#14 皐月くんは許可するッ!



昼休みの一波乱を終えた。


ホント散々な目にあった……あの聖女様と唐突にお昼をご一緒する事になったかと思えば、ほぼ密着して席に座ることになるわ、ハイアーンされるしするし、関節キスするし、フォークぺろぺろされるし、終いにゃほっぺにチューされるし、してしまうし……アレ?よくよく考えたら俺なんか美味しい思いしかしてなくない?これで文句言ってたらバチでもあたりそうな幸運だったのでは?もう一生分の運を使い果たしたと言ってもいいのでは?


まぁ、周りから嫉妬と憎悪の視線で胃に破滅的なダメージを受けたけど、なんだったらガチ恋勢諸君からフルボッコされそうになったけど(未遂)。


アイツら目がバッキバキでマジで怖かった。人殺しの目つきだったぞ……。



そもそもの話。


聖歌ちゃんは一体どうしてしまったのか?何でこうも俺に絡んでくるのか?俺の事が好き?いやいや無いって無いって、あの聖女様よ?なんで俺の事好きなの?俺、特に彼女にはこれと言って何かした覚えは無い。好かれる理由が見当たらない。


俺みたいな奴を好きになってくれる人なんていないって。


となるとアレか。俺の事を誘惑して貶めようとする美人局みたいな感じか?いやでも誰にでも聖母の様に優しいあの聖女様がそんな裏がある事をするだろうか?いやそれも無いなぁ。なんてったって聖女様な訳だし。



わからん……聖歌ちゃんが何をしたいのかサッパリわからん……。



それから数日……。


聖歌ちゃんの様子は変わらず、おかしいままであった。



「皐月くん!おはようございます!」


「お、おはよう、聖歌ちゃん」



通学路で出くわせば俺の腕に当然の様に自分の腕を絡め、さらにはそのたわわに実ったやわわを押し付けてくる。


ふにょんと柔らかい感触にドギマギしてる俺の内心を他所に聖歌ちゃんは楽しそうににこにこしていた。



「聖女ちゃん……その……胸が……」


「胸がどうかしましたか?」


「あっ……いや……なんでもないです……」


「そうですか?」



キョトンと首を傾げる聖歌ちゃんは可愛かった。



「先生!私、皐月くんの隣の席に移動したいのですがよろしいでしょうか!」


「いや白井……お前何言ってーー」


「ダメですかぁ……(うるうる)」


「許可するッ!」



おい担任。



聖女様のうるうる上目遣いに担任教師(アラフォー妻子持ち)は瞬殺された。


気持ちはわかる。俺もそれやられた事があるか気持ちは凄くわかる。わかるけども!



「えへへっ!隣の席になれましたね皐月くん!」


「よ、よろしく……聖歌ちゃん……」


「とりあえず机と席くっつけますね!」


「あのぉ……教科書忘れたりとかした?」


「はい?ちゃんと教科書は持ってきてますよ?」


「ならなんでまた……」


「いえ!私はただ皐月くんと肩を寄せあって1冊の教科書を使って授業をうけたいと思いまして!嫌ですか……?(うるうる)」


「許可するッ!」



はっ……!?咄嗟に許可してしまったっ!いや無理だってこれ!あざといって!やっぱり断れないって!


そんな具合に授業中もベタベタ、休み時間もベタベタ、昼休みも当然ベタベタ、放課後も一緒に帰ろうとベタベタ、ベタベタベタベタ。


スキンシップが多すぎる!聖歌ちゃんめっちゃいい匂いするし!やわこいし!可愛いし!可愛いし!可愛いし!



そうして聖女様のとんでもはっちゃけ行動は日に日に激化していった。好き勝手されている俺ではあるが聖歌ちゃんみたいなミラクル美少女にこうされて嫌な筈は当然無い。


なので俺はすっかり思考を放棄して流れに身を任せることにした。聖歌ちゃんかわいー!



最近、頭を抱えて床に這いつくばったり、転げ回る生徒諸君をよく目にするようになった。おそらく、聖女様ガチ恋勢の皆さんかと思われる。



「聖女様に恋人がっ!ぐおおおおおおっ!」

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」

「悪夢なら醒めてくれ……ここから飛んだら醒めるかな?」

「イヤァー!聖女様に男なんて!イヤッー!」

「汚されちまった……俺達の聖女様が……あんな男に……!あっでも汚された聖女様も……ゴクリっ」



すっかり脳が破壊された生徒が多数、新たな性癖に目覚めた者が数人。


というか四六時中、聖歌ちゃんとはベタベタしている今日この頃だが、驚くことに俺達は付き合ってないのである。周りから見たらどう見ても付き合ってるとしか思えない行動ばかりなのはわかる。


これはもう俺から告白とかした方がいいのだろうか?


なんてことを考えていた放課後。帰り支度をしていると隣の席の聖女様に声をかけられた。



「皐月くん!私、皐月くんのお部屋で2人っきりになりたいです!」



と、聖歌ちゃんに誘われた。





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