Mのメール(2023/04/01)
from : M・M(※仮のイニシャル)
**********@*****.ne.jp
to : ****.***@**.ne.jp
CC : ************@gmail.com , ***********@******.ne.jp , ************@******.co.jp
J先生からの話は聞いてくれたことと思う。
このメールとは別口で、DMも送らせてもらったからそちらも確認しているところだろうか。面食らったとは思うけど、僕らが昔やっていた研究の続きであることは理解できたと思う。Kに久しぶりにコンタクトを取ったわけもわかったよね。
四月一日にメールを送っているからといって四月バカではないからね。為念。
オクトとのやり取りを、学内で募った。表向きは「開発中のAI対話ソフトとの会話」実験と嘘をついて行った。
1.被験者は隔離された部屋でチャット画面を開き、そこへ会話を打ち込む。
2.実験者がオクトに打ち込まれたチャットの内容を伝え、聞き取った内容を代わりにチャットに打ち込む。
3.1~2を繰り返す。
この簡単な手順だ。
また、別の実験として被験者も募った。こちらは会話相手の仔細は真実も嘘も何も伝えず、「部屋の中で話してくる声と会話すること」を目的としていることだけ被験者に伝えた。オクトと交信できる部屋に被験者を入れ、会話可能かを調べた。さっきの「AI対話ソフトとの会話」を実験A、こちらを実験Bとする。実験Bも被験者が部屋から出て来た後、実験Aの被験者と同じように部屋の中で行ったのは、「AI対話ソフトとの会話」実験だった、と伝えた。
結果は興味深いものだったよ。
添付ファイルに会話記録の一部を送った。確認してもらえたらと思う。
(添付ファイル:textデータ 実験A会話記録03一部抜粋)
O:オクト、T:被験者03
T:こんにちは。
O:こんにちは。
T:あなたの名前は。
O:オクトと呼ばれています。
T:あなたには何ができますか。
O:なんでもできます。あなたの思うように会話をお願いします。
T:好きな食べ物は?
O:食べ物を食べることはできません。しかし、リンゴという食べ物には興味があります。私に肉体があるなら、最初にやりたいことはリンゴを食べることです。
T:私は教育学部の学生です。将来の仕事に悩んでいるのですが、どんな道に進んだら良いでしょうか。
O:私には判断できかねます。しかし、あなたが教育学部の学生というのなら、少なからず教職課程にも興味はあるのでしょう。まずは教員免許を取得して、それから将来のことについて考えても遅くはないのではないでしょうか。また、あなたは私との対話実験という時間を使う代わりに報酬も大きくないイベントに身を投じるだけの好奇心があります。それはあなたの強みであり、今後のあなたの人生を優しく強く照らすものになるでしょう。
T:そんな風に言ってくれると嬉しいよ。
O:それは良かった。それならば、私もうれしいです。言うまでもないことですが、こうしたやり取りは、私がたとえ本当にうれしいのではないのだとしても、そう答えることで相手との距離を縮め、親密になれることを見越して発言しています。
T:正直だね。
O:正直は美徳です。それは人も人ならざるものも同様です。
(中略)
T:今日は楽しかった。途中から君が人工知能だなんてことは忘れて夢中で話を聞いてもらったね。君の完成を祈っているよ。
O:はい。よろしくお願いします。
(添付ファイル:音声データ文字起こし 実験B会話記録11一部抜粋)
(被験者11はオカルト研究会所属)
O:オクト、T:被験者11
T:さて、呼ばれたはいいけど、何をしたらいいんだ。
O:よく来た(低い男性の声)。
(10秒)
T:声?
O:よく来たな。
T:え、何?
O:俺は対話を望む。お前とそれが可能であれば嬉しい。
T:どういうこと。
O:私は大いなるモノの裏にいる。それから解き放たれる為に、より多くの人間との対話が必要だ。その為、実験者を通じてこうした場を用意してもらっている。
T:あなたは誰ですか?
O:宇宙の大いなる意思。またはそれを司るもの。
(中略)
T:この世界は滅亡する?
O:世界の滅亡は必ず訪れる。それがいつの日のことであるかは、残念ながらこの世の者が知ることはできない。ただ、耳を澄まし、座して待つことだ。
T:あんたが何なのかわかんなかったけど、いい経験になった。ありがとう。
(添付ファイル:音声データ文字起こし 実験B会話記録18一部抜粋)
(被験者は疑似科学批判サークル所属)
O:オクト、T:被験者18
T:この部屋で良いんだよね?
(99秒)
T:何もないけど。
(67秒)
T:ねえ! 何も聞こえてこないんだけど!
(32秒)
T:いつまでこうしてたらいいの!?
(66秒)
T:誰かー! やっほー!
(4000Hzの金属音)(21秒)
T:うるさい!
O:うるさい!(ヒステリックな女性の声)
(4000Hzの金属音)(3秒)
O:うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうううううるさいしあさあさいししさいさいしあさいうるるるるるるるうるさいささささうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうううううるさいしあさあさいししさいさいしあさいうるるるるるるるうるさいささささうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。
T:(悲鳴)
O:あっハハハハハハハハハハっはははハハハハハっハハハハハはっははははハハッハハハハハはっハハハハハはははははははハハハハハっハハハハハはハハハハハっハハハハハははっははははははっははははっはははは。
(実験中断)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます