創作遺跡

 いつも気儘に気紛れに投稿作を見る。そして「これは面白いな」と思ってハートやら星やらを付けようとする。

 と――そこでかなり前の投稿作である事に気付き、付けられた応援コメントの日付もその当時のもので、その人の他の投稿作を見てみると最新作もかなり前で、近況ノートを見ても何年も前の「あけましておめでとうございます」だったりする。


 評価はするものの「コメントは書いてもしょうがないか」とその場を去る――もしかしたら完全に読み専になっているのかも知れないけれど、『連載中』の作品がずっと放置されたままだったりもする。こういうのを『エタる』と表現する事自体もカクヨムで知った。


 この作者は現在どうしているのだろうと感慨を覚えたりもする。すっかりモチベーションがなくなったのか、興味の矛先がすっかり別の分野に向かったのか、大成して卒業したのか、災害や事件に巻き込まれたのか――。


 特に近況ノートはまるで意図せざる遺言のよう。報告、宣伝、感謝、持論、苦言、雑記――そこに記されたグルーピー同士の和気藹々としたやり取りは言わば『集団遺言』。


 ネット上でも、例えば自分が好きなミュージシャンのファンらしき人のブログを見付けて「コメントを書こうかな」なんて思って日付けを見ると、十年も前に更新がストップしていて「あぁ……」と思ったりする。


 一体、ウェブ上にどれだけの『創作遺跡』があるのだろう。


 デジタル遺品というのがある。ハードディスク等に保存されているものや、利用料が掛かるサービスの登録等は、死後に遺族の手で始末されるだろうけれど、例えばカクヨムの投稿作はどうなるのだろう。

 中には小説を書いている事を周囲に全く知らせず活動している人――例えば僕――も居て、その作品は死後もずっとネット上に存在し続けるのだろうか。

 利用規約をよく読んでいないのだけれど『○年間、一度も更新がなければアカウントは抹消』なんて事になるのか。死んだ後の事を気にしても仕方がないけれど――。


 未来のカクヨム利用者が呟く。

「この作品は面白いな、評価しよっ……あらら、投稿日時は半世紀前だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る