3人目(1)
天使として生きるか、人間として生きるか、その選択が許されるのならば、私は天使として生きたい。絶対に許されないこの世界で、そんなことを願う。
「…だいじょぶ?」
「…」
「…おーい?」
「んが!?」
公園のど真ん中で倒れていた少年のもとに、小さな天使が舞い降りた。
「こんなところにいたら危ないよ!」
「うん、ごめんね……もしかして、天使さん?」
「お、よく気がついたね!すごいぞ坊や!」
「えへへ!おかあさんがね、天使さんを見つけたらお家に連れてきてねって言われててね!だから一緒にお家に行こーよ!」
少年のキラキラした目には抗えない。天使は彼についていくことにした。
「おかあさん!天使さんいたよ!」
少年はドアを開けるのと同時に大声で言った。母親は玄関に走ってきて、とても嬉しそうな、不気味な笑みを浮かべていた。
「よくやったわ!天使さん、ようこそ。どうぞお入りください」
天使は少し不審に思った。天使は神ではない。捨てられるような奴がいるくらい、この世に天使は有り余っている。だからこそ人々はみんな、天使を友達のように思っている。いや、友達と言うよりは__お願いを聞いてくれる道具。なのにこの母親は、天使をまるで神のように扱う。
「天使さんがおいでになるとは思っていませんでした。大変嬉しく思っております…」
「あの、僕…天使なんです、神じゃないです…」
「いいえ、天使様様でございますよ。あ、そうだ。ちょうどいいケーキを買っておいたのですが、召し上がりますか?」
「いえいえ!お気になさらず!」
「いいえ、ぜひ食べてくださいな」
母親はすっと立ち上がると、ケーキを取りだしてきて、天使の前にコトンと置いた。
「気に入ると思います」
「あ、じゃあ…はい、頂きます。ありがとうございます…」
天使はケーキを一口食べた。この中に毒でも入っていたらと思ったが、そうでもなさそうだった。
「…美味しいです。ありがとうございます」
「こちらこそ、わざわざこちらまでお越しくださって感謝しています」
「…どうして天使なんかに丁寧な言葉を使うんですか?」
思い切って聞いた。母親の表情は一瞬で曇った。
「大切なお願いがあるのです」
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