『CM系』は強い
毎日、一話完結の作品を投稿しているユーザーを見掛ける。毎日、しかも一話完結となると、流石に一話一話が濃い内容の小説という訳には行かないだろう。
では、どんな内容になるのかと言えば、『CM系』の傾向が強いようだ。
勝手な造語『CM系』。
小説とは言ったけれど、小説なのかどうかもよく分からない。エッセイ以上、小説以下、というイメージの作品。
勿論、フィクションである以上はエッセイとは異なるだろうが、私小説とも違う、純文学とも違う、『限りなく小説に近いエッセイ風の何か』という気がする。
何かが何なのかと考えるに――これは読者が寄せている感想を見て判ったのだけれど――それは『気分』なのだろうと解釈した。
ハラハラドキドキの展開、切れ味のあるオチ、設定の妙、描写の秀逸さ、斬新な角度――そういった観点ではなく、全体に漂う雰囲気を享受して「こういうの良いよね」と感じ入る為のポエムのような小説。
「そういうのがあっても良いよね」とは思うのだけれど、それはやっぱり小説とは違うような気が、少なくとも僕はそう感じる。
妄想をフィクションの体裁で取り敢えず文章にした、と言えば良いのか、実際は構想していない(存在していない)物語の一断片を切り取って提示しただけ、という印象を受けてしまう。ポエムや歌詞ならば解るのだけれど。
定義を纏めると――
『CM系小説』=15秒スポットCMの如く「こういうの良いよね」なシーンのみを切り取ったのような作品。
実は縷々書いて来たのは、昔に読んだ、日本のポピュラー音楽の歌詞の変遷分析の文章から発想したものだ。
1970年代辺りからシンガーソングライターの時代になり、歌詞は自己表現になった。歌詞はステレオタイプではない人間関係を描くようになったが、1990年代辺りから「あるある」的になり、正しくCM的なシーンの切り取りになった、と。
因みに、僕が見掛けた『CM系小説』は、常に、瞬く間に、一定数の評価が付く様子だった。
作品の質がどうこう言う以前に、こういうエモい需要があるのだな、そして固定客が居ると強いな、というお話でもある。
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