4#15



目を覚ますと白井さんが久保くんに馬乗りになって首を絞めあげていた。


何がどういうことなのか、さっぱりわかりませんが……。



修羅場ですね(笑)



さて状況の把握をしましょう。僕の灰色の脳細胞が高速で動き出します。


まずは自身の状況。場所、久保くんの自宅、ベットの上、湿り気、裸、ベタつく身体、不快感、倦怠感、満足感、下半身に違和感、ドロリとした白濁液……事後?


満面の笑みで久保くんに馬乗りになり両手で首を絞めいる白井さん。白目を向き、口の端から泡を吐いてる久保くん。まさに犯行現場。


なるほど理解しました。あの久保くんとの白井さんの目の前でおっぱじめた浮気おせっせ催眠アプリプレイは夢では無かったということですね。ということは催眠アプリ……本当に本物だったということですか。これはびっくり。というかうっかり処女喪失してるじゃないですか僕。どうするんですか責任とらせますか。


とはいえ原因、僕なんですよね。僕が催眠アプリであんなことをしたから、あんなことがこんなことになったと。いや催眠アプリなんて非現実的な物が本物だと思うわけないじゃないですか。僕は悪くありません。


さて、久保くんとの激しいおせっせフィニッシュで僕が意識を飛ばした後に、おそらくブチ切れてしまった白井さんが久保くんを殺して私も死ぬ!的な展開になったのでしょう。


まさに久保くんが今にも死にそうです。ですが死にそうであって、まだ死んではいない。目が覚めたタイミングはよかったですね。流石の僕も死人を生き返られせる術は知りませので。死んでないならどうとでもなるでしょう。


とりあえず、このまま続けさせては本当に久保くん

死んでしまうので白井さんを止めましょうか。



(思考時間3秒)



「やめなさい白井さん。それ以上は本当に死にます」


「…………」



白井さんの顔が勢いよくコチラを向いた。



無言の笑顔が僕を捉える。



まるで固定されたように白井さんの表情には笑顔が貼り付けられている。



ヒュンっと風を斬る音。白井さんの手元がブレたかと思えば、何かが僕に向けて投擲されていた。狙いは顔面ですね。


僕はそれを首を捻って避ける。瞬間、投擲された物がガンッ!と背後の壁に当たる音が聞こえた。結構な勢いで投げましたね。まぁ、そんなもの当たりませんが。


背後を振り返ると壁に包丁が突き刺さっています。



「白井さん。そんなモノを投げて当たっていたら洒落ではすみませんよ?」


「…………」



ゆらりとにこにこ笑顔が立ち上がった。


1歩、2歩、3歩……笑顔がゆらゆらと横に揺れ、それは僕へと飛びかかってくる。


ほう。この僕をヤろうってとこですか。いいでしょう。相手をしてあげます。


掴みかかってくる白井さんの腕を取り、勢いを殺さず、利用して、捻って、回して、ベットの上に落とす。



「うぐっ……!」



くぐもった声。構わず、腕を極め、関節を固めて、ベットに押し付け身動きを封じます。


華麗に決まってしまいましたね。誰もが目を奪われてく完璧で究極の委員長とは僕のこと。明日の希望を取り戻しましょう。強く今を生きる人間ともの腕を極めて。


なんでもできちゃう委員長、佐藤紫音。実家は道場です。



「残念ですが、白井さんの様な鈍臭い女にどうこう出来るほど僕は柔な委員長ではありません」


「…………ッ!」


「大人しくしてないと痛いですよ?」



拘束から抜け出そうと藻掻く白井さんですが、僕の関節技がガッチリ決まってますので逃げることは出来ませんね。


ヤンデレ補正とでもいいますか普段の白井さんよりかは出来る動きではありましたが、そもそものスペックがポンコツの可愛いだけの女。ハッ、その無駄にデカいだけの脂肪の塊をぶら下げていて僕に勝てると思ったら大間違いなんですよ雑魚が。あっ、僕が貧乳だからといって僻んでいる訳では無いです。


某有名なヤンデレ作品。主人公が最後に首チョンパされて頭がカバンに詰め込まれてしまうのがありましたね。


主人公は何故、ヒロインに殺されてしまったのか?


答えは簡単です。主人公が弱かったからです。


物理的に。


ヤンデレヒロインがなんだっていうんですか。そんなもの武力制圧してしまえばよかったんです。目には目を、歯には歯を、力には力を。刃物を持って襲ってくるなら、ぶん殴って、力でねじ伏せて、わからせてやればよかったんですよ。


弱かったから無惨にも首チョンパ。この世は弱肉強食。弱いものは強いものに虐げられる。あれこれ言葉を重ねても最後にモノを言うのは純粋な暴力です。


相手を論破したところで、相手が発狂して襲ってきたらどうします?どれだけ言葉を積み重ねても、いくら自分が正しかろうが、ご破算。そこで終了。負け。


常識が通じるのって人間だけです。狂った獣を相手にするには力不足。



「とりあえず落ち着いて話し合いをしましょう。出なければ力で持って解決しますが?」


「んッー!んッー!」



で、コレは理性を失い、狂った獣ですね。



関節をキメられて痛いでしょうに、それも構わず暴れています。


これでは話し合いは出来そうな無いので、一旦、絞め落としましょう。


さらっと体勢を変えて白井さんの首に腕を回し、絞めて意識を奪いました。



まったく。彼氏が他の女とセックスしたぐらいで病みすぎでしょう。白井さんだって僕の彼氏(夢の中)と散々セックスしたでしょうに。



ふぅ……。それにしても身体がベタつきます。ちょっとシャワー借りて流してきましょう。










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