第一章『??の鍵』④

「……うん?」

 風が吹き、木々が揺れ、花びらが散り、香りが運ばれてくる。

 女は唐突に立ち止まり、すん、と鼻を動かしてみた。

 周囲を取り囲む少女たちのかしましい声が、一瞬とても遠くに聞こえた。

「……この匂いは……」

 花や少女たちの香りにまじって、鼻腔をくすぐるものがある。

 女の舌に優しく甘い幻が広がり、胸の奥底で切ない気持ちがぱちんと弾ける。

「……はちみつミルク?」

 女は、胸元にペンダントのように提げた”鍵”を握りしめる。

 そして、誘われるように匂いの元へと向かった。

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