第5 妹レイ

「レイ、まだそんな格好してたのか。早く着替えろ。胡蝶蘭をあっちの部屋に持って行ってくれって言っただろ。ナオさんがアレルギーなんだ」


 レイは胡蝶蘭の鉢植えをナオの鼻先に近づけた。ナオもよせばいいのに胡蝶蘭の香りをクンクンと嗅いだものだから堪らない。

 ハッ、ハッ、クション。


「わあっ、ほんとうだ」


 レイは面白がって、もう一度ナオの鼻先に持って行く。

 ハッ、ハッ、クション。


「キャハッハ、ナオさんおもしろい」

「おれのナオさんをおもちゃにするな。片付けたらお茶をお出しして」

「おれのナオさんて何? 手を繋いだくらいで、そんなこと言うと嫌われちゃうよ、お兄ちゃん」


 レイは鉢植えを抱え直し言った。


「コホン。ナオさん、すみません。ちょっとシャワー浴びてきます」

「は、はい、どうぞ」


 一人っ子のナオはこの空気に馴染めずに目を白黒させた。


「ナオさん、お茶は何がいい?」

「お水で。その前に手を洗ってええ?」

「洗面所はそこで、タオルも置いてある」

「ありがとう」


部屋の中にはさらに扉のある部屋が2部屋とキッチン、トイレと浴室があるようだった。

 ナオが白い革張りのソファーに腰をかけると、控えめなノックの音がした。

 ナオは慌てて立ち上がる。


「いらっしゃいませ」


 ナオに向かってお辞儀をして、今度はレイに向かって言った。


「お父様がお越しくださるようにと」

「ヤマさん、この人ナオさん。お兄ちゃんの彼女になるかもしれない人」

「はい、存じております」

「ふーん、ヤマさんは何でも知っているんだ」

「じゃ、お伝えしましたよ」


 ヤマさんは静かに戸を閉めて去って行った。

 ナオの腕に腕を絡めて座っているレイが言った。


「ヤマさんは家政婦さんをしてくれていて、表のSP檜山さんの奥さん。上に住んでいるの」


 階上を指差した。

 マンションと思っていた建物一体が、どうやら一平の家らしい。

 


「あっ、これお土産なん」


レイに紙袋を手渡した。


「うわー、嬉しい」


 レイは手を叩き目を輝かせた




*さあ、ここで問題です。

 レイが喜んだお土産とは何でしょう?

 ヒント 食べ物です。








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