某業界の口癖

 テレビ番組(またはネット番組)を観ている時、特に複数人が意見を言い合う討論系のコンテンツの中でよく耳にするフレーズがある。


「○○と思っていてぇ」


 自分の考えを話す際、その合間に挟み込まれるフレーズ。長文を話す時に内容を接続するのに便利なのだろう。

 私見では言論系の人がよく使っている。芸能人や年配の人はほとんど使わないと思われるがどうだろう、20代から50代くらいまでの話者に見受けられる印象がある。何れにしろ昔は耳にしなかった気がする。


 他に「先程○○のお話があったと思うんですけど」というような言い方も耳にする。

 ついさっき交わされた会話の短期記憶がもうあやふやなのか、と。でもこれは一種の気遣い的なフレーズで、言外に「もし私の記憶が間違っていたらご免なさい」というニュアンスを入れたいのだろう。


 もし意地悪に勘繰るとすれば、「お話がと言っただけで、お話がと断言はしていません」という、相手の意見に対する自分の解釈が間違っていた場合の言い訳として使っている可能性もある。


「○○と思っていてぇ」にしろ「あったと思うんですけど」にしろ、耳障りだから使うなと言いたい訳ではないけれど、最近はこういうフレーズがあったと思うんですけど、違和感しかないと思っていてぇ――くらいには気になってしまう。


 他にも言論系の人の口癖でよく耳にするのは「或る種の」「或る意味で」「端的に言うと」等。

 こういう或る種の口癖に気付いてしまうと肝心の話の内容が或る意味で頭に入って来なくなって端的に言えば鬱陶しいのだ。


 どんな業界にも、ジャーゴンとまでは言わなくても多くの業界人が好んで使うフレーズがあるのだろう。これは一般的な流行語と違い、ほとんど無意識に伝染しているようにも思える。

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