鉱脈、見っけ!

 某動画サイトでは『おっさんホイホイ』なるコンテンツが見受けられる。『おばさんホイホイ』もあるのだとか。その他にも色んな『○○ホイホイ』があるのだろう。僕もホイホイされている一人だと思う。

 中には『日本人ホイホイ』というのもあるらしい。「日本人だったら好きだよね」というコンテンツの事で、《日本人が日本人に向けて発信している動画》というのが一般的な解釈だろう。


 或る時、僕は「気付かれちゃったんだな」と思った。

 それは「日本人だったら好きだよね」と《外国人が日本人に向けて発信する動画》が花盛りな事を知った時だった。

 主に、外国人が日本の音楽やアニメを視聴して感想を述べるという内容で、中でも《日本のおっさんやおばさんに向けたホイホイ》が目立つように感じる。70年代や80年代を中心にコンテンツに驚き、素朴な意見を述べつつ、全体的には賞賛するという趣旨。


 勿論、どれも日本語字幕が付いていて、中には日本語が堪能な配信者も散見する。外国人ユーザー以上に日本人ユーザーを意識している事が窺え、再生数は万単位が当り前という印象だ。

 コメント欄には日本語が溢れている。当然「よく解ってくれている」「愉しんで貰えて嬉しい」「今度はこれを聴いてみて、見てみて」というような感想が多い。


 もし日本人が同じ事をして(既に居るのかも知れないが)、外国人から同じようなリアクションを貰えるのだろうかと考える。例えばアメリカ人が、日本人に褒めて貰って「アメリカ人はやっぱ凄いんだ!」と自信を持つのだろうか。

 特定のアーティストのファン同士であれば国を越えて「だよね、良いよね」と盛り上がるかも知れないけれど、日本人くらい『同じ日本人(の創作物)』が褒められて鼻高々になって気が大きくなって「日本人は凄い!」と喝采を叫ぶ国民は居ないのではないか。すっかり斜陽国になった昨今であれば尚の事だ。


 この事は社会学やら民俗学やらでとっくに言及されているとは思うが、この志向性が外国の動画配信者にばれてしまったように感じる。

「日本人って、日本人や日本で有名な創作物を称賛するとめっちゃ快感物質が出てどんどん動画を再生してくれるぞ」「凝った動画を作らなくても単に視聴して感想を言うだけで稼げるぞ」と。


 そう言えば、一時期はテレビでも『日本は凄い』系の番組が目立っていた。が、それも下火になっている気がするのは、一般外国人が大挙してそういう動画を配信し始めた影響かも知れない。

 若しくは、多くの日本人が「日本はもう凄くない」と思い知ってしまったからなのか。だからこその「まだ日本が凄かった70年代や80年代の創作物を褒めてくれてありがとう」――なのかも知れない。


 テンプレ系小説の根強く根深い人気の背景に「もうぺんぺん草も生えない現実(日本)なんか見切りを付けて、異世界(ナーロッパ)で余生を過ごそうぜ」という感性がある事は、もう疑いようもない。

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