第24話 寝起きには女子の寝顔を見たい(願望)
「んっ…朝か…」
旅行二日目、昨夜はひたすらトランプをしていて夜更かしをしてしまった。そのせいでまだまだ眠いが、せっかくの旅行で寝て過ごすのもどうかと思って頑張って目を開く。
「ンガッ…ガー…」
「………」
目を開いた瞬間、目に飛び込んできたのはまだ寝ている夏川の寝顔(ドアップ)。何が悲しくて寝起きに野郎の顔なんか見ないといけないんだよ。せめて女子の誰かにしろ。別々のテントで寝たから無理な話だが。
「起きるか…」
夏川の顔を押しのけて体を起こし、テントの外に出る。太陽が眩しい…。
「あっ、おはようハル」
「もう起きてたのか。おはよう吉崎」
「もうって…もうすぐ九時だよ?」
「充分早いわ」
休みの日なら午前中ずっと寝てることもある。ましてや昨夜はトランプしてて夜更かししたんだ。九時でも早いと思う。
「それもそうだね。やっぱり普段の環境と違うせいかな?目が覚めちゃって」
「なるほど」
枕が変わると眠れなくなるタイプか?意外と繊細だな。他の連中は枕どころか寝具すべてが変わっても爆睡してるけど。みんなずぶといな。
「あはは…そこまで繊細じゃないよ。せっかくの旅行で寝て過ごすのはもったいないと思っただけ。…みんな起きてこなくて暇だったけど」
「そいつは悪かったな」
キャンプ地じゃ暇を潰すものもないだろうし一人じゃ退屈だっただろう。
「もう二度寝しようかと思ってたところ。でも起きたんなら話し相手になってよ」
「もちろん。ちょっと顔洗ってくる」
「いってらっしゃい」
川まで行って顔を洗う。川の水は結構冷たくて気持ちいい。さっぱりしてから戻ってくるがまだ吉崎以外は起きてこない。
「はい、コーヒー」
「サンキュ」
吉崎が淹れてくれたコーヒーを片手にイスに座る。自然に囲まれた中で優雅にコーヒーを飲みながら友人と談笑、まさしく青春だな。
「今日は何するんだっけ?」
「前に会議した時に出た案で残ってるやつじゃないか?」
「あの時の案で残ってるのだと…肝試し、天体観測、花火だっけ?」
「夜にやるものばかりだな。というかここで花火なんかしたら火事にならないか?」
「浜辺なら大丈夫じゃない?言っとくけどFPSごっこなんてやらないでよ?」
「……もちろんだ」
「ちょっと間が空いたね」
ジト目の吉崎から目を背ける。久々にやりたい気持ちもあるけど流石にやらないよ?夏川だけならともかく女子達がいるし。
「私達がいなくてもダメ!もう高校生なんだし危ないことはしないでよ」
「分かったよオカン」
「だれがオカンか」
だって母親みたいな言い方だし。まあ流石にもう火遊びはしないわ。
「よろしい。あと天体観測はいいとして肝試しってどうするんだろうね?」
「夜に森の中を歩くだけでも充分じゃね?街頭もないし下手なお化け屋敷より怖いと思うけど」
「そうだね」
というか道が整備されてる訳でもないし下手したら遭難するんじゃね?万が一森の中で故障したりして明かりが消えたとしたら命の危機だ。
「……まあ森の中と決まった訳ではないし」
「……やるなら浜辺を歩くくらいじゃない?」
それはそれで暗くて気付かずに海に入るリスクがある気がする。後で夏川に確認しよう。
「天体観測は昨日もしたようなもんだよな」
「肉眼で見ただけだけど綺麗な星空だったよね」
夜にふと空を見上げてたらそれは見事な星空が広がっていた。やはり明かりが少ないと見やすいのかね。
「星座なんてほとんど分からないけどな。夏の大三角くらい?」
「私もほとんど知らないなー。夏の星座くらいは調べてきたけど空を見てそれが分かるかは自信ない」
図鑑なんかじゃ星々を繋ぐように線が書いてあるが実際にはそんなものないからな。素人に星座を見分けるのは難しい。
「みんなで星空を眺めているだけでも楽しめそうだけどね」
「まあな」
そんな感じで談笑していたのだがしばらく経っても俺と吉崎以外は起きてこなかった。寝過ぎだろ。
「みんなぐっすりだね。遊び疲れたのかな?」
「まあ移動にも時間かかったうえにあれだけはしゃげばな」
特に小学生二人は体力が少ないし疲れたかもな。どうしようかと思っていると視界の端で吉崎があくびをしていた。俺の視線に気付くと照れたように笑った。
「あはは…。私も眠くなってきちゃった。みんな起きてこないし私達も寝る?」
「そうするか。まだまだ今日という日は長いしな」
そういう訳でもう一眠り。でも日が高くなってきたしテントの中は暑そうだな…。
________________________
「やっべえ!寝過ごした⁉︎」
「うるさいですよ…夏川先輩…」
「ふえ…?もう朝…?」
「朝というかもうお昼なのです…」
「なんだ、お前らも今起きたのか。あれ?ハルと吉崎は?」
「もう起きてるんじゃないですか?テントにはいませんし」
昼頃になってようやく起きてきた面々が目を擦りながらテントにいなかった二人を探す。
「あっ、いた」
「起きるの遅くなって悪かった…って、寝てんじゃん」
「無防備に寝てますね」
「写メを撮っちゃうのです」
すでに起きていたと思われる二人はテントから少し離れた木陰にレジャーシートを敷いて並んで横になっていた。安らかな寝息が聞こえる。
「待たせ過ぎたか?」
「とりあえず顔を洗ってきましょう。ほら、二人も行きますよ。イタズラはその後です」
「はーい!」
「早く行くのです!」
この後寝ている二人の顔に落書きされた写真が撮られた。なお、しっかり復讐された模様。
バカな友人たちと過ごす日常~近所のロリを添えて 日野 冬夜 @CELL
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