#10 皐月くんは理解したい
「あーん!ダメですー!ママのスマホ返してくださーい!」
ぴょんぴょんたゆんたゆん。
スマホを上に掲げて取れないようにする俺から、ソレを取り返そうとぴょんぴょん跳ねる聖歌ちゃん。
聖歌ちゃんがぴょんぴょんする度に聖歌ちゃんのデカパイもまたたゆんたゆんと大きく揺れる。
目の前に動くものがあると自然とソレを目で追ってしまう、うんたらかんたら。
「…………」
「ママには催眠アプリが無いとダメなんですー!さっくん!お願いですー!ママに意地悪したらイヤですー!」
「…………」
「…………?さっくん?ママの話聞いてます?」
「……えっ?なに?おっぱいの話?」
「おっぱいの話は今してませんよ?」
「あ、あー、ごめんごめん。それはこっちの話」
ブンブンと頭を振って邪念を飛ばす。
縦揺れもいいが横にぶんぶんと降ったらあのおっぱいどんな感じになるのだろうか?
いかん。邪念全然飛ばん。
「と、とりあえず……聖歌ちゃん?少し腰を据えてじっくりと話し合う必要があると思うんだけど……」
「わかりました。今日は2人で学校はお休みしましょう」
「まぁ、そうなるか……」
いろいろ話は長くなりそうだから、仕方ない。急に2人揃って休んだりしたら周りからどう思われるか……いやまぁ、そんなことを気にしてもしょうがないか。
そうして俺たちは腰を据えて、お話することとなった。
「まずは……そうだな……事の発端でありそうな、この催眠アプリの事からかな?聖歌ちゃん、コレなに?」
「催眠アプリです。これを使うと相手を好きに操ったりとか出来ます」
「うわぁ、エロ漫画とかで見るヤツだぁ……これ本当にそんなこと出来るの?本物なの?」
「はい。何度か使いましたので本物です」
「マジか……なんつー物騒なもんを……それで聖歌ちゃんはコレを俺に使ったと?」
「はい……使いました……」
「そこら辺、俺は記憶がボヤけてて何をされたか、よく覚えてないんだけど……俺に催眠アプリを使って何したの?」
「えーっと……それは……その……」
聖歌ちゃんが言い淀んだ。
え?なに?俺に言えないこと俺にしたの?聖歌ちゃんが?
一体何をされたんだ俺は……。
詳しく聞きたいが聖歌ちゃんは口を閉ざして、話そうとはしない。
どうしたもんか……あっ、ココで聖歌ちゃんに催眠アプリを使って口を割らせればいいのでは?
いやでも、こんなモノを使ってもいいものか悩みどころだ。
実質、無理矢理に白状させることになるし、でも自分の知らぬ間にされていたことが、なんなのかというのは知りたい。それを把握できてないのは正直、気持ち悪い。
まぁ、話して貰うだけだし、他に何か変なマネをするわけじゃないし、試しに少しぐらいならいいか?
あとはこの催眠アプリが本物かどうかっていうのも試せばわかるし。
よしちょっと聖歌ちゃんに催眠アプリを使ってみよう。
そうして俺は聖歌ちゃんに催眠アプリを使ってみた。
「最初に使ったのは。ほんの出来心でした。私、実は皐月くんのことが好きで、そうなってくると皐月くんが私の事をどう思っているか?というのが気になりました。それで催眠アプリを使ってコッソリと皐月くんが私をどう思っているのかを聞き出したんです。そうして私は皐月くんが私の事を「ただのクラスメイトでそれ以上でもそれ以下でもない」と思っていることを知ったのです」
「なるほど」
聖歌ちゃんが俺の事を好きだったのは驚きだ。好かれた理由はさっぱりわからないが、本人がそう言ってるのだからそうなのだろう。
「あまり関わりがありませんでしたので、それも当然だとは思いましたが、予想以上にわたしはそれにショックをうけました。頭の中がぐちゃぐちゃになってしまって、自分で自分が何をしたいのかわからなくなってしまったのです。それから暫くはこれからどうしたらいいのかと悩みました。いっそ、催眠アプリで皐月くんに私の事を好きになってもらうーーなんてことも考えましたが、流石にそれは違うと思ってやめました」
勝手に1人でフラれたみたいになって動揺したって所か。
「そうして私は悩んだ末に自分に催眠アプリを使うことにしたのです」
「どうしてそうなった……」
「自分自身の気持ちが私にもわからなかったんです。だから、催眠アプリで「自分に素直になるように、自分の本当にやりたいことをやるように」と自分に暗示をかけたんです。そうすれば私が本当はどうしたいのか?何をしたいのか?が、わかると思ったんです」
「そういうことか」
「それでわかったんです。私は皐月くんともっと仲良くなって好きになってもらいたいーーそう思ってるって……それで皐月くんにアピールを始めたわけです」
合点がいった。
ココ最近、聖歌ちゃんがやたら俺に絡みにくると思ったら、そういうことだった訳か。
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