4#13
同じクラスの佐藤紫音はクラス委員を務める真面目な女子生徒というのが俺の印象だ。口はかなり辛辣なところはあるが、そこに理不尽な物言いは無い。ちゃんと筋は通っていて彼女の言うことは正しい。たまに冗談か本気かわからない、とんでもない発言をすることはあるが……。
だからこそ俺は彼女にかなり好感を持ってはいたのだが……。
催眠アプリを渡した時との彼女の発言はぶっ飛んでいた。冗談の類ではあったのだろうが、いかんせんガチもんの催眠アプリ。冗談では済まなかった。
委員長とヤッてしまった。
犯行現場には様々な体液に塗れ、とても人には見せられない表情で気を失っている委員長。犯人は俺である。
委員長をメチャクチャにしたところで、俺にかかっていた催眠の効果が切れて、おれはしょうきにもどった。
正直、しょうきに戻らなかった方がよかったとちょっと思ってしまった。
ど、どうしよう……。
振り向くとそこには無表情……そして深淵を覗き込んでいるのではと思わせる暗い瞳をした聖歌ママが居る。
どどど、どうしよう……。
現状、聖歌ちゃんは委員長にかけられた催眠によって動けないでいる。催眠をといて動けるようにしてあげたいが、動けるようになったら何をされるかわならない。
ブツブツと何事か呟いている。
「……ねぇ……ねぇ……ねぇ……どうして……どうして……どうして……」
ホントにどうしてこんなことになったのか……。
兎にも角にも命の危険を感じた。
と、とにかく聖歌ちゃんを動けるようにしてあげよう。俺は催眠アプリを使って聖歌ちゃんを動けるようにしてあげた。
「…………」
無言。
動けるようになった筈だが、聖歌ちゃんは動かず、喋らず。
暫く時間を要してから、フラりと幽鬼のように台所へと行って、そして直ぐに戻ってきた。
包丁を持って。
「さっくん」
先程とは打って変わって聖歌ちゃんはにこにこしていた。まるで花が咲き誇るような満面の笑みだ。
手には包丁を握っている。
「そこに正座してください」
「はひっ……!」
俺は素直に正座した。
ガンッ!!!
「ひぃっ……!?」
正座した俺の太ももと太ももの間。股間の目の前に
聖歌ちゃんは包丁を振り下ろした。
寸分たがわぬ包丁コントロールでもって、俺の肌に傷はつかなかったが、振り下ろされた包丁は深々と床に刺さった。
「さっくん……さっくんのママは誰ですか?」
にこにこ。
「さっくんのママはママですよね?」
にこにこ。
「さっくんはママだけじゃ不満なんですか?」
にこにこ。
「そんなことありませんよね?」
にこにこ。
「さっくんのママはママだけですもんね?」
にこにこ。
「ママ以外のママなんて必要有りませんよね?」
にこにこ。
「ねぇ、さっくん」
にこにこ。
「それなのに、どうして?」
にこにこ。
あまりの恐怖におれは超えを発することが出来なかった。
スルリと聖歌ちゃんの10本の指がオレの首にまとわりつく。やさしく、やさしく、絡みつく。
「どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?」
壊れた玩具のように聖歌ちゃんは繰り返す。
なんとか言葉を振り絞ろうとするが、まるで催眠にかかっているように声は出ない。
押し倒されて馬乗りにされる。
気がつけば聖歌ちゃんの手にはまた包丁が握られていた。
片手で俺の首を掴んだまま、聖歌ちゃんは包丁を振り下ろす。
ガンッ……!ガンッ……!ガンッ……!
俺の顔の真横、耳にあたりそうなスレスレの位置に、何度も包丁が振り下ろされた。
少しでも手が狂えば俺の顔面には穴が空くだろう。
「どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?」
ガンッ……!ガンッ……!ガンッ……!
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