第8話 ディズニーランド

「どこにいるんだ?」

「お兄ちゃん、動画送るよ」


 えっ、か、可愛い。


「ナオさんのミッキーのカチューシャ可愛いなあ」

「お兄ちゃん、ミッキーはレイがつけているやつ、ナオさんのはミニー。ね、だから言ったでしょ。お兄ちゃんにはミッキーもミニーも区別がつかないって」

「ほんまやね」

「ナオさん、車で迎えに行きます」

「疲れてるのに、ええよ」

「ともかく、そこに、ぼくも行きたいです。待っていてください」


 自宅のある世田谷から東京ディズニーランドまで35分しかかからない。

 はやる気持ちを抑え一平はハンドルを握った。




「夜の夜中に奥多摩に集まって集団自殺ですよ。学校の一学年分くらいはいたかな。中には小学生もいて、死んで異世界に転生するんだって」

「ああ、流行ってるやつやね」

「ナオさん、そんなものが流行ってるんですか?」

「うん、うちの母がウェブ小説書いていて、受けるのはほとんどそういう系の話やと嘆いとったわ。今や児童書までそんなのが求められとるって」

「へえー、最初の発端は何ですか?」

「マンガかゲームやと、思うけど~」

「彼女たち死んで転生するって言うんです。死んでも転生出来ないと言うんですけどね。ナオさん、あれ、寝ちゃった」


 そうだよな、朝からレイに付き合わされて疲れもするよな。

 レイはとっくに後部座席にひっくり返って寝ている。

 一平はバックミラーで後部座席を覗いた。

 連休初日とあって、いつも数珠繋ぎの幹線道路はむしろ空いている。

 昨日は日付が変わろうとしているのに、少女たちは集まって来ていた。

 親は何をしているのだろう。夜中に家を出て行く子どもが心配ではないのか。




「ナオさんすぐに大阪へ帰るつもりで着替え持って来てないって言うから、ここ置いとくね」

「おまえの服、ナオさんが着るのか」

「何よ、文句ある?」

「いや、あまり露出の多いのはやめろよ」

「何よ、嬉しいくせに。レイ様をありがたく思ってよ」


 ナオが寝室に使っている部屋から出て来て、ミニーマウスのロンTをパジャマ代わりに着ていた。


「ナオさん可愛い、そのパジャマ似合う」

「ほんま?」


 ナオは一周回って両手を腰に当て、片足を出しておどけてみせた。


「キャハ、ナオさん、可愛い」


 レイはナオに抱きついた。

 一平が言いたいこと、やりたいことを全部代わりにやっていた。

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