三崎亜記氏に捧ぐ

 タイトル名の作家が居る。

 1970年生まれの男性作家である。

 2004年、小説すばる新人賞受賞作『となり町戦争』でデビュー。

 試しにカクヨム内で検索したがタグ等のヒット件数は0件だった(※投稿時現在)。


 細かい事は知らないけれど、行き成り小説賞を受賞してデビューした人らしい。

 デビュー作『となり町戦争』は漫画化、舞台化、ラジオドラマ化、映画化と華々しい展開を見せた。内容については各自検索をして貰いたいが、SFと言えばSFだし、奇妙な味っぽくもあり、風刺に富んでいる。当時、色んな作家に絶賛されていた。


 僕がどんなきっかけで『となり町戦争』の事を知ったのか、その経緯は全く憶えていないが、いつも古本しか買わないのに、同作(単行本)は直ぐに購入した気がする(もしかしたらヤフオクで買ったかも)。そんなに厚い本ではなかった。


 当時の僕は「やられたっ」とか「こういうのが認められるんだっ」という感想を持った。「僕が書きたいようなものを書いて世に評価されている」という嫉妬のような希望のような複雑な感覚でもあった。同世代だった事も感情を刺激した。


 その後、短編集に関しては何冊か購入して読んだ。作風は、かなり好き嫌いが分かれると言うか、人によっては「一体全体、この小説は何を言ってるんだ?」と投げ出す人も居るかも知れない。星新一とも違うし、村上春樹とも違うし、似ている作風はあるのかも知れないが、僕は小説界に詳しくないので名前を挙げられない。


 最近また読み直してみて、好きは好きだが、やっぱり広範囲には受けないよな、と今も昔も抱く感想は同じだった。設定に溺れていないでもっとドラマを見せてくれ、という歯痒さも変わらなかった。が、この指摘は自分自身にも跳ね返って来るような気がした。


 三崎氏はデビューから少しして公務員を辞め、専業作家になったらしい。作家としてやって行ける、と判断したのだろう。

 だが、その後は段々と世間から忘れられて行った感がある。ちらっとでも「副業のままやっていれば良かった」と悔いた事があるのだろうか。

 なまじデビュー作で注目された事が仇になったのかも知れない。現在は安定した人気アーティストが「デビュー当時は中々売れなくて……」と回顧する場面はよく目にするけれど、逆のパターンは余り人目に付かない。

 公式にデビューをしたら、もうおいそれとデビュー前に戻る事は出来ない。アマチュアに戻って再デビューという道もあるのかも知れないが、一旦ははっきりと廃業宣言をする人はどれだけ居るのだろう。『元作家』の肩書を纏いながら人知れず消えて行く作家は、年間どれだけ居るのだろう。


 三崎氏は作家であり続けているようだが、間違いなく売れっ子ではないし、今後また大きく注目される事はないだろうと勝手に思っている。作風を大きく変え(幅を広げ)、新境地で名を上げる作家も居るけれど、そういうタイプではなさそうだ。

 ひっそりと動画チャンネルをやっているが、廃業寸前とか、もう直ぐ元作家になりそうとか、その紹介文には自虐的哀愁が漂っている。


 大きなお世話ながら「カクヨムで書けば良いのに」なんて思ったりもする。曲がりなりにもプロになってしまうと難しいのか――。

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