロジェクト、その結果が届いたようだ。
開けるかどうか迷って、周囲の社員たちですら封筒を開けて雑談に花を咲かせているのだから、とエアも封を切る。
「あ」
一枚目の用紙に大きくプリントされた「合格」の文字。
正確には合格ライン突破、だそうだ。
合格ラインとはなんだろうか。事前の説明では聞き覚えのない項目だ。
横で見ていた友人がエアの肩をばしばしと叩いた。痛い。
「わっ、すごいじゃない! なんのテストで合格したの?」
「えーっと」
合格と書かれた下にそれより小さな字で詳細が綴られている。
『貴殿は徳力テストの部にて優秀な成績を修めたのでここに評します』
今回のテストでは主に三つの部類に分けられ、一般的ないわゆるIQやEQ、PQなどといった知識や知性面を数値化する「知力」テスト、基礎体力や身体能力を計る「体力」テスト、そしてその他を計るという「徳力」テストとなっている。
正直、一番よくわからない部類のテストだった。
(心理テストみたいなのとか、知力テストとは違う記述問題とかいっぱいあったやつ……だったっけ)
問題は脈絡なく、随分と戸惑ったのを覚えている。
が、その部に合格したという。
エアは信じられないものを見た心地で、何度も用紙に書かれた文字を眺める。ご丁寧に母国語で書かれたそれは、読むのに苦労はない。
何度見直したところで、用紙に書かれた「合格」の文字は変わったりしなかった。
ぽかんと呆けているエアをよそに、先輩と友人は未だ彼女の肩をばしばしと叩いておめでとうを連呼していた。
☆
それから数日後、なんの因果か、エアは再び飛行機とバスに揺られていた。今度は国内線だが。
職場で通知を受け取った数日後、彼女の下に似たような封書が再び届いた。
人目を憚るようにして送られてきたそれは、どうやら彼女を含む合格者たちに来てほしい場所があるのだという。
合格ラインもよくわからないが、呼び出してどうするのだろうか。パーティー?
日数もかかるしどうしようかと悩んでいると、あまり関わったことのない別部署の上司に呼び出された。呼び出された会議室に赴くと、上司の横に見覚えのない男性が立っていた。
藤代と名乗った薄い顔をした男性は、SGC本社の正規社員なのだという。そんな彼がわざわざエアと対面したのは、特例として長期休暇を許すので呼び出しに応えるようにと促すためだった。更には外国人アルバイトとしての待遇としては異例も異例だが、追加の有給休暇扱いにもしてくれるという。
他の人ならば それこそどこぞの金目の高校生などは――疑ってかかるだろうが、エアはその点、能天気に国内旅行ができると喜んだ。……いっそ彼女は大物なのかもしれない。
そうして行くと決めたエアの行動はやっぱり早かった。
思い立ったが吉日、とばかりにリュック一つに荷物を詰めてさっさと指定された飛行機に飛び乗ったのだった。
日本 青森県むつ市 八月十三日
最後の駅を降りたところでエアは思わず大きく伸びをした。長時間座りっぱなしは 半分以上寝こけていたとはいえ――辛い。
シワになりかけていた白いクロップドパンツの裾を整えて、リュックを背負いなおす。
予定表を見ると、これからまたバスでしばらくかかるようだ。幸い時間はあるのでしばらく駅周辺をぶらつくなりすればいい――と能天気に思っていたエアは駅構内を出て認識を改めた。
思いのほかなにもない。
コンビニの一つでもあれば早売りジャ○プの立ち読みなり飲食スペースでぼーっとするなり、なにかしらできたはずだ。だが、店一つないがらんとした駅でエアは笑顔を凍らせた。
「……どげんち時間潰そ……」
会社が出してくれるというバスも見当たらない。
若干エアが途方にくれているとき、それは起こった。
ご、ご、ご、
と聞き慣れない音――あとからそれが地響きと知った――に続いてどんと大きな揺れがエアを襲った。
ひゃあと悲鳴を上げて蹲る。思わず頭をかばった。
周囲にいたまばらな人影も小さな悲鳴を上げてバタバタと慌てふためいている。
幸いその揺れは長くは続かなかったようで、周囲の人々はざわめきつつもほっと胸をなでおろしていた。
しかし、エアはその場に蹲ったまま動けずにいた。
エアの故郷では大きな地震は少ない。それどころか、エア自身は気にしたことがないほどに被害に遭ったことなどない。それは故国での頻度が少ないからか、エアがたまたま恵まれていたのかはわからないが、兎に角、地震というものを意識したのはこの日本に来てからだった。
