第2話 小学生と過ごす日常
「おはよう」
「はい、おはよう。やっと起きてきたわね。朝…いや、昼ご飯食べる?彩音ちゃんもどう?」
「食べる」
「いただきまーす!」
顔を洗って彩音をあしらいつつリビングに入ると出迎えてくれたのは呆れ顔の母さん。呆れつつもご飯を用意してくれるのはありがたい。
「お兄さん、休みだからってだらしない生活をしてちゃダメだよ?」
「だらしない生活なんてしていない。むしろ休みを満喫してるわ」
「だからって深夜まで遊ぶのはどうなの?おばさんも注意しないの?」
小学生のくせに母親みたいなことを言い出したなこいつ。だが言葉を向けられた母さんは気楽なものだ。
「ん〜まあ無茶な遊び方するのも若い内の特権だからね。人様に迷惑かけなければ好きにしたらいいさ」
理解があって涙が出るぜ。
「そうなの?」
「そうよー。彩音ちゃんも今のうちに好きなだけ遊んでおきなさい。年を取ってくると遊んでばかりじゃいられなくなるから」
そう言って彩音に何やら吹き込んでいく我が母。社会の厳しさやら現実を教えてるんだが人様の娘に何をしてやがる。
「彩音ちゃんも私の娘みたいなもんだからいいのよ」
「さいですか」
確かに昔から知ってるし、よく面倒も見ていたがそんな認識なのか…。その理屈だと俺もお隣の子になるんだが?俺と彩音には親が四人?
「ごちそーさまでした!お兄さん、早くあそぼー?」
「待て待て、メシくらいゆっくり食わせろ」
俺が余計なことを考えている間に食べ終わった彩音が急かしてくる。母さんの話を聞きながらもしっかり食べていたらしい。俺は急かしてくる彩音をあしらいつつ遅い朝食を済ませた。
_______________
「んで何する?」
「これ!」
そう言って彩音が取り出したのはスマッシュでブラザーズなゲームだ。まあ定番か。
「ふっふっふっ!たっぷり練習してきたからね!今日こそ勝ち越してやる!」
「やってみろ」
いざ尋常にファイッ!
「ハルー!おやつあるから取りに来なーっ!」
「はいはい」
練習してきたのは嘘じゃないのか前にやった時より上手くなっていた。それでもまだ俺が勝ち越しているが。
「おやつ取りに行って来るから少し待ってろ」
「はーい!」
コントローラーを置いて部屋を出て階段を降りる。彩音が来ると母さんはおやつを用意してくれる。ちなみに彩音が来ない時は自分で用意しないとない。
「今日はドーナツか」
用意されてたのは色んな種類のドーナツ。あと紅茶。紅茶を溢さないよう気をつけながら部屋に戻る。
「おかえりー」
「ただいま。今日のおやつはドーナツだ」
「私エン○ルフレンチ!」
「馬鹿野郎、エン○ルフレンチは俺のだ」
俺のお気に入りはエン○ルフレンチ。譲る気はない。
「えー?譲ってよー」
「やだ。欲しかったらゲームで俺を倒してみろ」
「言ったなー!じゃあさっそくやろー?」
「ちょっと待て。トイレ行ってくる」
実は少し尿意を催していた。エン○ルフレンチがかかっているんだ。万全の状態で挑まねば。
「待たせたな。さあやるか」
「あっ」
トイレから戻ってきて最初に目に入ったのはモグモグ口を動かしていた彩音。ドーナツの入っている箱に目を向ければ消えているのはエン○ルフレンチ。
「貴様ーっ!エン○ルフレンチ食ったな!」
思わず彩音の頬に手を伸ばして引っ張る。
「痛い痛い!ごめんってば」
「許すか!」
彩音の両頬を引っ張ったり顔を両手で挟み込んで潰したりする。くそっ!ぷにぷにした肌しやがって!
「いたた…食べちゃったものはしょうがないじゃん。それよりゲームの続きやろー?」
「反省が足りないようだな…」
コントローラーを握りキャラを選択する。さっきまではハンデとして使ってなかった持ちキャラを選んだ。魔王の力を思い知るがいい。
「あーっ!」
「フハハハハハハッ!お前の力はそんなものか!俺に勝とうなど10年早いわ!」
スマッシュで吹き飛ばし、メテオで叩き落とし、魔○拳で吹き飛ばした。そこには小学生相手に本気を出し容赦なくボコボコにして高笑いする男がいた。
「大人気なー…」
「うるせえ!食い物の恨みは恐ろしいんだ!」
小学生に譲ってやれよという意見は無視する。見知らぬ小学生相手なら譲るがこいつには遠慮などするものか。
「はぁ…。しょうがないなー。次はお兄さんが好きなの選んでいいよ」
「じゃあポン・デ・○ング」
俺が二番目に好きな物はポン・デ・○ング。食感がいいよね。
「ポン・デ・○ングね。はい、あーん」
そう言ってポン・デ・○ングを手に持って俺の口に近づける彩音。何してんの?
「エン○ルフレンチ食べちゃったお詫びに私が食べさせてあげる。可愛い小学生に食べさせてもらうなんて嬉しいでしょ?」
「舐めんな」
今更お前にあーんされたところで何も感じんわ。
「えー?じゃあ口移し?」
「何言ってんだお前」
これ以上変なこと言い出す前にさっさと目の前のポン・デ・○ングに食い付く。うまい。
「ほれ、続きやるぞ」
「はーい」
そう言って彩音は胡座をかいている俺の前に座り込んで背中を預けてくる。
「やりづらいんだけど…」
「いいじゃん。ハンデってことで」
「はあ…」
溜め息を一つ吐いて後頭部を俺の胸にグリグリ押し付けてくる彩音を抱えるようにしてコントローラーを握る。なんだかんだで甘えん坊で困ったものだ。
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