「鼠色」は死語か?

 昭和の有名な未解決事件『下山事件』に関する書籍(1950年代刊)を読んでいた時に、目撃証言の中に『ねずみ色の背広』という文言が頻発していて、今だったら『グレーのスーツ』と表現しそうだなと思った。


 鼠色に該当する色を見せられて「この色は?」と訊ねられた時、咄嗟に出る回答に世代差や地域差はあるのだろうか。


 つい最近『鼠色』という言い方は江戸時代に広まったと知った。火事の多い時代、『灰色』の『灰』は縁起が悪いという事で『鼠色』になったのだとか。


 僕が子供の頃はもっと『鼠色』に馴染みがあった。クレヨンや色鉛筆、絵具には『ねずみいろ』と書いてあった気がする。

 各色の呼び名の違いはあれど、普段使いは大体12色セットだったろう(24色とか36色とかに憧れた気がする)。


『黒色』『鼠色』『茶色』『紫色』『青色』『水色』『緑色』『黄緑色』『黄色』『橙色』『桃色』『赤色』


 勿論メーカーで違いがあり、別の色になっている事もある。以前は『肌色』と呼ばれていた色が入る場合は『薄橙色』と称されるようだ。


 また、クレヨン、色鉛筆、絵具の三者で、そのラインナップに傾向があるように感じた。

 絵具の場合は『白色』が必須。絵具は混ぜてバリエーションが作れるので、『白色』は多用の機会があるのだろう。

 今回話題にしたい『鼠色』だが、クレヨンには入っているが、色鉛筆には入っていない傾向を感じた(自分調べ)。勿論、色数の多い商品には入っている。

 最近の表示は『はいいろ』『グレー』が多いように感じる。『ねずみ』は病気を媒介する嫌なイメージだからか、そもそも鼠を目にする機会が減っているからなのか。


 そもそも鼠は鼠色ではない。茶色掛かった色と言うか、アニメ等の絵で一般的にイメージする色ではない(もしかしたら種類が異なるだけかも知れないけれど)。ピカチュウは横に置くとしても、そう言えば『トムとジェリー』のジェリー(鼠)は茶色で、寧ろトム(猫)の方が鼠色だ。


 鼠は鼠色ではない事に気付かせてくれたのは、他でもない猫姉妹。

 屋内外の出入り自由の暮らしなので、お得意の狩猟本能を発揮する。鳥、蜥蜴、家守、蛇、土竜、各種の虫――帰宅したら部屋の隅に死骸が転がっていて「ぎゃーっ」な日常なのである。


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