ついでに言うと、エアが住んでいる福岡は日本のほかの地域に比べて地震頻度も少なく、あまり大きな揺れとも縁遠い。そういう偶然が重なって、彼女は今までこんなにも大きな揺れに遭遇することはなかった。
その上、今いるのは慣れてきた福岡とは遠く、知り合いのいない異国の地、一人旅の真っ最中だ。
不安で息ができないとはこのことだろうか。
エアは目尻に涙を溜めてじっとその場に座り込んでしまっていた。
動けない。
誰か。
震える肩を抱きしめて、エアは祈る。
そんな少女の頭を誰かがぽんと撫でた。
続いて背中をゆっくりとさする。温かいその手にふと呼吸の仕方を思い出した。
「大丈夫か? Are(大) you(丈) all(夫) right(か)? English(英語圏)? Or(それとも) Japanese(日本語わかる)?」
その暖かい手の持ち主は、ゆっくりとした口調で問う。エアの身なりを見てだろう、日本語と英語を交互に使っていた。
だいじょうぶ、と小さく呟くと、その声の主 男はホッとしたように日本語で大丈夫、大丈夫と繰り返し、一定のリズムで背中を優しく叩いてくれた。地面を見つめたままのエアを落ち着かせる声は、急かすことをせず、その手と同じように温かかった。
しばらくして、エアはほうと息を吐いた。
ようやく早鐘を打っていた胸の鼓動も収まり、地に足がついたような気がした。実際、愛用のスニーカーはしっかりと地面を踏みしめている。正確には土ではなくアスファルトだが。
お礼を言おうと手と声の主を見上げる。
見慣れた金麦の髪と青い瞳とぶつかった。
「……え、お兄ちゃん……?」
心配してくれていたのだろう、少し遠巻きにこちらを見る周囲の人々に気付きもせず、エアは大声を出した。
見間違えようのない、まごうことなき実兄が首を傾げてエアの肩に手を置いていた。
一年だか二年だか前に家を出て以来会うことのなかった兄だが、流石に妹として見間違えるはずもない。
エアと同じ色の髪、エアより青みの強い碧眼、頃合よく日に灼けた肌は健康的で、スポーツをする青年らしくそれなりの硬さと柔軟さを持っていると見て取れる肉付き。
少々派手過ぎる色合いの赤い服と頭のヘアターバンは、奇抜にも思えたが彼の明るい太陽色の髪に映えてよく似合っていた。
驚いた口をぽかんと開けたまま兄を見つめていると、当の兄――アクア・S・ネイチャーはきょとんと目を瞬かせ、
「……………………ん、誰や?」
などとのたまった。
ぴきり。
エアの口端が引き攣る。
そうだ、この男はこういう無神経なところが多々あるのだ。
「ちょっと――変な日本語……イントネーションで話さないでよ。お兄ちゃんでしょ?」
ムキになって言い返す。
すると変な日本語、と言ったあたりでアクアは顔をしかめた。
「なんや変なて。関西弁こそ日本の共通語にして最も愉快な言語やぞ!」
「……はぁ? なに言いよーとよ? 日本でいっちゃん優れとるんは博多弁たい!」
思わず方言で言い返す。
金髪碧眼の少年少女が流暢な日本の方言で喋るのを見て周囲の人たちが目を丸くしているが、二人の目には入らない。
二言三言返せは三言四言と帰ってくる。それに更に返せば……と延々と続きそうな関西弁と博多弁の兄妹喧嘩は続き、一区切りついた頃には二人とも肩で息をしていた。
時期を考えて薄手のチュニックを選んでいたというのに、興奮したせいでうっすらと汗ばんでいる。だが、それを微妙に冷たい風に撫でられていて少々ひやりともしている。あと数分したらリュックにしまいこんでいたボレロを出して羽織ろうか。そんなことを考えながら、エアはふうふうと喘いだ。
ぜえぜえと息を整えながら、兄が苦笑する。
「…………日本語、うまなっとるな、エア……」
「…………お、お兄ちゃん、こそ……」
再会したらどうしようなにを言おうと考えていたのが馬鹿らしいくらいに気の抜けた再会だった。
しかしそれが妙に自分たちらしくて、エアはふっと吹き出す。
「変わってないね、お兄ちゃん」
「エアこそ。……せや、なんでこないなトコいてるんや?」
尋ねられて思い出す。
事情を話すと、アクアは目を丸くして、
「なんや、お前も合格したんか」
と言った。
エアがその言葉を飲み込んで理解し、驚きの声を上げるのに、そう時間はかからなかった。
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