創作論百態

 カクヨムにユーザー登録をした時、ちょっと不思議に感じた事柄があった。何故、作品ジャンルの中に『創作論』があるのか。長きに亘って活躍している有名なプロ作家が語る創作論となれば耳目を集めるのは当然と言えるが、アマチュアが論じる創作論にどんな意味があるのか。

 先ずは色々と見て回った創作論をそのタイプで選別してみたい。


●啓蒙系

「補助動詞は平仮名に開く」のような商業小説的ルールを徹底させようとするタイプ。

 啓蒙系は更に『伝統的小説作法派』と『ウェブ小説作法派』に大別出来る。ウェブ上であろうと紙の本と同等と主張する派閥と、ウェブにはウェブのルールがあると主張する派閥。

 何れにしろこのタイプは『他人が決めたルール』を盾に正論を吐こうとする為、所謂『○○警察』との親和性が高いと見られる。


●慰撫系

 底辺作家の味方である事を前面に出し、励ましや癒し、自己肯定感を与えるタイプ。

 その実、慰撫系に救済された者達がその書き手に味方をし、励まし、癒し、自己肯定感を与えるという傷の舐め合い的相互補完関係を醸成する。

 底辺作家である事を自称しつつ底辺作家の中では上位に鎮座するその姿は、教室の片隅でミニマムなカーストを構築して君臨する女子グループのリーダー格を彷彿とさせる。


●罵倒系

「そもそもこんな創作論を読んでる時点でお前は終わってる」的な挑発をするタイプ。

 世の中には叱られたい願望やマゾヒスティックな感受性が存在する為、一定の需要があるようだ。

 但し、このタイプは『愛の鞭』というパッケージングで炎上対策を施している事が専らで、罵倒需要を当てにした営業的ヒール感は否めない。


●攻略系

 どうすればPVが伸びるのか、星を獲得出来るのか、というノウハウを伝授するタイプ。

 或る種のゲーム感覚とも言えるが、突き詰めれば表面的な見栄え評価さえあれば生きて行けるという本末転倒に陥り易い。


●経歴系

 元プロ作家や書籍化経験者等の経歴に依拠するタイプ(詐称でない前提)。

 実体験を元にした論には実践的な説得力がある、と思わせる事が可能である。

 が、元芸人が芸人養成所で講師をやるような、一度はメジャーデビューしたミュージシャンが今は裏方に徹しているような、そこはかとない落ちぶれ感が漂い、「貴方はどうしてカクヨムに居るの?」との突っ込みを誘発し兼ねない。


              ◇◇◇


 創作、創作ではなく創作。それは事実上、エッセイの亜種と捉える事が肝要かと思う。『SF』とか『ホラー』とかと横並びの一ジャンル。

 カテゴリー名が『創作論・評論』となっている事がミソで、『評論』と謳いながら『感想文』でしかないものが溢れている現状を鑑みれば、『創作論』の内実も推して知るべし。

 色んなジャンルがある中で『創作論・評論』を選び、頼まれてもいないのに、万に一つも書籍化される事などなさそうなカテゴリーなのにそれを書く行為は一体何を意味するのか。

 大別した各系統に共通するのは、お山の大将を指向する営業活動の一環である事。それを忘れてはならない。

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