第3話

そんな日々を過ごして数ヶ月、僕は年末年始に帰省した。帰省といっても東京と埼玉だから大晦日の夜に行って元日の夕方には帰ってくるつもりだった。元日の昼過ぎ、気晴らしによく中学の時に行っていた本屋に父親の車を借りて行った。そこで男性向け雑誌を見ていると後ろから若い男性が歩いてきた。そのまま通り過ぎると思ったが僕の目の前で立ち止まった。そして僕を見ているようだった。不審に思い、立ち去ろうとすると男性が話しかけてきた。

「鈴中だよな?鈴中祐希だよね?俺だよ。俺。佐々木来人。」僕は図らずも佐々木来人と再会した。

「ああ!ごめん、全然気づかなかった。」

「今月の成人式来るよな?家族と来てるから戻らなくちゃ。成人式で連絡先交換絶対しような!じゃ!」

そう言って彼は笑顔で駆けていってしまった。でも、あなたが私を忘れないでいてくれた。ただその事実に私は安心するのです。最上級の比喩だと思うけれど、彼の言葉が空に舞って僕を包んだ。

成人式当日、式が終わり、僕が中学時代のクラスメートと渋々話していると佐々木が同じサッカー部の連中から離脱して僕のところへ話しかけた。周りの奴らは少しばかりざわめいているらしかった。

「この前言ってた通り、連絡先交換しようぜ。」

「う うん。」

「詳しいことはまた後で送るわ。」

周りが少し騒がしかったし、このためにわざわざ来たようなものだったから会場を跡にした。実家に荷物を置いていたので一旦帰ると、彼からメッセージが来ていた。

「中学の時の返事を伝えたい。鈴中って今はどこに住んでる?」

「今は都内で一人暮らししてるよ。」

「俺も都内で一人暮らししてるよ。なら暇な時に俺ん家来ない?」

そうして彼の部屋に来てしまった。まだ夕方なのにカーテンが閉められていて薄暗い部屋だった。電子タバコがソファの前の机に置いてあった。マンションが首都高の近くだからか車の走行音が窓を閉めていてもかすかに聞こえる。最寄り駅は水天宮前。床に散乱しているエナジードリンクの空き缶には虫がたかっている。

適当に座っていい、と言われてもどうしろと言うのだ。

「とりあえず、ネトフリとか見ようか。」

これはもしや。「そういう展開」か。家で見る映画は、序章というか助走という感じがする。果たしてどのくらいの人が、どのくらいのカップルが最後まで映画を見るのだろう。2人が果てるまでのある一種のアイテムのよう。そんなことを考えてしまう自分は浅はかな人間だなと改めて思う。

「エモい」と言われるようなものを煮詰めて水分を蒸発させたジャムみたいなアホらしい邦画を見ながら彼は言った。

「中学の卒業式の日に鈴中は俺に告ってくれたじゃん?実は、その前は考えもしなかったけど、あの後少し考えてさ。いいかなって思ったんだよね。」

「それはさ、僕のことを良いって思ってくれたってこと?」

「鈴中はさ、俺とする気ある?その、セックス。」

「う、うん。でも、僕でいいの?マッチングアプリとかで探せば近くにいる可愛い女の子と会えるんじゃないの?」

「でも、今日はお前がいい。」

そう言って彼は僕に軽くキスをした。唇が少し触れるくらいだけれど。

「改めて聞くけど、佐々木くんは本当に僕でいいんだよね?」

「今更ここまで来て何言うんだよ。」

そう彼は笑いながら僕に深いキスをしてくれた。

僕は彼が着ていたパーカーを持ち上げ、彼の乳首を舌で舐め回した。彼は体をくねらせ、逃げようとする。彼の反応が楽しくて、彼を自分の支配下に置きたくて舐め続けた。次に彼の短パンを脱がせ、下着を降ろした。彼の陰茎を口に含んだ。硬く膨らんで大きくなっていくのが口の中で分かった。舌で先端を舐めた。そして咥えたまま上下に舐めた。彼が声にならない声で感じているのが聞こえた。

「小指でもいいから、挿れる前に指で拡げて」そう僕が言ったら彼は小指を入れた。

ゴムを着けた彼の「モノ」が入ってきた。少しずつ少しずつ一緒になっていく、一つになっていく感覚があった。夢にまで見た瞬間だった。思い描いていた理想が現実になって幸福感で涙が出そうだった。そんな屈託のない笑顔でこっちを見ないでよ。恥ずかしいからさ。

再生されっ放しの映画はベタな展開になってヒロインの少女は涙を流していた。彼は腰を動かして僕は突かれた。深いところまで。芯まで僕たちは一緒に、1つになれた気がした。

「あっ、気持ちいい。やばっ。」

そう彼は言いながら腰を動かし続けた。だんだんと激しくなっていった。

「ごめん、出るっ。」

コンドームに出したのだろうか。「中」に入っているものが少し重くなった気がした。

陰茎を抜きながら彼はキスをしてくれた。ティッシュで拭き取りながら彼は、空虚に再生された映画を止めた。

「もし、時間あるなら今日、泊まっていく?」

「うん、そう言ってくれるなら泊まろうかな。」

翌朝、「昨日も同じようなこと言ったけど、俺と付き合ってくれるかな。」

「もちろん。」

そう言ったら彼はきつく強くハグをしてくれた。

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