#9 暗示をかけたい聖女様



「さて、さっくん。朝、目が覚めたら、まずはママにおはようのちゅーです。それを済ましたら次はママといっぱいちゅっちゅっしてスキンシップを取り、ママとの仲を深めます。ここまではわかりましたね?」


「は、はい……!」


「ここで問題です!満足するまでちゅっちゅっした次は何をするんでしょうか?」


「えーっと……次すること?そうだな……とりあえず……服を着る……?」


「確かにお洋服は着ますが、その前にする事があるんじゃないでしょうか?あー、ママ、ちょっと汗をかいてしまってベタベタしますー」


「あー……もしかしてお風呂でシャワー……とか?」


「そうです!さっくん大正解です!流石はさっくんです!そうですね!お風呂ですね!というわけでさっくん!ママと一緒にお風呂でキレイキレイしましょう!」


「うん、待って、それは不味いって、もういろいろ遅いかも知れないけど一緒にシャワーは不味いって!それにあんまりゆっくりしてると遅刻しそうだけど……?」


「あっ……」



時計に目をやるとあまりゆっくりしてると遅刻しそうな時間帯でした。盲点です。これはちゅっちゅっしすぎで、かなり時間が経ってしまってますね。



「俺はいいから聖歌ちゃんサッとシャワー浴びてきて。ほらほら」


「は、はい……」



皐月くんに促されるまま私は浴室に押し込まれてしまい、1人になってしまいました。



むむむ……。



ザーッと私はシャワーを浴びながら考えます。


皐月くんの様子が少し変ですね……。


ここは学校なんか知ったことかと「ママと一緒にお風呂入るー!」なんて、だらしない表情で飛びついて来てくれると思っていたのですが……どういうことでしょうか……。



はっ……!?



もしや催眠アプリによってかけた暗示の効力が切れてしまったのではないでしょうか?


有り得ますね……思い返すと目が覚めてから皐月くんに「ママ」と呼ばれてない気がします。


これはいけません!戻ったらまた皐月くんに催眠アプリを使ってあげないと!



「聖歌ちゃん!ここに着替えとタオル置いとく!」


「あっ、ありがとうございます!」



浴室の扉越しに皐月くんに声をかけられました。


皐月くんこういうとこ気が利いて素敵です。



皐月くんにベタベタに汚された胸を洗いますが、油性のマジックで書かれた文字は消えませんでした。


胸にでかでかと書かれた皐月くんの名前……もう私の胸は皐月くんのモノだと主張するソレに妙な興奮を覚えました。もう胸だけじゃなくて全部、全部、皐月くんのモノにして欲しいです。



シャワーを終えて着替えて身支度を整え終わり、皐月くんの元へと戻りました。


皐月くんも既に着替えており、制服に身を包んで私を待っていました。



「ごめんね聖歌ちゃん。ウチ、食べ物の買い置きとか無いから学校行く途中でコンビニよってメシ買うことになるけど、大丈夫?」


「時間も余裕はあまり無さそうなのでそうする他なさそうですね。本来ならママが朝食用意してさっくんに食べさせてあげたいんですが……それはまた次ですね!」


「うーん……聖歌ちゃんにはそもそもツッコミたい事が山ほどあるんだけど……それは行きながら改めてゆっくり話そうか……」



改めてお話?なんでしょうかね?



「とりあえず学校行こうか」


「そうですね。あっ、その前に皐月くん、少しよろしいでしょうか?」


「なに?」


「皐月くんに見てもらいたいものがありまして……」



ゴソゴソと私は自分のスマホを取り出して催眠アプリを起動させます。



「この画面を見てください」


「ちなみにソレなんの画面?」


「相手を自分の思い通りに操ることの出来る催眠アプリの画面です!」


「待ってもらってよろしいでしょうか!?なんで聖歌ちゃんは俺にそんなモノを見せようとしてらっしゃる!?」


「いえいえ大したことじゃないですよ?皐月くんにかけた暗示がどうやら切れてしまっているようなので、かけ直しておこうかと思いまして」


「ぐおお……また一気にツッコムべきところが増えたんだけどぉ……っていうか催眠アプリってなんだよ……そんな怪しげなもの使って大丈夫なの?」


「大丈夫ですよ!皐月くんに暗示をかける前に自分で試してみて特に問題はありませんでしたので!」


「はっ……?聖歌ちゃん、そんな怪しいもの自分に使ったの?」


「はい!お陰様で私は自分の気持ちに正直に行動できるようになりました!初めのうちは違和感も多少ありましたが、今ではすっかりコレが無いと気持ちよくなれなくなってしまいましたよ!」


「もうそれ普通にヤバい奴ッ!」


「皐月くんに暗示をかけ始めたのは昨日からです。まだ違和感もあり、効果も長続きしませんが、それも、初めのウチだけですよ!直に慣れてくればこれ無しじゃ生きられない身体になってきますので!」


「だからそれ普通にアカン奴ッ!」


「さぁ、皐月くん!ママと一緒に催眠アプリを使って仲良しこよししましょう! 」


「クッソっ!だから常識とか諸々ぶっ飛ばしてたのかっ!いろいろおかしいと思ってたんだよ!聖歌ちゃんそんなヤバいヤツ早く捨てて!」


「嫌です!捨てません!私はこの催眠アプリで皐月くんのママになるんです!絶対、嫌です!」


「くっ……こうなったら実力行使……!」


「あーっ!?だ、ダメです!ダメですよ、さっくん!そんな乱暴したらいけません!メッ!ですよ!メッ!ママに酷いことしちゃいけません!キャー!さっくんにえっちなことされてしまいますぅー!私、ママなのに!さっくんのママなのに!さっくんにえっちなことをー!」


「えっちな事はしないですっ!そして抵抗しつつそんな嬉しそうな声出さないで!いいからスマホを渡して!」


「嫌です!ダメです!さっくんはママから催眠アプリを取り上げてどうするつもりなんですか!?その催眠アプリでママを抵抗出来なくしてあんなことやこんなことをするつもりなんですよね!?あっ、それなら渡しても構いませんね……」


「よし、スマホゲット」



そうして私のスマホは皐月くんに奪われてしまいました。








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