Klasse6 空舞

「おーい、西成センセ。来たぞー」

「おお、黒崎か。完成したぞ。まぁ見てくれ」

 あれから一週間、特に何ともなく学園生活を過ごし、武器が完成した。

「ほほう、こりゃなかなか……しかし古風な高周波ブレードだな」

「ああ。昔の技術だがパワーは半端ねえぜ。お前さんくらいしか使えんだろうと思って作ったんだ」

「まぁ最近のブレードは良い子ちゃんばっかりだからな。これくらい暴れ馬な方がしっくりくらぁ」

 ブレード系統の世界基準において、最近のエネルギーブレードは1500dpsがノーマルだ。dpsってのは一秒間にどれだけダメージを与えられるかっていう指標だな。dpsがデカくなりゃなるほど扱いは難しくなる。

「血舐め一文字が約5000dps、そのブレード『雲切』は15000dpsだ」

「ノーマルの10倍か。なかなかやるな」

「それだけじゃねえ。コイツもセットだ」

「おっ、これは」

 籠手に脚絆、手袋と細かな装備が出てくる。ほほう……

「黒崎には必要ないかとは思うが最小限の防御装備とワイヤーアクションを可能にした装備だ。使ってやってくれ」

「なかなかイカしたデザインだな。このちっこいドローンはなんだ?」

「それはアンカードローンといってな。指定した場所に予め設置するか高速射出でワイヤーアクションのとっかかりにできる」

「おおー」

 おもしれぇ。ワイヤーアクションはカイトのお気に入りだからな。組み合わせてカッコよくキメてやろう。

「アンカードローンは一度使うと冷却が必要になる。いわゆるクールタイムってやつだ。高速冷却にはしてるがまぁ気をつけてくれ」

「上等! ありがとな、西成センセ」

「なぁに。またなんかあれば来てくれよ」

 ま、デベロッパーといい勝負ってトコだ。小型化に関してはデベロッパーに軍配。使い勝手は……


——ヴーヴー!

『学園生に通達! 市街地C地区にて多数の狂人反応あり! 単独行動許可者は速やかに出撃ゲートへ! その他は校庭に集合!』

 おっ、こりゃ試し切りにゃあおあつらえ向きだ。行こうかね。


——出撃ゲート

「よっ、神凪も単独か」

「おお、京! お主もか!」

「この子は……一年生の黒崎さん?」

「そういうアンタは……三年のキルリーダー、『一条いちじょう 麗奈れいな』か?」

 出撃ゲートで神凪とばったり。そしてその隣にキルリーダー。流石単独許可者の集いといったところだろう。

 ていうか一条に関してはお互い名乗らずにポーカー勝負をしたことがある。

「そう。私が一条よ。今、C地区に単独で出られるのは私達三人だけなの。私はエリア1〜5、神凪さんは6〜10、京さんは11〜20を担当してもらえないかしら」

「私だけ倍近いんだが?」

「そのエリアは凄く狂人の数が多いの。転校初日で狂人の波状攻撃を凌ぎ切った京さんの殲滅力で……」

「はいよ。ああ、そこの電源ケーブルは使ってないのか?」

「ドローンの充電ケーブルね。空いてるけど……」

「なら好都合。よっ、と」

——ガシャン!

——バチバチバチバチ!!

「京!? お主何を!?」

「何って充電さぁ。ふぅ、身体に巡る電気が気持ちいいぜ」

 充電充電〜。エリアも広いし高速移動はできるようにしとかねーと。

「と、とんでもないわね……」

——ガシャン

「まあな。とにかく行くわ〜。んじゃ、生きてまた会おうぜ、神凪、一条」

 射出ポッドに乗り込み発進。前はヘリだったが単独だとこうなるらしい。ていうか実質片道切符なんじゃねぇか? これ?


——


「よっコラァ!」

 ポッドから飛び出し、エリア11へ急降下。確かに湧いてるな。クラスは……中狂人を中心に小狂人が多数。それがいくつもあるって感じだ。コイツら中心を崩しても結局バラバラで暴れるからなぁ。

——ピピッ

「あー、カイト? オペレートしてくれー」

『はーい! 楽しみにしてたんだ!』

 学園のオペレートはキレが悪い。カイトの方が遥かに優秀だ。カイトのオペレートに従い、あちらこちらで狩りまくる。私自身で最適解は見つけられんでもないがそこら辺はカイトやオペレーターの方が早い。サクサクやるならこれが一番だろう。

『そのワイヤーカッコいいね!』

「お、気に入ったか! どれどれ、ほいっ、と!」

 アンカードローンを使い、立体的に狂人を葬っていく。ドローンは三個、クールタイムを意識すればずっと空中に居られる。

『おお〜! 刀もシンプルだけど素敵だなぁ』

「仕事が終わりゃ持って帰ってやるぜ?」

『いいの? やったぁ!』

 くぅ〜、やっぱりカイトは可愛いぜ。あ、そうだ、制服も持って帰ろう。カイトに着させて……うっへっへっ……

『! ケイト、6時の方向に大きな反応!』

「むっ、あれは……ほう、大狂人か」

『数は20だね。どうするの?』

「はは、カイトが見てるんだぜ? カッコよくキメてやらぁ!」

 反応方向へダッシュ。さあさあゾロゾロ並んだ大狂人共をズバッといきますか!

 まずは近くのビルにワイヤーを打って……

「よし、取った! 『雲切・壱ノ型』!」

——ズバンッ!

 横薙ぎの一閃で首を落とす。

「次! 『餓狼・血濡』!」

——ズンッ!

 血舐め一文字による頭部への刺突と斬り上げ。

「まだまだ! 『雲切・弍ノ型』!」

——ズシャア!

 兜割ぃ!

「どうした? 『餓狼・血吸』!」

——ズグッ!

 目玉を突き刺しそのまま捻って抉り出す。

「ぬんっ! 『雲切・参ノ型』!」

——シュン!

 剣閃を飛ばし、喉元から弾き飛ばす。


「さあて、面倒だ、まとめていくぜ! 『餓狼豪雷霈走哮がろうごうらいはいそうこう』!」


 二振りの刀から放たれる嵐の様な斬撃。それが一つの咆哮の様に駆け抜けていく。そしてその中に捕らえられた獲物は……


『おお! 見事に……!』

「どうだ? 良かったか?」

『凄かったです! 焼き増ししてまた見よっと〜』

 はは、カイトも気に入ってくれた。結構暴れたおかげか中、小の反応は減ってきている。大もこれくらいだ。この分だと一年生の掃討隊が入って来れるだろう。もう少し奥にいって片付けてくるか。

『ん? 一瞬かなり大きな反応? なんだろう?』

「大きいってぇとどれくらいだ?」

『いわゆる超狂人クラスの反応かな。でも一瞬だったんだよね……』

「ふーむ。まぁまた現れたら教えてくれ。ぶちのめしにいくからよ」

 さてさて、お掃除お掃除。

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