第5話 類は友を呼ぶ
彩音がウチに泊まった日の朝。俺は心地良い微睡みの中にいた。いつもより早く寝たからか普段より早く目が覚めたが二度寝を敢行。二度寝って最高だよね。
そんな風に浅い睡眠を楽しんでいたら体に何やら圧迫感。目を瞑ったまま体を動かそうとしたがうまく動かない。金縛りか?と思い瞼を開けてみれば目に映るのは見慣れた天井。目線を下の方に向ければ布団の中からこちらを見つめる視線と目が合った。ホラーかよ。
「目が覚めた?おはよう、お兄さん」
「……おはよう。俺の上で何やってんだ?」
「どこまでやったら起きるかなーって思って。上に乗っただけで起きちゃうなんてつまんない」
他にもいろいろしようと思ったのに。そう呟きながら顎で俺の胸をグリグリする彩音。地味に痛いからやめろ。
腹筋に力を入れて彩音ごと体を起こす。俺の二度寝タイムを邪魔した罪は重いぞ。彩音の寝癖の付いている頭をワシャワシャしてやりさらにボサボサにする。
「キャーッ!何するのーお兄さん!」
「うるせー!休みの日なのにこんな時間に起こしやがって!」
すっかり目が覚めちまった。しょうがないから起きるか。騒ぐ彩音を促して顔を洗いに行く。俺も寝癖付いてんな。
「お兄さん、私の髪も直してー」
適当に水を付けて自分の寝癖を直してたら彩音が櫛を片手に強請ってきた。ボサボサにしてしまった手前素直に直してやる。サラサラだなこいつの髪。
「ありがとー、お兄さん」
ご機嫌な彩音と朝食にパンを食べていると俺のスマホが鳴った。こんな朝っぱらから誰だと思いながら画面を見ると表示されていたのは変態の名前。舌打ちしてから通話ボタンを押す。
「もしもし?」
「おはようブラザー!爽やかな朝だな!」
開口一番テンション高ぇ…。
「こんな朝から何の用だ?」
「おいおい、つれないじゃないかブラザー。用が無ければ電話しちゃいけないのかい?」
「切るぞ」
朝からこいつの相手なんてしてらんねー。
「待て待て待て!切ろうとするなよ!流石のオレでも傷付くぞ!」
「分かったからとっとと用件を言え」
「ハルが冷たい…。まあ気を取り直すとして、電話したのは今日ウチに遊びに来ないかっていうお誘いをする為だな。吉崎や氷上も誘うつもりだ」
遊びの誘いか。普段なら二つ返事なんだが彩音の面倒見ないとだしなぁ。
「今隣の家の子を預かってんだよ。一人にする訳には行かないし今日はやめとくわ」
「ああ、例の小学生か。ならその子も連れて来ればいい」
「ん〜夏川は彩音の教育に悪そうだしなぁ。どうするか」
酷いなハル!と抗議してくる夏川を無視して彩音に聞いてみる。
「遊びに誘われたんだが彩音も行くか?昨日会った氷上も誘うみたいだけど」
「お姉さんも行くの?じゃあ行くー。お兄さんのお友達にも興味あるし」
「あまり会わせたくないがな…」
まあ小学生相手なら変態も自重するだろう。
「彩音も乗り気みたいだし行くことにするわ」
「了解だ。それじゃあ待ってるぜ」
遊びに行く旨を伝えて通話を切る。さてさて、出かける準備をしますかね。
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「ここがお兄さんのお友達の家?おっきいねー!」
「あいつの家は金持ちだからな」
彩音を連れて向かった先、そこには一般的な家と比べれば明らかに大きい家が建っていた。俺は慣れたものだが彩音は驚いている。呼び鈴を鳴らせば門が開いたので中に入り、玄関の扉を開ける。
「邪魔するぞ」
「お邪魔しまーす!」
「来たなブラザー!そして小さなレディよ!歓迎するぞ!」
扉を開けた先には夏川が居た。玄関でスタンバってたのかよ。そのまま夏川の部屋に案内される。
「数日振りだなハル。そして初めましてお嬢さん。オレは夏川秀治だ。よろしくな!」
「平岡彩音です!こちらこそよろしくお願いします、変態のお兄さん!」
「ブフッ!」
部屋のドアを開けつつ自己紹介した夏川だが、彩音の返しに吹き出した。
「……ハル?なんか初対面の小学生に変態呼ばわりされたんだが?」
「合ってるだろ?」
「そうですね、夏川先輩は変態です」
「あはは…否定は出来ないかな」
初対面で変態呼ばわりされた夏川が情け無い顔をしながらこちらを見てくるので肯定してやる。すると既に部屋の中にいた二人も追従してくる。
「おはよーハル。その子が例の小学生?」
「おはようございます。昨日ぶりですね先輩に彩音ちゃん」
「おはよう。もう来てたのか」
「おはよーございます。瀬奈お姉さんは昨日ぶりー。そっちのお姉さんは初めましてー」
部屋の中には昨日も会った氷上と髪を肩口で揃えている女子がいた。
「私は吉崎真白だよ。よろしくね彩音ちゃん」
