助教Jとの対話:口述記録(2023/03/24)
(スタバでの会話の後、助教の車へ移動。そこから家まで送り届けてもらった際の会話を録音し、文字に起こしたものを編集)
J:今の時代、インターネットの発信力というのは侮れない。
私:まあそうですね。
J:だが、人類総発信時代とでもいうか、スマホを持っている人間なら誰もが簡単気軽に情報や自分の信条、作品を流すことができるようになった。だから、その内容は玉石混交。嘘も真実も綯い交ぜになったカオスだ。
私:J先生、未だに学生がWikipediaとかの引用したら大幅減点してます?
J:それは当然。ただ、最近はChatGPTとかに文章作らせるのも流行ってるだろ? 単純なコピペってわけでもないから、学生の文章がネット上の文章を引用してるのかどうか、それとも人工知能に書かせたものなのかどうかとか、もうわからないな。
私:大変ですね。
J:ただ、だからこそ良いというか、K君、ダレン・シャン好きだっけ。
私:子供の頃全巻読みましたよ。
J:最終巻知ってる?
私:(ネタバレ配慮)。ダレンが自分の経験を本にするっていう。
J:それ。そういう、作者の存在も含めて嘘か本当かわからないような、あくまでフィクションってテイの創作、あるだろ。あれくらいが良い。
私:J先生達の研究のリークってヤツですか。
J:僕達の、っていうか、元々君らのだろ。この話を持ってきたの、M(私の修士時代の同期)だよ。
私:マジですか。M、今何やってるんですか。
J:マスターの途中でドロップアウトした君とは違ってちゃんとドクターまで行って今はウチの研究室で助手やってる。
私:はー。
J:だから本業の研究は研究でちゃんとやってんの。そうじゃなくて、あくまであの頃の君らがやってた話。
私:僕、あれで聖書研究会の皆と喧嘩しましたからね。
J:クリスチャンなんだっけ? それは自業自得でしょ。
私:で、そのオカルト話がなんです?
J:観測しちゃったんだよ。
私:まさか。
(66秒)
私:嘘でしょ。
J:こんな話、誰も信じないだろ。
私:僕だって信じませんよ。
J:再現データも取れた。だけど、データは持ち出せない。
私:何で。
J:なんとなくわかるだろ。君はあの時代の学生達の中じゃ筆頭だった。
(11秒)
私:データが消えるから?
J:それ。
私:まるっきりフィクションですよ。
J:だからフィクションとして発信してくれて良い。
私:えー。でも。いえ。はい。わかりました。どういう形で発信するかはおいおい考えます。
J:それで良い。
私:それで。
J:それで。
私:いや、それで何を観測したんですか。
J:わからない。わからないから困っている。データ提供して、何かわかったら教えてほしい。
私:データは持ち出せないんじゃないんでしたか。
J:いくつか抜け道がある。今、僕がこうやって話しているみたいに。その辺りの検証もMがやってる。
私:相変わらず馬鹿やってますね。
J:あいつが幽霊と同居してるって話、聞いた?
私:そりゃ当然。
J:今もそこ住んでるって。
私:胆力がやばいな。
J:そんなだから、こっちの研究の方も学生じゃなくなってからも続けてたんだよ。
私:好きですよ、僕も。オカルト番組とか、昔ほどやらなくなったから、寂しさを感じます。
J:大学助教がそんなものに入れ込んでるなんて知られたら割と沽券に関わるようになった。
私:そりゃそうですよ。
(152秒、個人情報に関わる為、割愛)
J:僕らはそれをオクトって呼んでる。
私:被観測体ですか?
J:Mが最初に観測したのが十月なんだと。
私:会話とかは?
J:わからない。
(72秒)
私:本当にわからないのか、さっき言ってた抜け道の話なのかどっちですか。
(52秒)
私:その辺り、もしかして僕も気をつけないといけなかったりします?
(12秒)
私:わかりました。こっちで全部判断します。
J:助かる。
私:無茶振りっていうんですよ。
J:実際、五人に断られた。
私:そうですか。我ながらお人好しだと思います。
J:着いた。
(家前到着)
J:ここで良い?
私:大丈夫です。後歩きます。
J:とりあえずデータは随時送るから。できれば研究室にも顔を出してほしいけど。
私:とりあえず車内の会話録音したんで、それ適当に編集して発信しますよ。
J:ちょうど良い。
私:ではまたよろしくお願いします。
J:よろしく。
(助教の車から下車。22:54録音停止)
録音停止後に音声録音データあり。
別データ。34秒の録音データ。人間の声。
ノイズが大きく、音声入力アプリでの文字起こしは不可。
楽しそうな男児の声で「しーね、しーね、しーね」連呼。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます