3#1



聖歌ちゃんがママとなり、同棲を初めて数日が経過した。


最近は学校ではほとんど一緒に過ごしていたのが、家でも一緒になった。俺がバイトしている時間以外は四六時中一緒に居る。


こうして誰かとおはようからおやすみした後まで一緒に居るのは俺としてみれば初めての経験だった。


正直な話、楽しいし、幸せだった。


聖歌ちゃんみたいな可愛い子が、言えばなんでもしてくれるし、言わなくても何かしようとしてくる。至れり尽くせり贅沢な話だ。


まぁ、本人のスペックに多少問題もあったりはするけど……。



「さっくん!ママがさっくんのお勉強見てあげますよ!わからないところはありますか?」


「と、特に無いなぁ……」


「そうですか……」


「あっ、聖歌ちゃん。そこの問題間違ってるよ?」


「ふぇ!?ど、どこですか……?」


「ほらココ、ココ。これはこうじゃなくて、こうだね」


「あっ、あー……。そうですね……。間違ってますぅ……」



勉強を見てあげると意気込む聖歌ちゃんではあったが、ぶっちゃけた話、学校の成績は俺の方が良かった。


他にもいろいろとやらかした。


「お洗濯します!」と意気込んで洗剤を入れ忘れて、ただ水洗いしてみたり。「お掃除します!」と意気込んでみたら、家具をひっくり返して逆に汚してみたり、などなど。


極めつけはやはり料理か……。



「さっくんさっくんさっくん!フライパンから火がッ!火が出てますっ!」



フライパンから火柱をあげ、オーブンから煙をあご、鍋からは当然のように吹きこぼし、ダークマターの生成はお手の物。料理中は聖女様から闇魔法使いか、暗黒錬金術師あたりにクラスチェンジする。



まぁでもその生成されたダークマターは何故か、めちゃくち美味い。いやホントよくわからないけどめちゃくちゃ美味い。催眠アプリ?いやそんなものは知らんけど、催眠アプリってやっぱり便利だねー!


何度も果敢に料理に挑戦する聖歌ちゃんではあるが、上達する兆しは今のところはあまり見られない。


その代わりと言うべきか特殊調理のウではメキメキと上がっている。



「えへへっ!ママ知ってますよー。さっくんはー……ココを……いい子いい子……されるのが好きなんですよねー?ほらっ、さっくんいっぱい元気になっちゃいましたねー!いいですよー、ママがいっぱいいい子いい子してあげますー!」



すっかり不思議なおキノコさんの調理に慣れてしまったママである。あー……最高かー……。



「さっくん!練習する時に使うのでコレも買いましょう!」



買い物中。にこにこ笑顔で聖歌ちゃんが持ってきた物は薄いアレであった。



「ぎょ、業務用……?144個入り……だと……」


「はい!たくさん練習しますのでこれぐらいは必要だと思います!」


「お、おう……」



深夜のママの練習は続いている。それに関する俺の記憶は無い。事後に消されるか、事前に記憶を残さないようにママの手によって催眠アプリを使われていた。ちなみに拒否権は無い。最近なんだかママの肌艶はかなりいいが、俺は謎の倦怠感を抱えている。



「あの……ママ……そろそろ練習はいいんじゃないかなーって……思うんだけど?」


「いえまだです!ネットで調べたら何やら48通りあるようですので、48通り全て完璧にマスターするまでは練習します!その他にもいろいろ試したいことがあるので、まだまだ練習は必要です!だから本番はまだです!」



この性女様は一体何処を目指しているのだろうか……。


そうして俺の身体はどうなってしまうのだろうか……?


持つのか?いろいろと持つのか俺の身体は?いや記憶無いからまったくわからんのだけれど。


今度、催眠にかかったフリでもして見ようかなんて思った。








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