そう彩音に笑いかけるのは中学で俺や夏川と同じクラスだった吉崎真白だ。見た目も良く明るい性格で誰とでも分け隔てなく接する吉崎はクラスでも人気者だった。俺達と違って友達もたくさんいたのだが、何故か俺達と連むことが多かった。その為俺や夏川は嫉妬で目の敵にされることが多かったが。
俺達が挨拶を終え談笑していると変態呼ばわりされた後放置されていた夏川が絡んできた。
「ちょっ!部屋の主を放って談笑しないで!」
「まだいたのか変態」
「もう帰ったらどうですか変態先輩」
「いや、ここオレの部屋!」
まあ夏川を弄るのはこれくらいにしておこう。
「まったく…ところでなんでお嬢さんはオレのことを変態と言ったのかな?まだ何もしてないぞ?」
「何かする気かよ」
「えっとねー、お兄さんと瀬奈お姉さんが変態って言ってたから!」
「ハル?氷上?」
「記憶にございません」
「すべて秘書がやりました」
「お前ら…」
こちらを見てくる夏川から目を逸らして口笛を吹く俺と氷上。変態なのは事実じゃん。
「みんな仲良いんだね」
「まあよく一緒に遊んでたからねー。こうやって軽口を言い合えるくらいには仲良いよ」
吉崎と彩音はこちらを微笑ましそうに見ていた。
「変態って聞いてたけどそんな風には見えないねー。むしろイケメンじゃない?」
お茶菓子として出されたクッキーを頬張りながら彩音がそんなことを言う。
「まあ確かに顔はいい。それにこいつは運動もできるし学力的にも学年トップクラス。さらに家は金持ち。普通ならモテそうだよな」
「言動で台無しになってますが。私達の学年でも夏川先輩は黙っていればカッコいいのにと評判でした」
「下級生はまだまだ甘いな。俺達の学年では口を封じて動かないように縛り付ければ完璧じゃね?って言われてたぞ」
「オレってそんな評価なの?」
「例えば真剣な表情で読書しててその姿に惹かれた女の子達がいたけど読んでいたのはエロ本ってこともあったよねー。読み終わった後ハルに感想を言ったりしてすぐにバレて幻滅されてたけど」
「あったなーそんなこと。というか何度も。その度にジャンルが違くてこいつ何でもイケるんじゃね?ってクラス中が思ったんだったか」
「フッ、オレは博愛主義なんだ。特定のジャンルに拘らず全てを愛してる」
「なんで誇らしそうなんだお前…」
「他人事のように言ってるけどそんな夏川君と議論してたハルも同類扱いされてるよ?」
「なん…だと…!」
夏川と同類扱いとかショックなんですけど。
「何驚いているんですかロリコン先輩。今更じゃないですか」
「おい待て、どっからロリコンが出てきた?」
「よく彩音ちゃんと遊んでいるらしいじゃないですか」
「それだけでロリコン扱いされるのは納得がいかねぇ…」
一緒に風呂入ったり寝たりしているのがバレたらロリコン扱い間違いなしだとは思うけど。バレてないからセーフ。
「お兄さんロリコンだったの?私に反応しないし巨乳派って言ってたから違うと思ってたけど」
「少し黙ろうか彩音」
「安心しろお嬢さん。ついでに吉崎と氷上。ブラザーは確かに巨乳が好きだが雑食だ!お嬢さんの微かな膨らみも氷上のひんぬーも吉崎の平均ちょい上も全て守備範囲だ!」
「お前はほんと黙れ」
なんで人の性癖バラしてんの?そしてなんでこいつらで例えるの?
「えー?お兄さん嘘ついたのー?」
「まあ男の子だもんね…」
「先輩は胸なら何でもいいんですか?」
蔑むわけでなく苦笑したり呆れたりするだけなのが逆につらい。
「もちろんオレもどんな胸でも大好きだ!おっぱいに貴賎なし!そうだろブラザー?」
「お前と一緒にするな。どんな胸どころかありとあらゆるジャンル全てイケるお前とは本当に一緒にするな」
「そうは言うがハルも何でもイケるじゃないか」
「お前と違ってフタナリと男の娘とNTRとBLは無理だ!」
「それって他は全部イケるって言ってるようなものだぞ」
「はっ!謀ったな!」
とりあえず一発シバこう、そうしよう。
「はいはい、その辺にしなさい。ホコリたつでしょ?」
「吉崎よ、助けてくれたのは感謝するが気にするとこ違くない?」
夏川とリアルファイトしてたら吉崎に止められた。だが夏川の言う通りそんな理由で止めたの?こいつもやっぱりなんかズレてるな。
「ハルと戯れ合うのもこれくらいにして俺達もゲームするか」
「お前が余計なこと言うからだろうが」
「ハルも抑えて抑えて。ほらみんなでゲームしよ?」
ちなみに彩音と氷上はこっちを気にせず既にゲームしてた。俺達の戯れ合いに慣れてる氷上はともかく彩音もか…。馴染むの早ぇ…。
この後めちゃくちゃゲームした。
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