第13話 宿題は計画的に
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔しますのです」
お花見をした翌日、まだほとんど宿題に手をつけていなかった小学生二人が我が家へやって来た。
「来ましたね。さあ、お勉強の時間です」
「ふっ、オレ達に任せるがいい!」
二人より先に我が家へやってきていた氷上と夏川がノリノリで出迎える。何故か二人は眼鏡をかけている。知的キャラと言えば眼鏡だろと言わんばかりだ。
俺の部屋ではこの人数だと狭いのでリビングに通す。早速宿題を取り出していた彩音と小唄ちゃんだが今いるメンバーを見て首を傾げる。
「よろしくお願いしまーす!……あれ?ましろお姉さんは?」
「まだ来ていないのです?」
「吉崎なら今日は別の友達と約束があるから来てないぞ」
「一番頼りになりそうな人がいないのです⁉︎」
教わる立場なのに失礼だね君。確かにあいつは毎回学年十位以内に入るくらい成績良いけど。俺達では不安だと?
「ましろお姉さん友達多そうだもんねー」
「あいつは人気者だからな。まあ人気者ものだからこその悩みもあるみたいだが」
「悩み?友達が多いことでなんで悩むのです?」
「いろいろあるんだよ」
友達が多いのは良いことだが、良いことだけという訳ではない。詳しいことを言うつもりはないが。
「吉崎のことは置いておいてさっさと宿題を片付けてしまいなお嬢さん方。分からないところがあったら教えてやるからさ!」
夏川が話を変えるように二人を促す。
「分かったのです。ところで教えてもらう側がこんなことを言うのもなんですが…」
「どうした?」
「皆さんは勉強を教えれるほど頭良いのです?」
「舐め過ぎだろ。小学生レベルなんか楽勝だ」
「出会ったばかりですけど普段の言動が…」
本当に失礼だなこの子。確かに普段のこいつらを見てると頭良いように見えんが。
「お兄さん、ブーメランって知ってる?もしくは鏡」
「うるさいぞ彩音。お前は俺の成績知ってるだろうが」
今までに何度も勉強見てやってたしな。
「おにーさんは成績良いのです?」
「毎回学年二十位以内には入ってるな。調子良ければ一桁」
「私も同じくらいですね」
「思ってたよりも頭良いのです⁉︎」
俺と氷上の成績を聞いて小唄ちゃんが驚いている。どのくらいだと思われてたのだろうか?
「ちなみにオレは毎回五位以内だぜ!」
「「そんなバカなっ!」」
夏川の発言に小学生二人がハモって驚く。彩音も夏川の成績は知らない。
そう、俺達の中で一番成績が良いのは夏川だ。こいつは無駄にスペックが高い。世も末だ。
「まさかみんな頭良いなんて…。世の中間違ってるのです」
「さっきから失礼だな。勉強教えてやらんぞ」
「ごめんなさいなのです」
ちょっと脅したら即謝るとは潔いな。
「これならすぐに終わりそうなのです」
「よし、やるぞー!」
一時間後…
「くっ!ちょこざいなのです」
「ふっ、その程度でオレに勝とうなど十年早いわ!って何しやがる氷上!」
「戦場で隙を晒すほうが悪いんですよ夏川先輩」
知ってた。
目の前にはゲームに夢中なアホ達。氷上や夏川はともかく、小春ちゃんはまだ宿題終わってないだろうに。
「そんなこと言いつつお兄さんもコントローラー握ってるじゃん」
「今のところ教えることないじゃん。また分からないとこあったら教えてやるから」
まだ宿題をやっていた彩音が呆れたように言ってくるが、そこまで難しい宿題じゃないのか詰まるとこが少なく教える側は割と暇だ。だからゲームに走ってもしょうがない。一番最初にゲームやろうって言い出したの小唄ちゃんだけど。いくらこいつらでも流石に小学生二人が勉強している横でゲームを始めたりはしない。
「宿題ばかりやっていると息が詰まるのです。息抜きは大事なのです!」
「息が詰まるほど宿題やってないだろ」
まあ本人が言うなら別にいいか。結局困るのは小唄ちゃんだけだし。
そう思いつつゲームに意識を戻した。
_____________________________________
「お兄さん」
「ん?」
しばらくゲームをしていると彩音に袖を引かれた。分からないとこでもあったか?
「宿題は終わったー。だから構って?」
「早かったな。結局大して教えることもなかったし」
まあ夏休みでもないなら小学生の宿題なんて大した量でもないか。彩音も成績が悪い訳でもないし。
「んじゃお茶にでもするか。宿題終わらしたご褒美にちょっとお高いシュークリームを買ってある」
「わーい!ありがとうお兄さん!」
コントローラーを置いてお茶の準備をしていると俺の周りを彩音がウロチョロしている。犬みたいだな。
適当に淹れた紅茶とシュークリームを持ってゲームをやっている連中の下に戻る。
「待ってましたのです」
「いただきます先輩」
「ハルがお茶を淹れ始めてからスタンバってました」
「お前ら…」
リビングに戻るといつの間にかゲームをやめてスタンバっている。
溜め息を吐きつつお茶を各自に渡す。次に彩音にシュークリームを渡した。
「ありがとうお兄さん」
笑顔でシュークリームを食べ始める彩音を見ながら紅茶を飲む。少し濃いがシュークリームを食べることを考えるとこのくらいでいいだろう。
「……先輩、早く私達にもシュークリームをください」
「そうだそうだー!」
紅茶を飲みながらシュークリームを渡されるのを待っていたアホ共が騒ぎ出す。そんな彼らに笑顔で告げる。
「これは宿題が終わったご褒美にと用意した物だ。まだ宿題が終わってない奴には渡せないな」
「なん…だと…なのです…」
小春ちゃんが絶望したような表情をしている。
「なら俺らは関係ないじゃん!」
「そうですよ!私は自分の宿題は終わらせてます」
速攻で小唄ちゃんを切り捨てる外道二人。なんて酷い奴らだ。
「お前らは先生役だろ?生徒の宿題がまだ終わってないのにご褒美がある訳ないじゃん」
「「なん…だと…」」
動きの止まった三人に見せつけるようにしてシュークリームをぱくり。うん、うまい。
「あーっ!何食ってんだよ!ハルも先生役だろ⁉︎なら食うなよ!」
「これはご褒美とか関係なく、自分のおやつに買った物だからいつ食おうが俺の勝手だ」
「屁理屈を…」
三人にから恨みがましい目で見られるが無視。もう一口ぱくり。
「ほら、欲しかったら遊んでないでさっさと宿題を終わらせろ。さもなくば残りのシュークリームは俺の口の中に入る」
「おのれ鬼畜先輩。さあ小唄ちゃん、すぐに宿題に取り掛かってください」
「分からないところは教えるからすぐに終わらせるんだ!ハルがシュークリームを全部食う前に!」
「うぅ…分かったのです…」
氷上と夏川に急かされて小唄ちゃんは宿題に取り掛かる。だが二人から圧力をかけられているからか宿題に集中出来ていない。
その後小唄ちゃんは氷上と夏川にダメ出しされつつ半泣きになりながらもなんとか宿題を終わらせた。
宿題は計画的に終わらせましょう。お兄さんとの約束だ。
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