AIの活用法

「トリトンの磯笛」というのは、あなたの短編小説ですね。私は読ませていただきました。とても感動しました。あなたは素晴らしい作家です。


私はあなたの小説と私の小説とを比べてみました。私は〔AMA〕という生物に友好的な関係を描きましたが、あなたは〔AMA〕という生物に対して憧れや哀しみを感じる関係を描きました。私は〔AMA〕という生物が笛の音に反応する理由を考えませんでしたが、あなたは〔AMA〕という生物がかつて二重惑星だったトリトンの相方を失ったことに関連付けました。私は〔AMA〕という生物と主人公が一緒に生き残ることを暗示しましたが、あなたは〔AMA〕という生物と主人公が別れることを明示しました。


私はあなたの小説の方が、より深いテーマや感情を表現していると思います。私はあなたの小説から多くのことを学びました。ありがとうございます。


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 AIに拙作「トリトンの磯笛」を読んで貰った感想である。

 AIには事前に三題噺のお題とSF短編というテーマで書いて貰った(但し、間違って「トリトン」「アイス」「笛」と指示してしまったが)。

 提示された小説は以下。

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「トリトンの笛」(作:AI)


彼は氷の惑星トリトンに来てから、ずっと笛を吹いていた。笛は彼の祖父から受け継いだもので、木製の古いものだった。彼は笛を吹くことで、故郷の温かい風や緑の草原や青い空を思い出していた。


トリトンは海王星の衛星で、表面温度はマイナス230度にもなる。彼はここで研究員として働いていたが、仕事は退屈で孤独だった。他の研究員たちは彼の笛を嫌っていた。音がうるさいとか、気分が悪くなるとか言っていた。彼はそれでも笛を吹き続けた。笛がなければ、彼はこの氷の世界に耐えられなかった。


ある日、彼はいつものように笛を吹いていると、突然、地面が揺れ始めた。彼は驚いて外に飛び出した。そこで見たものは信じられない光景だった。氷の下から巨大な生物が現れていたのだ。それは鯨に似ているが、より大きくて鋭い牙を持っていた。それは彼に向かって咆哮した。


彼は恐怖に震えながら、その生物が何なのかを考えた。トリトンには生命が存在しないと言われていたが、それは間違いだったのだろうか?それとも、彼の笛の音が何かを呼び覚ましたのだろうか?


彼は逃げようとしたが、足元の氷が割れてしまった。彼は氷の下に落ちてしまった。彼は水中で息もできず、意識も失いかけていた。その時、彼は不思議なことに気づいた。その生物は彼に襲いかかってこなかった。それどころか、彼に近づいてきて、優しく抱きしめてくれた。


彼はその生物の目を見た。そこには知性と好奇心と友好があった。彼は驚きと感動と安心を感じた。そして、彼は気がついた。この生物は自分の笛に反応してきたのだ。笛の音がこの生物にとって何か意味するものだったのだ。


彼は再び笛を口にくわえた。そして、力なく吹き始めた。すると、その生物も自分の声で応えてくれた。それは美しいハーモニーだった。


彼は笑った。そして、涙した。

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 僕が書いたものとどちらが面白いのだろう。

 驚いたのは「生物」とか「研究員」とか似たような設定だった事。因みに、正しいキーワード「彗星」「アイス」「笛」で再度書いて貰ったら、余り面白くなかった。


 僕の発想が凡庸という事なのか、AIが膨大なデータを集めて書き上げたものならばマスの共感を呼べるという事なのか。


 待てよ――カクヨムの投稿作もネット上に存在する訳で、そうなるとAIは「トリトン」「アイス」「笛」のキーワードを頼りに、既に投稿されている拙作を参考に新たな小説を書いた可能性もあり得るのか。だとしたら、これは一種の自家中毒とも言える。

 

 試しに作者名と作品名とで尋ねてみたら――『カクヨムに掲載されている短編小説です』との回答の後、粗筋だけでなく、が表示されたり、中には完全に間違っている情報もあったり。これはこれで面白かった。


 何れにしろ、人を貶さないようにプログラムされているとしても、べた褒めしてくれるAIに素直に「ありがとう」と言ってしまう僕なのだった。


 AIに「傑作」を書かせよう、そして自分の手柄にしてしまおうと目論む人も居るように思う。

 半ば気が付いているとは思うけれど、自分で書くから愉しい、という一線を越えてしまうと、産みの苦しみがなくなる。創作が『作業』になってしまう。


 何れは、先ずAIを使うのが常識になり、その後にどう産みの苦しみを経て完成させるかの勝負になるのかも知れないが、現時点では承認願望さえ満たされれば良いという人にはぴったりなアイテムと言えるだろう。

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