Klasse5 武装
「んあ? 専用武装?」
ある日の放課後に霧隠から聞いたのは武装の話。なんでも桐生、霧隠、宮泉は特待生で専用武装が与えられているらしい。私もその要件を満たしているだろうということだ。
「専用武装、武器工房の西成先生が仕切ってる。話すといいかも」
「ほーん。じゃあいってみるぜ」
私にゃ私の武器があるにはあるが今回は持ち込みできてねぇ。デベロッパー製とどちらが上か気になるところだな。
「おーい、武器工房はここかー?」
学園の一角、雑多に武器やらが散乱するデケぇガレージに足を突っ込む。
と?
——ビュン!
「おっ、と。金属片か」
「ほう。避ける奴はいくらか見たが受け止めた奴はなかなかいねぇんだ」
奥からのっそり現れたのは身長2mくらいの大男。いかにもいかにも武器職人だ。
「あんたが西成センセか? 霧隠に聞いてな」
「霧隠か。奴がねぇ……専用武装の事か? 黒崎?」
「まぁ、そうだ。作ってくれんのか? センセ?」
「……これ持ってみろ」
渡されたのは一振りの刀。インジケーターがついてやがる。
——ピピピピ……ボォン!
「んあ? 壊れちまったか?」
「……ははは! コイツは凄ぇ!」
さっきまでとは打って変わって豪快に笑う西成。聞いてみりゃこの刀は測定器みたいなモンらしく……
「普通の専用武装推薦者ならインジケーターに赤がつきゃ良い方なんだ。まさか壊れちまうとはなぁ! いいぜ、作ってやる。何がいい?」
「んー、刀だな。頑丈な奴がいい」
「はいよ。出来上がるまでそこのアタッシュケースにある刀を使っててくれ。誰も使えん代物だが黒崎なら大丈夫だろ」
ほうほう。なかなか面白い刀だ。いや、見た目は普通の……
「おおー、ソイツに喰われないとはなかなか……やっぱり凄ぇな、黒崎。その刀は血舐め一文字。生きてる刀さ。見事に調伏してやがる。普通の奴が握ったら生命力を吸われて倒れちまうんだぜ」
「おーおー、物騒だこと。とりあえずもらってくわ」
「使わん時は鞘に納めてアタッシュケースに入れとけよ。見境なく生命力を吸うからな」
「はいよー」
武器ゲット〜。出来上がりまで一週間くらいらしい。ま、のんびり待ちますか。
——
「んぁ〜。風呂上がりのビールは最高だぁ〜」
——ざわざわ
私ゃ風呂上がりに脱衣場の休憩スペースでだら〜んと椅子に座りながらビールを煽っている。んで、その私が全裸なんで周りがざわついてる訳だ。
「遠巻きに見てねーで一杯やろうぜ〜」
気まぐれに飲みのお誘い。まぁたまにはな。
——トタタタ
——バサッ
「もう、京さん! いくらなんでも全裸でおっ広げはないでしょう!」
「んにゃあ、別にいいじゃねーか、桐生。どうせ女しかいねーし」
「そういう問題じゃ……はぁ……」
まぁ男が居たって気にしないのが私だがな。近寄ってきたんで桐生を巻き込んで一杯やる。
「そういや桐生は飲まないのか?」
「飲んだことなくて……せいぜい御神酒くらいしか」
「ほーん。そいじゃ、これ飲んでみな」
——ポイッ
「? ……! これって!」
「ん? ただの苺の酒だろ」
「いやいやいや、これ高級品ですよ!? 『苺天下』ですよ!?」
——ザワッ!
桐生の言葉に全体がざわつく。聞きゃあこの酒、学生には高すぎるらしい。死と隣り合わせのここですら高級品、外を見ればとんでもない額で取引される一品だそうだ。酒飲みでなくても一度は飲みたい酒であるらしい。
「ふーん。まぁ確かにビールが500ml缶で250SCなのを考えりゃ180ml瓶で50000SCは高ぇわな」
「そんなSC一体どこから……」
「あん時の報酬だぞ? 私ゃ100万SCくらい貰ったがオメーらもそんくらいじゃねえのか?」
「とんでもない! 私たちなんか5万SCだったよ! 京さんの討伐数が異常なんだよ……」
「マジかよ」
5万でも一年生からすれば一晩の報酬にしてはかなり高い部類だそうで。
「まぁいいや。とりあえず飲めよ」
「う、うん。いただきます……」
一口飲んだ瞬間、美味すぎたのか桐生は放心状態になっちまった。さっき一瓶飲んだがそんなに美味いかぁ? カイトの作る苺酒の方が美味い気がするんだが……
とにかく今夜はのんびりしますかねぇ。
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