ある? いる?
今回はかなり重箱の隅のすみっこ暮らし的な内容を鏤めて。
校正(一般人の文章が対象)のアルバイトをしていた頃、色々と言葉の奥深さ、面白さ、不可解さ等に触れた。
思わず吹き出すような誤字や表現もあったのだけれど、一人、密かに気になる事もあった。
A「花瓶が置いてあった」
B「花瓶が置いていた」
C「花瓶が置かれてあった」
D「花瓶が置かれていた」
貴方は、この四つの表現の中でどれがしっくり来るだろうか(複数回答可)。
僕としてはAかDを選びたい。何故と訊かれても「そう感じるから」としか言いようがない。
でも、校正バイトの際、一般人の書いた文章にちょくちょくCが出て来た。中にはBもあった。
表現に違和感がある時は、書いた人の出身地を確認するようにしていた(細かい事は省くが、システム的に各文章には個人情報が添えられていた)。
その結果、僕個人の印象論に過ぎないのかも知れないが、大体が九州(の北)の人だった。
九州で思い出したのが、井上陽水氏(福岡県出身)の歌『傘がない』のAメロの一節。
――今朝来た新聞の片隅に書いていた――
この「片隅に書いていた」という言い方に違和感があって仕方がなかった(因みに僕は陽水世代ではない)。「片隅に書いてあった」だろう、と。
単に字数を合わせる為とも解釈出来るが(促音「っ」が入っているから合わせる事は容易だが)、どうなのだろう。
これは「いる(いた)」の一例だが、個人的には「ある(あった)」の例の方が多い。
先日、武田鉄矢氏(福岡県出身)の喋りを聞いていたら「売られてあった」という言い方をしていた。
また、長崎の廃坑を取材したテレビ番組を観ていた時も、地元のお年寄りが「売ってあった」と言っていた。またしても九州。
小説を読んでいる時に見掛ける事もある。同じく福岡県出身(出生は広島とも)の松本清張氏の著作でもちょくちょく「○○ある(あった)」の言い方を見掛けた記憶がある。
A「花瓶が置いてあった」
B「花瓶が置いていた」
C「花瓶が置かれてあった」
D「花瓶が置かれていた」
僕がAかDを選ぶのは、関東の人間だからだろうか。
独特の言い回し「~やで」「~じゃん」「~なもし」等は方言として判りやすいが、「いる(いた)」「ある(あった)」のような地味な差異は見落とされ勝ちではないだろうか。
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