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白井聖歌。


顔面偏差値高い。胸は大きい。そして優しい。校内でも人気が高く、聖女様なんて呼ばれてるクラスメイトだ。


僕とはそれほど仲が良いという訳では無いが、クラスメイトととして普通に会話はする。その程度。


僕としては特になんとも思っていないのだが、白井さんはたまにボケた事をヤらかす事があるので、それを注意したり、説教したりする。その為か白井さんは僕に苦手意識を持っている様な気配がある。



「なんですか、それは。そんな大きなモノをぶら下げて、随分と肩がこりそうですね。何をどうしたらそんな大きく育つんです?僕に来る分の栄養までそちらに行ってるんですかね」


「ご、ごめんなさい……」



ちょっとした自虐ジョークだったんですが、真に受けたみたいで怯えられてしまいました。


見事に白井さんと仲良くなるのに失敗しました。人と仲良くなるのは少し苦手です。


その反面、久保くんとの仲は少しづつ進展していきました。



「久保くん、今週末、町内清掃があるので一緒に参加しましょう」


「町内清掃……佐藤さんそんなのに参加するんだね。流石、クラス委員。わかった。たまたま週末はバイト休みだったからいいよ」


「ありがとうございます」


「休みの日にゴミ拾いなんて佐藤さん真面目だね」


「それに付き合ってくれる久保くんも大差ないでしょう」


「……いや俺は真面目とかでは無いよ」



頼めば断らないのをいい事に、何かにつけて久保くんと一緒に居る時間を増やしました。やはりこういう小さな積み重ねですね。


焦ることでもないでしょうし、ゆっくり確実に仲を深めて行きましょう。




久保くんに彼女が出来ました。




焦るべきだったと後悔しました。


あまりにも突然の出来事でした。


久保くんとは最近かなり一緒に居ることが多い。そんな僕が久保くんに迫る女の影をまったく感じ取れませんでした。


一体どこで、いつの間に仲良くなっていたというのか……。



しかし、よくよく考えてみれば、確かに地味な印象を受ける彼ではありますが、その実、内面的にはかなりの優良物件です。僕の他にも狙っている女子が居ないとも限らないと、その点を考慮していませんでした。


まあ、仕方ありませんね。悠長に構えていた僕の落ち度です。逃した獲物は大きい。




久保くんの相手はあろうことか、あの聖女様でした。



どうしてそうなった?と僕のみならず校内の大半の生徒がそう思ったことでしょう。


聖女様の彼氏がどうしてあんな地味な奴なんだ?と。


騒然とする校内。紛うことなき事件でした。


しばらくの間は2人の話題で持ち切りでした。


所構わずイチャついている2人が目撃されては、聖女様信者は脳を破壊されていったとか。



クラス内でも2人は酷かったです。


聖女様はまるで理性のタガが外れたかのように、久保くんにベタベタベタベタと。


当の久保くんも最初こそは困惑していたようですが、気がつけば久保くんもベタベタベタベタとしていました。


どう見てもバカップル。


そうして久保くんは変わってしまったーー否、変えられてしまったのかも知れません。


2人は他人のことなど気にせず、自分たちだけの世界に浸かっていました。


まさか教室内でキスまでし始めるとは思ってませんでしたね。



「久保くん、ちょっと手伝って欲しいのですが」


「いいよ」



それでも頼むと久保くんは僕の手伝いはしてくれました。彼の方から来ることは無くなってしまっていましたが。



「にこにこ」



久保くんの後ろから聖女様がにこにこと微笑みながら僕を見つめていました。にこにことはしているのに何故か底知れぬ恐ろしさを感じました。



「久保くん、ちょっと手伝って欲しいのですが」


「ごめん佐藤さん。手伝えない」



久保くんが頼み事を断るようになりました。


頼んでも応えてくれません。



そこで僕と久保くんの関係は途切れてしまった……そんな気がしました。




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