#13 周りが見えない聖女様



「おいオマエぇ!聖女様とどんな関係なんだよォッ!」



はぁ……皐月くんと一緒にお昼……幸せです……。



「えっ!?い、いや……ただのクラスメイトだけど?」



今まで二の足を踏んでいたのが、とても勿体無く思えてしまいます。こんなことならもっと早くに皐月くんを誘っていればよかったですね。



「だったらなんでそんなくっついて座ってんだよ!」



これも催眠アプリで自分に暗示をかけた効果ですね。



「そうだそうだ!ただのクラスメイトがそんな仲良くくっついて座るわけねぇだろ!羨ましいなコンチクショウ!」



今の私はやりたいと思ったことを、なんの躊躇もなく出来てしまいます。



「いや、だから、これは、その……!」



皐月くんとお昼を一緒にしたくて誘って、それで一緒に食べることになって、隣の併せの席でなるべく近づきたかったから席も寄せて、肩と肩が触れ合う距離でお昼。肩がちょこっと触れるだけで幸せな気分になれます。



「それに見てたぞテメェ!あろうことか聖女様に……ハイアーンをっ……!ハイアーンをしてもらうなんてっ!」



それにハイアーンもしちゃいましたし、されちゃいましたし、食べさせてあげるのは楽しいですし、食べさせてもらうのも楽しいです。



「しかもそのあと聖女様にハイアーンするとか!考えらんねぇ!死ねよ糞野郎がぁっ!」



それに皐月くんが使ったフォークも我慢出来ずにベロペロしてしまいました。はしたないとは思いましたが我慢は出来ませんでしたね。普通ならば踏みとどまるところではありましたが、これも暗示の効果で思ってそのまま行動に移してました。



「くっそ!くっそ!俺達の聖女様になんつーことをっ!おい!お前ら!コイツ絶対生きて返すんじゃねぇぞ!」



ただのフォークの筈なのに、なんだかとっても美味しく感じてしまいましたね……。皐月くんも舐めまわしてはくれませんでしたが、私が口をつけた箸をそのまま使ってお昼を食べてました。ああ、私が口をつけたものを皐月くんに使われてしまってると考えると凄く嬉しくなってしまいます。



「二度とコイツを聖女様に近づけさせるな!」



こうしてこれからも毎日皐月くんとお昼一緒にしたいですね!



「かかれぇええっっっーー!」


「あっ、皐月くん!ほっぺにご飯粒ついてますよ!取ってあげますね!ぱくっ!えへへっ!口で取っちゃいましたー!あっ、これほっぺチューですね!てへっ!」


「ぐっはぁああああッッッ!?!!!」



バタバタバタバタバタバタッ!



「あ、ありがとう聖歌ちゃん……助かったよ……」


「はい!どういてしまして!それにしてもほっぺにご飯粒つけらなんて皐月くんも意外とオチャメさんなところあるんですね!可愛いです!」


「お、おう……そうかな……?」


「あっ……!(ぬりぬり)ーー皐月くん!私のほっぺもなんだか汚れていませんか?」


「汚れてるね。っていうか今自分で汚したね?」


「自分ではちょっとわからないので皐月くんに綺麗にして欲しいです!」


「やっぱりそういう流れかっ!あー、もー、わかった綺麗にしてあげーー(ガシィッ)……聖歌ちゃん?なんでガシッと俺の両手を掴むのかな?力、強っ」


「すいません皐月くん!ほっぺが汚れていて前が見えません!倒れそうなので手は掴んだままで綺麗にしてもらいたいです!」


「もうマジで何言ってんのか分かんねぇ!?」


「ほーらっ!はやくはやくっ!皐月くんも私のほっぺにちゅーって!ぶちゅーって!してくださいっ!」


「もはや建前もロストしたんですがっ!?えっ、なに、聖歌ちゃん俺にほっぺちゅーされたいの!?」


「逆に聞きますが皐月くんは私のほっぺにちゅーしたくないんですか?それはショックです……泣きたくなってきました……うぐっ……ひっぐっ……!」


「泣き落としはズルくないかなっ!?ぐぬぬっ……したい……!したいですっ!聖歌ちゃんのほっぺにちゅーしたいですっ……!」


「わーい!それではどうぞどうぞ!」


「くっ……!もうどうとでもなれっ……!」



そして、ふにゃりとほっぺに柔らかい感触からのぺろっとヌルッとした感触。


あーーっ!皐月くんにほっぺちゅーされてしまいましたーーーっ!



「はい……綺麗になったよ……」


「ありがとうございますっ!」



顔を真っ赤にした皐月くんにそっぽを向かれてしまいました。なんですかその表情?可愛いですね?そして、湧き上がってくるこの感情はなんでしょう?ちょっとゾクゾクしますーっ!



「聖歌ちゃん……そろそろ……いろいろ……満足した?」


「はいっ!大満足ですっ!」


「それはよかったです……それじゃそろそろ教室戻らない?」


「そうですね!戻りましょうか!」



空の食器が乗ったお盆を手に皐月くんは返却口の方に向かいます。私はお弁当箱を片付けて皐月くんの後を追いました。


何故か数人の男子生徒が床で寝ています。春先で暖かいとは言ってもこんな所で寝ていて風邪などひかないでしょうか?あっ。風邪を引いた皐月くんの看病とかしてみたいです。付きっきりで朝から晩までお世話してあげたいですね。



皐月くんが食器を返したタイミングを見計らい私は彼の腕にしれっと抱きつきました。



「あ、あの……聖歌ちゃん……?」


「それでは教室に戻りましょうか皐月くん!」



むぎゅりと皐月くんの腕を抱きしめて、ついでに胸を押し当てておきます。皐月くんの腕に押し当てられた私の胸がふにゃりと大きく形を変えました。



「せ、聖歌、さん……?そ、その……む、胸が……」


「ご迷惑でしたか……?」


「い、いえっ!迷惑では全然ないけど!むしろ望むことろなんだけど!そういうことじゃなくてですね!?」


「それなら大丈夫です!」



そうして私は皐月くんと腕を組んで学食を後にし、教室へと戻りました。


そういえば、今日の学食はとても騒がしい気がしましたが、何かあったのでしょうか?


まぁ、私には関係の無い話ですね!



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