■ 346 ■ 【菜園】テッド・ヨドカフ
「教えられる範囲では教えました。残りの指導はリクスさん、エーメリー。貴方たちの【
「ありがとうございます、【
『ありがとうございました!』
二ヶ月の短い指導を終えて、【
その入れ替わりとして、
「やぁ、ダレット。私たちの薬草をまさか枯らしたりはしてませんよね」
「会うなり嫌味とは変わらないな、君は」
ダレットと
「さて、君たちの中に
「はい、【
『頑張ります!』
やはり【
「【
「なに、我々はこういう機会でもないと中々外に出られませんからね。よい口実ですよ」
【
「まあ欲を言えばここ以外の土地の方が良かったですが」
「ここには、よく?」
「ええ、【
「私の専門はあくまで調薬の方だからな。テッドにはここの環境を整えるのに協力してもらっているのさ」
そうテッドとダレットが肩を並べて薬草の育成具合を確認しながら笑い合う。
基本的に【
ペアを組むことが多いのが荒事向きの【
【
「【
「無論、どこにでも連れて行かれるよ。【
莞爾とテッドが笑って見せれば、なるほどラジィがあの年で凄まじい知識量を誇っていた理由がリクスにもよく分かってしまう。
「君も
「……善処します」
ということでリクスらはシンに続いてテッドにも教育を受ける事になるわけである。
テッドの【
「我々の主食である麦と一言で言っても、その土地土地によって育ち方も病気への耐性も全く異なるものだ。まずは種を理解するところから始めないとだね。それが終わったら発育から必要な肥料の推定、土壌の改良、水質の改善も重要だな」
最低でも麦の見分け方は覚えろと言われてリクスやエーメリー、ディアナなどは興味津々だが、
「イーリス、フェルナン」
この二人は全くやる気が感じられない。
「どれも同じ。見分けなんてつかない」
「そうだよ全然分かんねぇよ! 麦を見分けろったって、ビンチョウマグロって言われて何が長いのか分かんねぇくらい分かんねぇ!」
「びんは髪の毛だよ、フェルナン」
「何で知ってるのシータは……」
「マジかよ髪の毛生えてる魚がいるのかよ! すげえやそれなら俺でも分かりそうだぜ!」
「……すみません、テッド様。気移りしやすい子たちで……」
リクスがそう頭を垂れると、テッドは気にしてないとばかりにニコリと笑う。
「いいですよ。バカに無理矢理理解させようとするのは徒労ですからね。好きにしなさい」
「だってよ兄貴、許されたよ俺!」
「違う、見限られたんだよ……」
仕方がないので、学ぶ気のある者のみだけでテッドに講義を受け、やる気のない者にはダレット監修の元で農地開墾を始めてもらう。
「……一応言っておきますが半分は冗談ですよ? 十も宗派があれば得手不得手は当然ありますからね。私だって満遍ない才能があるわけではありませんから」
テッドがそう付け加えたのは、子供たちは皮肉を皮肉と流せず落ち込んでしまう可能性がある、と後になって反省したからだろう。
「ええ、私も農地関連は素人ですし、得手不得手に加えて機会の差もありますしね」
「御兄様は農業に関してはあまり詳しくないのですね……何でも知っていると思っていました」
「俺は港町育ちだからね。陸の幸にはあまり縁がなかったのさ」
港町暮らしだったクィスからすると新鮮なのか、それともテッドの教え方が上手いのかスルスルと頭に入ってきて、リクスとしても割と楽しんで授業を受けられている。
ただリクスには
ただ、
「ダート修道司祭は武芸以外は後回しにしていたようですね。
エーメリーらも
「神殿騎士というものはただ戦えればよいというものではないのですよ。訪れた土地の魔獣を追い払い、崩された生活を立て直すまでが
「何でも屋だね」
シータがそう評すると、その通りとテッドが真顔で頷いた。
「
「せちがらいねー」
「そんなもんですよ世の中ってのは」
テッドとシータが揃って肩を竦める様はどことなくひょうきんで、リクスにとっては割と微笑ましい。
性格が合ったのか、それとも合ったのはウマか。
こういうことも含めて意外にもシータはよくテッドに懐いたもので、最終的に最も
二ヶ月の指導を終えて、テッドもまた【
「てっちゃん、もう帰っちゃうの? もっといればいいのに」
「【
テッドは膝を折ると、シータと目線の高さを合わせて優しくその頭を撫でる。
「シータ、貴方はとても良い生徒でした。残りのカリキュラムはリクス君に入れておきましたので、あとは彼から教わりなさい」
「うん、りっちゃんが頑張るね」
こいつら人を本棚か何かと勘違いしちゃいないかな、とリクスとしては物申したかったのだが、そこそこ感動的な別れに水を差すのも悪かろう。黙るしかない。
「いい子ですねシータ。いやはや、お陰で楽しい時を過ごせました。呼んでくれて感謝しますよ、リクス君。例の件は承りました。最善を尽くしましょう」
「お願いします、【
未来を明かして協力を依頼した件は確かに承った、とテッドが言ってくれて、リクスとしても文句を言えるような立場ではない。
ヒラヒラと手を振って去っていくテッドにリクスらは並んで頭を垂れる。何だかんだで優れた教師であり、人格者ではあったのだから。
ただ、
――ジィが【
リクスの内心には少しだけ虚しさというか、寂寥感が残ってしまっているが……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます